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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第41話 勝利の宴

リベエラとレーデ達はレーデの酒場に待たせておき、タロウ達は新たに加わったデュラ子とスケ子部隊と共に火トカゲと岩ゴーレム達を難民街の外に連れ出すべく、満天の星明かりと建物の明かりしか無いほの暗い夜の道を歩く。

タロウの後ろをメデ美、プス子、小型ドラゴンあん子、デュラ子、スケ子部隊、火トカゲと岩ゴーレム達というまさに魔物の一大行列が夜の暗い道を行進するさまを見た難民街の住民達の中には悲鳴をあげる者までいて、皆、一様に逃げ去るように道をあけてくれる。

タロウは特に気にすることもなく難民街の道を通り抜けていくと、そのまま外に出てから火トカゲと岩ゴーレム達に北の未開拓地の方角を教えて解放してあげた。

何度も振り返っては尻尾や手を振る火トカゲや岩ゴーレム達が、夜の闇の中に消えていくのを見届けるとタロウ達はレーデの酒場へと戻るのだった。

レーデの酒場に戻ると酒場前の掃除は、駄賃目当ての難民街の住人によりあらかた済んでおり、酒場内では既に勝利の宴が始まっていた。

酒場の中ではリベエラとその部下である「鉄獄の檻」の団員達が、陽気に酒を酌み交わしている。

酒場の入り口に立つタロウの姿を確認したリベエラが声を上げた。

「――お! 今夜の主役、タロ坊が帰って来たぞー!!」

レーデの酒場の中にいるリベエラの部下達が手に持った酒の入ったジョッキやグラスをタロウに向けて掲げると歓声を上げる。

「凄いなお前ー!」「大したもんだ!」「驚いたぜ!」と、リベエラの部下達から賛辞が飛んでくる。

タロウは何だか少し気恥ずかしくなってしまい、頭を掻きながら「どもども」と小さく頭を下げた。

リベエラが部下達に向かって「さっきも言ったが今日は私の奢りだからね!」と叫ぶと、部下達は一際高い歓声を上げて仲間達との歓談に戻る。

忙しそうに皆に酒を配っている女将レーデは嬉しそうに笑っている。

リベエラは銀髪を風に揺らしてニコニコしながらタロウに歩み寄ってきた。

「お疲れタロ坊。火トカゲ達を解放してやったのかい?」

「ええ、北の未開拓地に帰っていきました」

「そうかい。売れば金になるのに本当に不思議な男だねタロ坊は」

「魔物といえど敵意を向けてこない限りは、なるべくこちらも手を出さない主義なんで」

「へー……。うちらは何だかんだと言っても、結局は魔物がお金に見えるからね。ほんと大したもんだよタロ坊は」

「いやいや、そんな大したもんじゃないですよ」

タロウは謙遜しながら小さく首を振る。

「とりあえず、うちらはこの祝いの一杯を飲んだら、行きつけの要塞都市の酒場に移動するよ。こんな大人数で朝まで飲んで騒いだら1人で切り盛りしているレーデに申し訳ないからね」

「そうなんですか」

「何ならタロ坊も来るかい? もちろん付いて来たら今晩はもう帰さないよ? 私がタロ坊をお持ち帰りするからね」

リベエラが妖艶に微笑みながらタロ坊を見つめる。

「うーん……。美味しい提案ですが、今日は止めておきます。さすがに少し疲れたんで」

タロウの断りを受けてリベエラは当然という感じで頷く。

「だろうね。タロ坊は本当に良くやったよ。宣言通り自分達だけで三大ギルドのひとつ、「傀儡の魔王」の魔王ギリシュを倒したんだからね」

「いえ、それが出来たのもリベエラさんとレーデさん、そして「鉄獄の檻」の皆さんのおかげです」

「私達はあくまで安全な所から補助をしていただけよ。それは私達が一番良く分かってるわ。だからこそ、タロ坊の凄さも良く分かるのよ」

リベエラはタロウの頬に顔を寄せて軽くキスをしてくれる。

「本当に見事だったわ。でもね、これで3大ギルドのバランスは完全に崩壊したわよ。武闘派の「殲滅の王道」が今後どう出るか……。今まで下で燻っていた中小ギルドなんかも動き出すでしょうね。とりあえず、私達とタロ坊が協力関係にあるというのは、要塞都市の連中も今回の戦いで分かっただろうから、そうそう手を出してくるとは思えないけれどもね」

