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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第33話 オタクの夢

「傀儡の魔王」達の逃げ去る後を追うように、メデ美の火柱が次々と噴き上がり続ける。
それをタイミングを図るようにじっと眺めていたタロウは、メデ美に向かって右手を上げながら声をかけた。

「もういいぞーメデ美」

「ははっ!!」

「傀儡の魔王」達が遠く離れたのを確認したタロウは、メデ美に魔法の追撃を止めさせた。

「それにしても、かなり遠くまで魔法を飛ばせるのな」

「今のような大地から火柱となると、さすがの我でもこれ以上の追撃は難しいのですが、飛行系の火の弾丸などでしたら更に遠方まで飛ばすことは可能です。ただ工夫をしませんと命中力は皆無ですが」

「なるほど。覚えておくよ」

タロウは頷きながらメデ美の通常の髪に戻った頭を撫でる。

「とにかくお疲れさま。見事な活躍だったぞ! 褒めてつかわす!」

「――は、ははっ!!! タロウ様のお役に立てて、この蛇めは嬉しゅうございまする!!!」

「うむ。苦しゅうないぞ」

「いいなー。プス子も頭を撫でて欲しいなー」

プス子が眉尻を下げながらしょんぼりしている。

「おう。プス子もちゃんと俺の言う事を聞いて、静かに待っていたな。偉い偉い」

タロウはプス子を中腰にさせると、黒い艶やかな髪を撫でてあげる。

「えへへー!」

プス子は大きな単眼を閉じて嬉しそうに笑う。

「さて、あのドラゴンはと……」

タロウは岩陰からアンデッドドラゴンの様子を伺う。

アンデッドドラゴンは何が起こったのか理解できていないのか、きょとんとした目で辺りを見渡している最中だった。

「何とか大丈夫そうだな。それじゃ、俺達も帰るか。幼子とはいえ巨大なドラゴンだ。まだ興奮しているだろうし下手に声をかけて攻撃されても困るからな」

タロウの言葉にプス子とメデ美は頷く。

タロウは岩陰を背にして、アンデッドドラゴンから死角のまま離れようとしたその時だった。

数回程、地面が小さく揺れたかと思うと、タロウの周りが一瞬で影に覆われてしまう。

「――な!?」

タロウが慌てて空を見上げると、こちらを覗き込んでいるアンデッドドラゴンと視線が合う。

「――メ」

メデ美に反撃指示を叫ぼうとしたタロウの言葉を、アンデッドドラゴンが遮った。

「――あ、あのっ!!」

「ギャウギャウ」と鳴くアンデッドドラゴンの声の意味を、きちんと理解できてしまうタロウの耳。
タロウは慌ててメデ美を見る。

「ドラゴンの感覚器官は鋭敏ですから。どうも我等の行動に気がついていたようですね。見る限り敵意も無いようですし、タロウ様のお言葉を一言、与えてあげても宜しいかと」

メデ美がタロウに対して丁寧に頷く。
メデ美はアンデッドドラゴンに視線を向けると、無表情のまま形式的に応えた。

「まだ幼きアンデッドドラゴンよ。そなたを救ったのは、ここにおわす人間「タロウ」様であられる。タロウ様は魔物の言葉を理解できる偉大なお方であられる。そなたの「助けて欲しい」との懇願に呼応し、タロウ様が危険を承知でそなたを助けたのだ。その恩を少しでも感じるのであらば無作法は慎むように」

「あ、あの、あのあの! こ、ここここ、この度、は、た、たた、たた助けてくださらりますて」

メデ美の難しい言葉使いと慇懃(いんぎん)な態度に、アンデッドドラゴンも丁寧に応えようと頑張るのだが、言葉は詰まりまくりで、最後の方は少し意味不明になっていた。
タロウは苦笑いを浮かべると手の平をヒラヒラと動かしながら、アンデッドドラゴンに声をかける。

「あー、そんなに畏まらなくていいから。ところでケガは無いのか?」
  
タロウの親しみやすい言葉に、アンデッドドラゴンは「こくこく」と大きな頭を縦に振って応える。

「は、はい! おかげで大丈夫でした。助けてくれてありがとうございました!」

少し舌足らずながらも元気かつ丁寧に応えるアンデッドドラゴン。

「そっか。無事で何よりだ。とにかく、ここらは魔物殺し達が多くて危険なんだ。今みたいな目にあって殺されたくなければ、ここからはさっさと立ち去って、未開拓地の奥にでも行くことだな」

