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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第40話 最後っ屁

まさかのデュラハンの裏切りにより驚愕の表情を浮かべる魔王ギリシュの首を、躊躇すること無く名剣フランベルジュにて一撃の下に斬り飛ばしたデュラ子。

魔王ギリシュが死んだことを理解した火トカゲ達は火を噴くのを止め、魔王ギリシュを守る為に布陣していた骸骨兵士達や岩ゴーレム達も、どうしたものかと呆然としていた。

魔王ギリシュの死とは、「傀儡の魔王」を「傀儡の魔王」たらしめていた男の死という意味である。

つまり、魔王ギリシュの死をもって、今宵の戦いは終結するかに思われた。

だが、魔王ギリシュが死んだ瞬間、粘着質な男らしい実に陰湿な仕掛けが作動し始める。

その仕掛けとは、魔王ギリシュが命を失うと同時にゴブリン群50体の自動召喚。

そう、「殺戮の晩餐」の発動である。

首を無くした魔王ギリシュが倒れこんでいる周囲の大地から、微かな光と共に奇声を上げながら、土緑色の肌の醜悪な面構えのゴブリンの群れがニョキニョキと現れ始める。

大地から生えてきたゴブリン達の頭部分が、これからの「殺戮の晩餐」に興奮しているのか、大きな牙が並ぶ歯を向き出しながらよだれをまき散らす。

「《――タロウ様!! 憎き横暴な魔物使いを仕留めましたら、勝手にゴブリンの群れが出てきました!! どうやらこの横暴な魔物使いが死ぬと同時に発動する自動召喚のようです!!》」

デュラ子の念話がタロウの頭に響く。

「――マジデ!? うわー陰湿だ!! なんてゲスな野郎なんだ!! 自分が死ぬぐらいだからお前らも死ねってやつか!! でも、実に魔王ギリシュらしいなと納得していまう俺もいる!!」

タロウは実に魔王ギリシュらしい最後っ屁に苦笑いを浮かべる。

魔王ギリシュの悲鳴と同時に、ゴブリン群による無差別攻撃が発動したことを知った「傀儡の魔王」の部下達は、既に魔王ギリシュが敗れた事を悟り、その置きみやげともいうべきゴブリン群に巻き込まれない為に我先にと逃げ出し始める。

リベエラ達は懐刀であるはずのデュラハンに首を飛ばされる魔王ギリシュ、そして首無しギリシュの周りからニョキニョキと現れ始めたゴブリン群という、とても理解しがたい状況を前に、逃げ出すべきなのかそれとも奮戦するべきなのかを、まだ判断できずに呆然と眺めているしかなかった。

タロウは後ろに控えているメデ美に声をかける。

「メデ美さんメデ美さん。やはりゴブリンといえど対話が必要ですかね?」

「ゴブリン族は魔物の中でも知性は低く、種族を問わずオスは惨殺しメスは犯すという本能のままに生きる蛮族でございまする。我が言うのも憚(はばか)られまするが、いわゆる魔物種族関係なく忌み嫌われておりまする。対話ができないこともないかと思われますが……。最後のご判断はタロウ様にお任せいたしまする」

メデ美は自分自身が人類、魔物の全てから忌み嫌われていた事もあり中立的な説明をしてくれるのだが、その眉間にはシワが寄っていた。

「(どうやら……ゴブリン種ってのは本当に曲者らしいな)」

タロウがニョキニョキと現れ出したゴブリン達の奇声に耳をかたむけると「ピギャース!(殺せー!) ピギャース!(犯せー!)」と叫んでいるのが微かに聞こえてくる。

「(うん、とりあえず無しでいいな)」

その残虐な奇声を聞いてタロウは即決する。

「(ま、デュラハンの時と同じく、どんな縁が有るか無しかは後で分かることだ。とにかく今、自分が信じた事を全力でやろう!)」

タロウは先程のふわふわした戦術の反省から、既に「一撃必殺モード」の思考に舵をきっているので、今度の対応の判断はとても速く、そしていつも通りに卑怯な程に効率的だった。