リベエラは真っ赤な口紅の乗った艶やかな唇の両端を嫌らしくつり上げる。

「……となれば、むしろ私とタロ坊で要塞都市を牛耳るってのも良いかもね……」

リベエラは嫌らしい笑みを浮かべながら、タロウから少しだけ顔を逸らすと独り言の様にブツブツと呟く。
 
「ま、その件はおいおい相談しましょう。それと、例の約束の事だけれども、私もちゃんと守ってあげたいから、なるべく早く残りのお金を持ってくるのよ?」

「そ、それはもちろんはい!」

タロウは力強く何度も頷く。

「じゃ、私達はこれで出て行くから今日はゆっくりお休み」

リベエラはお姉さんっぽくタロウの頭を撫でると、酒場内に振り返って部下達に声をかける。

「それじゃ、続きはいつもの所でやるよ!」

リベエラはそう言うと酒場から出て行く。

リベエラの言葉を受けてリベエラの部下達は、席を立つとぞろぞろと酒場から出て行く。

「鉄獄の檻」の団員達にとって、かつての副ギルド長だった女将レーデに団員達は丁寧な礼をしてから、酒場の出口に立つタロウにも声をかけて出て行く。

まるで旧知の仲であったかのように、団員であるリベエラの部下達はタロウに握手を求めてきたり、肩を叩いたりしながら賛辞や労いの言葉をかけて店を出て行く。

そして、あっという間にレーデの酒場の中には誰もいなくなり、先程の賑やかさが嘘のように静まりかえる。

そんな中でタロウと女将レーデだけがぽつんと酒場の中で立っていた。

タロウはレーデに声をかける。

「ただいまレーデさん」

「おかえりタロウさん」

タロウの言葉にレーデは微笑みながら返してくれる。

「さて、晩ご飯にする? それともお風呂にする?」

「お風呂を頂きたい所ですが、まずはこれを片づけましょうか」

「あらほんと? ありがとう助かるわ!」

タロウがリベエラ達の飲んでいたお酒のジョッキを手に持つと、女将レーデが嬉しそうに笑ってくれる。

タロウはプス子、メデ美、難民街の外に出た時に人間化させておいたあん子に、グラスやジョッキを運ばせるのを手伝わせ、厨房の中でレーデと共に食器を洗う。

そして、洗い物が片づいてから、まずは、あん子の教育で数日間、野宿していたせいで、お風呂に入っていなかったプス子、メデ美、あん子を彼女達だけで先にお風呂に入れて、タロウは1階の酒場で、デュラ子と骸骨兵士20体の見張り番をすることとなる。

「(……プス子達ならレーデさんも慣れているけど、さすがにこの新人の不死軍団をレーデさんに任せて放っておく訳にはいかないからな……。魔物奴隷になってくれたと確信している俺でもこの一団の見た目は不気味すぎる)」
  
タロウはカウンターテーブル席に座り、不死軍団を眺めながら苦笑いを浮かべた。

しばらくすると、プス子達がお風呂から上がり1階の酒場に下りてくる。

「レーデさん。先にプス子達に食事を食べさせてやっていてもらえますか。俺はこれから汚れているデュラハンのデュラ子と、骸骨兵士達のスケ子達をお風呂に入れてきますんで」