「…………」

タロウの助言に、アンデッドドラゴンは少しだけ困ったような顔を見せる。

「う、うち1人ぼっちやから。あそこは怖いんです」

「……お母さんは?」

タロウの問いにアンデッドドラゴンは、大きな目をうるうるとさせながら首を横に振る。

「もうずっと帰ってきてません……」

「(メデ美の言うとおり、育児放棄か既に死んでしまったというやつか)」

タロウは「うーん」と顎先を指で擦る。

「(助けてはやりたいがこの巨体はなー……。街中には連れて入れないし、となると外で飼うという事になるだろうし。まー、戦力と考えれば外飼いでも悪くはないんだが、この巨体だから凄い量の餌が必要だろうし、正直「めんどう」なんだよなー)」

現状、特に戦力に不足を感じていないタロウにとって、いくら戦略クラスの戦力といえども、手間暇のかかる巨竜を手元に置くことには気が進まなかった。

「(知り合いか、お友達という程度にしておくべきだろうな)」

タロウはアンデッドドラゴンに声をかける。

「とにかく、要塞都市に近いここらでは食事をしないことだ。せめて身を隠せる山岳地帯にした方が良いぞ。まー、何かあれば相談ぐらいはのってやるから。じゃ、頑張れよ」

「は、はい……」

アンデッドドラゴンは悲しそうな表情のまま頷く。

タロウはアンデッドドラゴンに背を向けて、荷車に乗り込むとプス子に引かせて歩き出す。
その横を追従するメデ美。

しばらく進んだ所で、後ろから「どすんどすん」と地響きが響いてくる。

どうやらアンデッドドラゴンが、タロウ達の後をついて来ているようだった。

タロウは荷車の中から振り返ると、アンデッドドラゴンはその場で、しょんぼりと俯いて立ち止まる。

タロウが前を向いて進むと、また「どすんどすん」と地響きが響いてくる。

なので、タロウがまた後ろを振り返ると、アンデッドドラゴンはその場でしょんぼりと俯いて立ち止まる。

その様なやりとりを何度も何度も繰り返す。

やがて要塞都市の姿が小さく見えてきてしまった事に、タロウは右の手の平に額を乗っけて唸った。

「(……参ったな。あのアンデッドドラゴン、どこまでもついてくるつもりだぞ)」

タロウの心情を見て取ったのか、メデ美が小さく呟く。

「……懲りずに後をついて来まするな」

そう呟いた後、メデ美はため息混じりに後ろを振り返る。

「タロ様。黒いトカゲさんが、ずーっと後をついてきますよ?」

プス子も荷車を引きつつ後ろを振り返りながら、大きな単眼をパチパチと開閉している。

タロウはしばらく両目を閉じ腕組みをしながら唸っていたのだが、急に自身の髪を両手で掻きむしりだした。

「――だー!! もう分かった分かった!!」

タロウはプス子に止まるように指示をすると、荷車から飛び降りる。

タロウはそのまま、アンデッドドラゴンに近づいていくと、アンデッドドラゴンはその場で立ち止まり、申し訳なさそうに頭を垂れたままタロウを見下ろしていた。

「……ううぅ」

アンデッドドラゴンは怒られると思っているのか、今にも大粒の涙を落としそうなほどに、大きな両目を潤ませて泣きそうになっている。

だが、タロウは大きなため息をひとつ吐き出すだけで、怒鳴ることは一切しなかった。

「(覚悟を決めた以上、今さら、叱責や嫌味をぶつける事には何の得も無い。むしろこれからの仲をより良くするためにも、優しくしてあげるのが得策だな)」

タロウは深呼吸をすると、アンデッドドラゴンに優しく微笑みかける。

「どうした。俺にまだ何か用か?」

「……あ、あの……その」

ポツリポツリと言葉を発するアンデッドドラゴン。

だが、その一言一言を勇気を振り絞って必死に吐き出している事だけは、タロウにも十分に伝わっていた。

大きな巨体からは想像も出来ないほどに、繊細な心を見せるアンデッドドラゴンに、タロウは心の中で苦笑いを浮かべながらも、アンデッドドラゴンの言葉をじっと待ち続ける。

「う、うちも一緒にいさせてもらえませんか?」

アンデッドドラゴンは両目を力強く閉じて、必死にこの言葉を絞り出す。

予想通りの言葉にタロウは「むー」と鼻息を出した。

「なあ、アンデッドドラゴンよ。俺は魔物を奴隷として使役する「魔物使い」だ。さっき、お前さんを殺そうとした奴らと同族だよ。それでも一緒にいたいのか?」

「う、うち、難しい事はよう分からんけど。うちと同じドラゴンでも、うちを殺そうとしてきます。人間に限らず、魔物も襲ってきます。お母さんがいなくなってから誰も助けてはくれなくて、ずっと逃げて逃げて生きてきました。で、でも、さっき生まれて初めて、お母さんではない貴方に助けてもらいました。うち、ほ、本当に嬉しかった。だ、だから、あの。だから、そ、そそそその。こ、怖いのはもう嫌なのです!!」