「――デュラ子!! ゴブリンの出現を待つ必要は無い!! 地面から出てきている所を叩け!! 討ち漏らした奴は、出現しきる前にメデ美とプス子で仕留めていく!!」

「《――ははっ!!》」

タロウの命令を受けてデュラ子は、地面からニョキニョキと出現中のゴブリンの頭部に名剣フランベルジュをザクザクと突き刺していく。

「ピギャーース!!」と絶叫しながら、何もできずに頭を貫かれて絶命するゴブリン群。

大きい鎧の体ながら軽やかなステップで縦横無尽に動きつつ、まるでモグラ叩きの要領で地面から生えてくるゴブリン群を突き殺しまくるデュラ子。

しかし、さすがに50体は多いのか、一斉に出現してくるゴブリン群をさばききれなくなってくる。

それを確認したタロウは、プス子とメデ美に攻撃用意をさせるが、次の瞬間、デュラ子がタロウに向かって叫んできた。

「《――タロウ様!! 意見具申の許可をお願い致します!!》」

「――許可する!!」

「《――骸骨兵士、火トカゲ、岩ゴーレム達の身の安全を保証しては頂けませぬか!!》」

デュラ子の言葉を聞いた瞬間に、その「意味」を理解したタロウは即答する。

「――この事態に「協力」するのであれば安全を保証する!!」

タロウの返答はまさにデュラ子の真意だったらしく、デュラ子はどこか嬉しそうに「(ははっ!)」と元気良く応える。

デュラ子は周りで呆然としている骸骨兵士、火トカゲ、岩ゴーレム達に声をかけた。

「《――あちらにおられる私の新しき主であるタロウ様が、ゴブリン群掃討に協力するならば、お前達の身の安全を保証してくれると約束してくれた!! ここは私を信じて従え!!》」

元々、真面目な騎士という性格からか、デュラ子は魔物仲間の面倒見も良かったのだろう。

デュラ子を隊長の様に慕っていた骸骨兵士、火トカゲ、岩ゴーレム達は、何の迷いも無くデュラ子の指示に従うと、20体の骸骨兵士達は地面からニョキニョキしているゴブリン群を鉄剣でザクザクと刺し始め、10体の火トカゲ達は火炎放射を浴びせかけ、4体の岩ゴーレムは巨大な拳でゴブリンの頭を叩き潰していく。

もはやルール無視の皆でやっちゃうモグラ叩きへと移行し、ゴブリン群は登場する前に次々と死んでいくのだった。

「うわー……。むしろ俺達の方が「殺戮の晩餐」やん」

1人突っ込みをしているタロウの元に、リベエラとレーデ、「鉄獄の檻」の団員達が駆け足で戻ってくる。
  
「――ち、ちょっとタロ坊!! 一体、何が起こっているのよ!!」

銀髪を振り乱しながら駆け寄ってきたリベエラが、タロウの両肩を掴み大きく揺さぶりながら顔を寄せてくる。

「あー、その。何て言いましょうか。あのデュラハンと他の魔物達を魔王ギリシュから奪いまして。デュラハンをけしかけ返して、魔王ギリシュを殺したまでは良かったんですが、まさかの「殺戮の晩餐」の自動発動をやられまして。で、今、デュラハン達でゴブリン群の掃討戦をやってます」

「――はっ!? なにそれ!?」

タロウによる、この異世界においてはもはやあり得ない戦い方の説明に息を飲むリベエラ。

その驚きはレーデや「鉄獄の檻」の部下達も一緒だった。

「……せ、戦闘中に魔物を使役しかえした?」

リベエラが言葉を詰まらせながら信じられないとかぶりを振る。

「いやー……さすがにデュラハンは手強くて。ムキになって魔物使いとしての「奥義」を使ってしまいました。あはは……あはははははー」

適当に嘘をついて笑いながら誤魔化すタロウ。

しかし、魔物の使役技術は、魔物使いそれぞれが独自に編み出した奥義であり秘技であるので、リベエラやレーデ達は納得するしかないのである。

「……凄い!……凄いじゃないかタロ坊!!」

リベエラは普段のクールさはどこへやら、少女の様に頬を紅潮させながらタロウの頬に自分の頬をぎゅうぎゅうとすり寄せてくる。

「――な!? ちょっとリベエラ!!」

その様を見た女将レーデはタロウをリベエラから強引に引き離すと、自分のコルセットからはみ出している上乳にタロウの顔を埋めて頭を抱きしめた。

「ありがとうタロウさん!! 用心棒として頑張ってくれて嬉しいわ!!」

タロウは女将レーデの柔らかいおっぱいに顔を埋めながら「でへへ」とだらしなく笑う。

タロウが女将レーデのおっぱいを堪能していると「ガシャガシャ」と鎧の音を先頭に多数の足音が近づいてくる。

「(……片づいたみたいだな)」

タロウは名残惜しくとも頑張って女将レーデのおっぱい天国から離れると、これからの会話をなるべく聞かれないように「皆はここで待ってて下さい」と伝えてから、リベエラやレーデ達から少し離れる為にタロウは早足でデュラ子達に歩み寄った。