「分かったわ」

女将レーデが快く頷いてくれるのを見てから、タロウはデュラ子とスケ子達を引き連れて2階に上がる。

風呂場の脱衣所と廊下にスケ子達を並ばせておき、タロウは脱衣所でズボンだけを脱いで上着と下着を着けたままデュラ子を連れて浴室内に入った。

小さな木椅子に何とか座るデュラ子。

タロウは木桶でお湯をすくうとデュラ子にかける。

「《――あ、主であるタロウ様に体を洗って頂くなど、なんと恐れ多い事でしょうか!》」

「気にするな。背中とか洗い難いだろ」

「《す……すみません》」

「お湯をかけてから言うのもなんだが、錆びたりはしないよな?」

「(え? あ、はい! 大丈夫です。見た目は鎧ではありますが、私達にとっては肉体と同じですので、魔力が潤沢であれば常に最適な状態が保たれております)」

「人間でいうところの健康だったらお肌の艶が良いのと同じか?」

「《はい、そう考えてもらっても宜しいかと》」

タロウはデュラ子の背中についた汚れを泡立てた石けんのついたタオルで落としていく。

タロウはデュラ子の左腕を見ながら声をかけた。

「……その腕。すまなかったな」

「《い、いえ。私は不死属性ですので魔力があれば自然回復しますから気にしないで下さいませ。たぶん明日の朝には元に戻っているかと》」

「へー……そうなんだ。それは良かった」

タロウは安堵からか小さくため息を吐く。

「もう一つ疑問が浮かんだのだが、聞いても良いか?」

「《どうぞ、何なりと》」

「視界ってどうなってんの?」

「《物の見え方ですか?》」

タロウはふと気になってデュラ子に質問してみる。

「そうそう」

「《全方位が見えています》」

「――マジデスカ!?」

デュラ子の応えに驚くタロウ。

「ということは死角がほぼ無いということか」

「《ありません。自分の体の中も見えてますから。骸骨兵士達も同じかと思います》」

「凄いなそれは。敵としては嫌すぎるけど、守って貰う場合には心強いな」

「《警護をする場合には、確かに全方位視界は便利であると思います》」

「ああ、心強いよ。これからも色々と期待しているから宜しくな」

「《――ははっ! こちらこそ宜しくお願い致します!》」

タロウはデュラ子を洗い終えると、用意しておいた乾いたタオルで拭いてから、浴場から出して脱衣場で待機させる。

次に風呂場の脱衣場や外の廊下で待っている骸骨兵士達を5体ずつ風呂場に誘導し、洗い方を教えてから各自で体を洗わせる。

骸骨達が木椅子に座って「きゃっきゃ♪」と楽しそうに体を洗う様をタロウは眺めながら苦笑いを浮かべた。

「(……実にシュールだ。しかも皆メスだっていうからなおさらシュール。とりあえず妄想で肉付けをして女の子が裸で体を洗っていると思おう)」

タロウは真っ裸の女子達が体を洗っていると妄想すると、なんだがちょっとだけ骸骨達が可愛くみえてきて、「オタクの妄想力とは何て恐ろしい力なんだ」と再認識するのだが、やはりよくよく見てみると骸骨は骸骨なので結局はシュールだった。

骸骨兵士達を5体ずつ3セット洗った所で、最後の5体が風呂場に入ってくる。

その中にはリーダー格の右目にキズがあるスケ子も居た。

リーダーらしく不測の事態に備えて仲間達の様子を見守っていたようだった。

「(責任感の強い生真面目な奴なんだな)」

タロウはスケ子を見ながらそう思う。

タロウは最後の5体にも洗い方を教えて、各自で体を洗わせる。

タロウはスケ子の側に行くと気になっていた事を聞いてみることにした。

「なースケ子。お前達の姿って人間の骨に似ているけど、まさか人間の骨そのものでは無いよな?」

「《ええ、違いますよ大将。似ているだけで同じではありません。少し形の違うところもありますからね。そもそも俺達は生まれた時からこの姿ですし、生まれた時は小さいので成長して大きくなります》」