ゴブリン達の返り血で汚れているデュラ子はタロウの前に近寄ると、片膝をついて跪く。

その動作に続いてデュラ子の後ろで、骸骨兵士、岩ゴーレム達も跪いたが、火トカゲ達は地面に腹ばいなのでそのままだった。

先程まで、魔王ギリシュを魔王たらしめていたはずの強力な魔物達が、タロウを敬うように跪く異様な光景を、少し離れた場所から呆然と眺めるリベエラやレーデ達。

「《タロウ様。ご命令通りゴブリン群を掃討致しました》」

タロウの前で跪くデュラ子の戦闘報告に、タロウはゆっくりと頷く。

「ご苦労であった」

「《有り難きお言葉であります。早速で申し訳ありませんが、この者達の処遇に関して……》」

「先程、言った通り、彼等の安全は保証する。こちらとしては拘束するつもりもないから、北の未開拓地に行きたい者は好きにすれば良い。もし必要ならば安全な所までは送ってやろう」

タロウの言葉が聞こえたのか、骸骨兵士、火トカゲ、岩ゴーレム達がざわめく。

「《――ははっ!! ありがとうございます!! では、まずこの火トカゲ達は、北の未開拓地の洞窟に帰りたいそうです。次に岩ゴーレム達も未開拓地の山に帰りたいそうです》」

「許可する」

タロウの即答に火トカゲ達は「カエレルンダ!」と喜びの声を上げ、岩ゴーレム達も「やーたー! やーたー!」と見た目通りのんびりした感じの喜びの声を上げる。

「(ワニっぽい火トカゲも喋るんだな……。いやー、もうほんと、これからは魔物に対しては、なるべく声をかけてみないとダメだなこれは)」

タロウが心の中で考えていると、デュラ子が申し訳なさそうに言葉を続けた。

「《タロウ様、最後に骸骨兵士達なのですが……》」

「どうした?」

「《それが、その、北の未開拓地に行った所で、魔物殺しに殺されるのがオチだと言っておりまして。確かに私を含め、骸骨兵士達も不死属性ゆえに、人間達には異様に恐れられ狙われる性質があります。なので、北の未開拓地で無様に死ぬぐらいなら、これからも私についていきたいと言って聞いてくれません。どうやら私を本当の隊長だと思ってくれているようでして……》」

「そうなのか……」

タロウは、骸骨兵士達を眺めながら考える。

「(俺が昔、遊んでいたゲームでは、骸骨兵士って超絶にしぶとくて、というか聖魔法以外では死なないから、全突撃部隊の前衛に入れ込んで使いまくってたなー。そのせいで何か不死軍団みたいな様相を呈していたけども。ここにいる骸骨兵士達も不死属性のようだし、そのしぶとさは魅力的だよな。というか、うちにはあん子やデュラ子、そして骸骨兵士達も加われば、これまた不死軍団だな)」

タロウは骸骨兵士達が役に立ちそうだと判断したので、あっさりとデュラ子の願いを許可する事に決めた。

「じゃあ、骸骨兵士20体を、デュラ子を隊長として部隊にすればいい」

「《――よ、宜しいのですか!?》」

「ただし、骸骨兵士達の部隊長はデュラ子だが、そのデュラ子を従えている総大将は俺だということが認識できないのであれば、この話は無しだ」

「《お、お前達!! 今の言葉を聞いていたな!! 私の主はお前達の主であるぞ!! つまり、主のお言葉は私の言葉よりも重い!! その事が守れない者はここから立ち去れ!!》」

デュラ子の言葉に骸骨兵士の中の1体が顔を上げると、デュラ子と同じように「念話」を発してくる。

「《俺達はデュラハン隊長を尊敬している。人間とはいえ俺達の隊長を救い、俺達を解放してくれると言ってくれたあなたには本当に感謝している。俺達の隊長があなたに命を捧げるのならば、俺達20体もまたこの命を捧げる覚悟で、あなたとデュラハン隊長についていきたい》」   

その骸骨兵士は右目の穴をまたいで縦にキズが付いており、どうやら骸骨兵士達のリーダー格らしかった。

タロウはその右目の縦キズに思わず「あ、何かちょっとカッコイイ」と中二病的な感想を抱く。

だが、それよりもタロウは、デュラハンの時と同じく頭の中に響く骸骨兵士の声色に戸惑う。

右目にキズのある骸骨兵士が、自身を「俺」と呼ぶにしては確かに声が低いのだが、どこか女性的なのだ。

「お前……もしかしてメスですか?」

「《え? 俺ですか? あ、はい、メスですが。というか、ここにいる骸骨兵士達は皆メスですが》」

「――ぶぷっ!?」

タロウは夜空に顔を向けて唾を吹き出す。

「(ま、まさか女性兵士軍団だっとは!? でも全員、骨!! メスということは嬉しいけれども、鎧のデュラハンに続いてこれじゃあセクハラを全く楽しめないではないかぁ!!)」

そんなタロウの心の葛藤など知らない右目にキズのある骸骨兵士は話を続ける。

「《あの魔物使いによる度重なる無茶な使役も、このデュラハンの姐(あね)さんの力と指揮のおかげで生き残れたようなものです》」

右目にキズのある骸骨兵士は、デュラ子の背中を見つめながら頷いていたが、タロウの耳にはあまり届いてはおらず、タロウは骸骨兵士20体を呆然と眺めていた。

「(骸骨兵士20体全てがメスなのかー……、これが他の魔物娘だったら一気に酒池肉林だったのになー……)」

タロウは残念そうに項垂れると「見た目は骨だけど妄想で肉付けしてニヤニヤしよう」と心の中で呟いて、何とか頑張ることにするのだった。

「(……ま、とりあえず骸骨兵士達がデュラ子を慕っているのなら、デュラ子を大事にすれば彼女達も裏切ることは無いだろう)」

タロウは右目にキズのあるリーダー格の骸骨兵士に声をかける。

「お前の名前は?」

「《俺はジェニスコールです》」

「それじゃ、骸骨兵士のリーダー格っぽいからお前にだけ名前を授ける。お前は今日からスケ子な。ちなみに俺の名前はタロウだ。これからはタロウ様と呼ぶように」

相変わらず超適当に安直な名前を付けるタロウ。

「《はは! タロウ様。ですが、もし宜しければ「大将」とお呼びしても?》」

「あー、うん。許す」

「《はは! では、大将。我等、骸骨兵士20体は大将の配下となり、粉骨砕身で働かせて頂きます!!》」

「(まさに骨だけに粉骨!)」

タロウは心の中で1人ボケる。が、虚しいので無かった事にした。

幸い念話はデュラハンや骸骨兵士からの一方通行であり、タロウからは声を発することによりデュラハン達と会話が行われるので、タロウの心の中の声を聞かれるという事は無かった。

タロウは元魔王ギリシュの魔物達を引き連れて、リベエラとレーデ達の元に戻る。

その「ぞろぞろ感」にさすがのリベエラやレーデ達もちょっと引いていた。

というより、今までの敵を前に警戒しているという風だった。

「タ、タロ坊……。それ全部、引き取るのかい?」

リベエラが苦笑い気味に問いかけてくる。

「いえ、この火トカゲと岩ゴーレム達は北の未開拓地に帰します。残りのデュラハンと骸骨兵士達20体は引き取ります。ただ、ちょっと骸骨兵士の20体というのは多いのでどうしたものかと……」

タロウは女将のレーデを見ながら困った表情を浮かべる。

「確かに部屋には入りきらないわね……」

女将レーデも困った表情を浮かべるので、タロウはバツが悪そうに頬を掻きながら言葉を続けた。

「提案なんですが、レーデさんの酒場の横に何か簡素な魔物小屋でも建ててもいいですか? ちょうどアンデッドドラゴンで稼げた所なんで」

「――え? ええ!! もちろん!! それは別に構わないわよ? で、でも良いの? 私の酒場の横に魔物小屋を建てても。もうタロウさんなら要塞都市の中でもやっていけるわよ?」

レーデが少し驚きながらタロウに確認してくる。

「やだなーレーデさん。俺はレーデの酒場の用心棒ですよ。今までも、そしてこれからも、拠点はレーデさんの酒場に決まってるじゃないですか!」

タロウは平凡な顔のくせに、にこりと爽やかに微笑みながら好感度アップの選択肢を躊躇無く選ぶ。

「(――だてに恋愛ゲームで、数多の女性を攻略していたわけでは無いことを証明してみせる!!)」

タロウの選択肢は大当たりだったのか、レーデの表情が予想よりも明るく輝いた。

「まーまーまー!! タロウさんったら!! それならば、これからも「ずっと」美味しい食事を頑張って作りますね!!」

「――はい!! 宜しくお願いします」

タロウと女将レーデが二人で「きゃっきゃっうふふ♪」と楽しく会話をしている光景を、リベエラがジト目で眺めていた。

「(タロ坊……。酒場の横に魔物小屋のような活動拠点を作るのは、タロ坊にとってはもはや大した出費じゃないかもしれないけれど、世間一般的にいえば「家」を建てるようなものだからね。それって一生側に居るっていう告白と同じよ? 分かってるのかしら)」

もちろんタロウは分かっていなかった。

リベエラの考え通りタロウの提案は「一生、レーデさんの用心棒になります」ぐらいのとんでもない告白であり、やはり所詮は恋愛経験のないド素人なタロウなのであった。

ただし、ハーレム街道まっしぐらなタロウにとっては、特に何の問題も無いというのが救いではある。

だが、タロウはそんなこととはつゆ知らず、嬉しさからか黒髪のポニーテールを揺らしてピョンピョンと小さく飛び跳ねる女将レーデの、コルセットからはみ出しているおっぱいが「ぼいんぼいん」と揺れるさまを凝視しながら「でへへへ~♪」とだらしなく笑っているのだった。
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