「そういう事になるとデュラハンのデュラ子も同じなのか?」

「《ええ、デュラハン族も小さな鎧で生まれて、成長して大きな鎧になりますよ》」

スケ子の応えにタロウは頬を引きつらせる。

「(……それもまた超シュールだな。となると、人間の幽霊の類では無いわけだ。まー……魔法と剣、そして魔物がいるファンタジーな異世界だからな。あまり深く考えても意味は無いのだろうけれども)」

タロウはスケ子の応えに心の中で納得した。

「ちなみに骨が折れたらどうなるんだ?」

「《ひっつける方が早くて楽ですが、無くしてもまた生えてきます。俺達は不死属性ですので。もちろん回復の為の魔力があっての事ですが》」

「なるほど。で、骨が折れるとやっぱり痛いのか?」

「《泣き叫ぶ程ではありませんが地味に痛いですよ。鈍痛を感じるという程度でしょうかね。俺達のような不死属性は痛みに鈍感な所が強みですから》」
    
「多少のキズでは突撃を止めないということか。確かに強みだよな。ありがとう、少し分かったよ。これからも何かあれば聞くから宜しく」

「《もちろんです大将。何でも聞いて下さいな》」

スケ子達が体を洗い終えて風呂場を出て行くと、タロウはデュラ子と共にスケ子達も脱衣場と廊下に待機させておき、脱衣場で残りの服を脱いでから浴場に戻る。

木椅子に座り、木桶ですくったお湯を体にかけた。

体の表面を流れ落ちていく熱湯の心地良さにタロウは目を細める。

デュラ子とスケ子達を待たせているので、タロウは素早く体を洗ってから湯船に入り、ゆっくりと体を沈めて肩までつかる。

心の中で「くー……」と言いながら心地よい熱湯を体で味わう。

タロウは両手でお湯をすくって顔に「ぱしゃぱしゃ」と浴びせてから、湯船の端に背をもたれかけさせて湯煙で霞む天井を見上げた。

「あ"ー……疲れた……。体力的にというよりも色々な急展開で疲れたな……。はー……もっと慣れていかないとなー戦闘。力にあぐらをかいて、その場しのぎはやはりろくな事が無かったから、後で色々と戦い方を真面目に考えよう……」 

タロウは口まで湯船に浸からせると、ぶくぶくと空気をお湯の中に吹き出すのだった。

タロウは5分程で湯船から上がると、浴場の扉を開けて脱衣場に出る。

脱衣場で佇んでいる首無し騎士のデュラ子は仁王立ち、骸骨丸出しのスケ子達10体は頭があるからか、タロウの向かって一斉に顔を向けてくる。

「――ぶっ!」

数分とはいえ1人でお風呂に入り、リラックスして気が緩んでしまったせいか、タロウは目の前に仁王立ちの首無し騎士デュラ子と周りでずらりと立っている骸骨丸出しスケ子達という光景のシュールさに思わず唾を吹き出してしまう。

「(ま、まだ慣れていないから、皆でこっちを見るんじゃありません!)」

と叫びたくなるのをタロウはグッと堪えて、大将らしく平静を装いながら悠然と体を拭いて服を着込む。

「……み、皆、お待たせ。それじゃ1階に下りようか」

タロウはデュラ子とスケ子達を連れて1階の酒場へと下りていく。

タロウがデュラ子とスケ子達20体をぞろぞろと引き連れて酒場の1階に下りると、プス子達はいつものカウンターテーブル席で食事を食べていた。

「とりあえず、スケ子達はあのテーブル席に座りな」

タロウの指示を受けてスケ子が仲間達に指示を送り、スムーズに椅子に座っていく。

ちょうどテーブル席が20席あったのでスケ子達で満席となる。

骸骨兵士達はテーブル席に座ると、のほほんと天井を眺めたり、ぼんやりとテーブルを眺めたりしていた。

「(うわ……これまたシュールだな)」

タロウはデュラ子の側に寄ると声をかける。

「デュラ子と骸骨兵士は食事をするのか?」

「《私達は体力と魔力共に自動回復の力がありますので、特に必要とはしませんが、食事を摂取すればその分、回復が早まります》」

「へー……って、食べれるのか?」

「(食べるというよりも生気を吸収するという感じでしょうか。ただし死んだ生命体かつ、まだ生命力が繋ぎ止められている朽ちていない物に限りますが)」

「えーと、つまり俺達が食べる食事は、だいたい死んだ生命体だろうし、朽ちるということは腐ってなければ、そこから生気を吸収できるんだな?」

「《はい、そういう事になります》」

「なら、問題はないな。一緒に食べようかデュラ子」

「《え? あの?》」

タロウはデュラ子の背中を押してカウンターテーブルに座らせる。

「レーデさん。このデュラハンのデュラ子にもご飯をお願いします」

タロウもカウンター席に座る。

「あら、デュラハンってご飯を食べられるの?」

「食べるというより生気を吸収するんですけどもね」

タロウは先程知った知識を魔物使いとして当然知っていたという風に、ニコリと笑みを浮かべながら応える。

「へー……初めて知ったわ。魔物の生態系まで知っているなんて、さすがはタロウさんね」

女将レーデは調理済みのおかずを皿によそってデュラ子の前に置いてくれる。

今日のおかずは牛肉野菜炒めだった。

「ほら、お食べ」

タロウに促されてデュラ子は「《い、頂きます!》」と応える。

デュラ子はもちろんフォークやスプーンを持つことは無い。

首無し騎士ゆえに頭が無いし、それ以前に人間的な肉体が無いからだ。

デュラ子はどうやって食事をするのか。

それを見るためにタロウが興味津々でデュラ子を眺めていると、デュラ子の前に置かれた食事から小さな光の粒子が立ち上り、デュラ子の首の穴に吸い込まれていく。

「(……なるほど、これが生気を吸収するという行為か)」

タロウが「ふむふむ」と観察していると、皿に盛られている牛肉野菜炒めにも変化が訪れる。

生気を吸われた部分がみるみる内に消えていくのである。

「(まるで透明の犬が皿に首を突っ込んで食べているみたいだな)」

タロウの例えはまさにその通りで、透明の犬がガツガツと食べているかのように皿の上の牛肉野菜炒めが消えていくのであった。

タロウは女将レーデに聞こえないようにデュラ子に問いかける。

「で、味とかは分かるのか?」

「《鮮度を旨味として感じる事はできますが、その他は残念ながら味として感じる事はできません》」

「つまり、未調理の物でもいいということか?」

「《はい、そうなります》」

「なるほど。その吸収行為は骸骨兵士達も同じか?」

「《同じです》」

タロウはデュラ子の応えを聞くと女将レーデに顔を向けて声をかける。

「レーデさん。あの骸骨兵士達にも食事を振舞ってもらえませんかね。ただし、未調理の素材その物で結構です」

「あら、そうなの? 分かりました」

女将レーデはタロウのお願いを受けて、テーブル席に座っている骸骨兵士達の前に生の牛肉と豚肉の塊が乗った皿や、調理していないそのままの果物を置いて並べてくれる。

タロウはカウンターテーブルの椅子に座りながらテーブル席にみっちりと座っている骸骨兵士達を眺める。

食事が並べられていく様を見た骸骨兵士達は、「(きゃーきゃー♪)」と黄色い念話で大喜びを始めた。

デーブル席に座っている右目にキズのあるスケ子がタロウに顔を向けて念話を発してくる。

「《大将。俺達にも食事を振舞ってくれるんですかい?》」

その念話は他の骸骨兵士達にも聞こえているのか一斉にタロウの方に顔を向ける骸骨兵士達。

先程の脱衣場での動作と同じく全方位の視界を持つ骸骨兵士達でも頭を持っているからなのか、興味の有る方向には頭を向けるようだった。

「(――うわっ!? 一斉に見られると超怖いからやめて!!)」

タロウは骸骨達の暗い眼孔の視線を受け止めながら苦笑いを浮かべる。

「遠慮せず食え食え。お前達でも食べることは好きなんだろう? なら、これからも美味い物はたらふく食べさせてやるぞ」

女将レーデに聞かれても大丈夫なようにタロウが勝手に魔物に話しかけている風な内容で返事をする。

そんなタロウの言葉に骸骨兵士達からは念話の歓声が上がり「やんややんや♪」と手だけで小躍りしながら大喜びする。

骸骨兵士達の前に食事を並べ終えた女将レーデは「あらあら、喜んでいるのかしら」と微笑みながら、カウンターの中の厨房に戻っていく。

「《大将……。あんたは本当に不思議な人間だな。あの金髪の魔物使いは俺達が自動回復するからという事で、一度も食事を与えてはくれなかったぜ?》」

タロウは鼻で笑いながら手をひらひらさせて席を立ち上がると、スケ子の側に寄ってから小声で話しかける。

「あんなのと一緒にするな。俺は自分の魔物奴隷は大切にする魔物使いなんでね」

「《なるほど。デュラハンの姐さんが従うわけだ。大将はこうやって俺達と会話ができる点から考えても、普通の人間の魔物使いでは無さそうだな。俺達は誓い通りにこれからも大将について行くよ。だけど、これだけは忘れないで欲しい。こんな姿でも俺達は生きているし感情も有る。褒められれば嬉しいし、けなされれば悔しいんだ……》」

タロウはスケ子のツルツルの頭を勇気を出して撫で撫でする。

「分かっているさ。これからも俺の魔物奴隷として従順ならば、俺もお前達を大事にしていくことを約束する。だから、これからも宜しくな!」

スケ子は椅子に座っているので、タロウを見上げながら「こくん」と頷く。

スケ子とのやり取りを聞いていた他の骸骨兵士達もタロウに向かって「こくん」と一斉に頷く。

タロウはスケ子の頭を撫でり撫でりしながら骸骨兵士達に声をかける。

「――さあ、皆!! 遠慮せず食事を楽しんでくれ!!」

タロウの掛け声に骸骨兵士達は念話で歓声を上げると、それぞれの前に置かれた新鮮な食材の生気を吸収しはじめ、その美味しさに更に歓声を上げるのだった。

タロウはカウンターテーブルの席に戻ると、女将レーデが用意してくれていた牛肉野菜炒めをフォークですくって頬張る。

「うんめー!! やっぱレーデさんの食事は美味いです!!」

「うふふ! 喜んでもらえて嬉しいわ」

タロウの綻んだ顔を見て嬉しそうに笑う女将レーデ。

タロウの言葉にプス子は両手を上げて「うーうー!(美味しいです)」と賛同する。

人間化しているあん子も両手を上げて「ぎゃうぎゃう!(おいしいの!)」と続く。

タロウがプス子とあん子を見ると、女将レーデに空の皿を突き出して幸せそうな顔でおかわりを要求している。

メデ美は既に食事を終えたのか、温かいお茶の入っている湯飲みを両手で持っていつもの様にのんびりとすすっている。

デュラ子は骸骨兵士達と同じで久しぶりの食事なのか夢中かつじっくりと生気を吸収していた。

タロウはそんな魔物娘達を微笑ましく眺めながら牛肉野菜炒めと白ご飯を楽しむ。

カウンターテーブル席の5つはタロウ、プス子、メデ美、あん子、デュラ子で満席。
テーブル席の20席の方も骸骨兵士達で満席となり、今夜のレーデの酒場はタロウとその魔物奴隷達で貸切状態なのであった。
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