「つまり、俺に守って欲しいのか?」

「――は、はい!!」

アンデッドドラゴンが頭を上下に勢い良く振る。

「守ってやらんこともないが、少し質問をしても良いか?」

「は、はい!」

アンデッドドラゴンは両目を見開いて頷く。

「では、まず空は飛べるな?」

「はい!」

「俺を乗せることは?」

「できます!」

「炎は吐けるか?」

「吐けます!」

「性別はメスか?」

「はい! 女です!」

「俺の魔物奴隷となって、一生、命令を聞くか?」

「はい! 何でも聞きます!」

「では、これで最後だ。お前はドラゴン族として、誇り高く生きていかなくてもいいのか? 俺のような小さな人間に支配されて、それで良いのか?」

タロウの問いかけにアンデッドドラゴンは小さく首を振る。

「うち、そんなのはよく分かりません。お母さんもいなくなってしまったし、今日までずっと1人で寂しかった……。そもそも、これからどうやって生きていけばいいのか分からないし。だから、ドラゴンの生き方とかどうでもいいです。うちは、貴方の言う通りに生きていきますから、どうか、どうか! うちを助けて下さい!」

アンデッドドラゴンはポロポロと大粒の涙を落としながら、タロウに救いの願いを必死に訴える。

生きていく為の頼みの綱である筈の母という存在を失い、この過酷な世界を1人で必死に逃げまわって生き抜いてきた幼いアンデッドドラゴンの切なる思いが、タロウにもひしひしと伝わってくるのだった。

「(いくら幼子とはいえ巨大なアンデッドドラゴンだ。多少の敵には負けるはずも無いのだろうが、いかんせん親の教育が施されていないからか、戦う術を全く知らないのだろうな……。そんな状態で他の魔物や人間に狙われては、先程のように確かに「いちころ」にされるわな……)」

タロウは腕組みをすると「ふー!」と強く息を吐き捨てると、静かに頷いて見せた。

「分かった! 良いだろう。今後も良い子のままで、俺の命令をきちんと聞く限り、俺の側に置いてやるし守ってもやる」

「――ほ、本当ですか!?」

「ああ、本当だ。ただし、お前の親にはなってはやれないが、まー、兄ぐらいにはなってやらんでもない。きちんと教育もしてやるし、大事にしてやるつもりだ」

「う、うちの「兄(にい)たん」になってくれるの!?」

「ああ、ただし俺の名前はタロウだから、タロウ様と呼ぶように」

「――は、はい! タロたん!!」

「あ、いや。だからタロウ様」

「タロたん!!」

「タ・ロ・ウ・さ・ま」

「タロたん!!」

「…………」

アンデッドドラゴンは嬉しさで興奮しているのか、タロウの言葉が頭に入らないようであった。

どうやら「タロウ」と「兄たん」が合体してしまったらしい。

この流れはプス子で既に経験済みのタロウは、しょうがないので諦める事にする。

「あーもう、ご自由にどうぞ」

「――ありがとうなの!! これから宜しくお願いしますタロたん!!」

アンデッドドラゴンは興奮が最高潮に達したのか、タロウをぱくりと口に納めてしまう。

「――うぎゃ!?」

「――な!?」

「――タロ様!?」

タロウの短い悲鳴と、メデ美とプス子の驚きが重なる。

「――ド、ドラゴンよ!! タロウ様をその口から出しなさいっ!!」

メデ美の一喝でビクリと体を震わせたアンデッドドラゴンは、慌てて口を開けると、舌の上で正座をしているタロウを地面に置く。

全身、唾液まみれのタロウは、顔を覆うほどの唾液を手ですくって地面に振り捨てた。

「ご、ごめんなさいタロたん……」

「あー、うん。次からは気をつけようね」

タロウは「ハハハ」と渇いた笑い声を上げながらアンデッドドラゴンを許すのだった。

タロウはアンデッドドラゴンの唾液でベタベタな顔をメデ美に向ける。

「メデ美。水の魔法か何かで大まかでいいから、この唾液を落としてくれるか?」

「は、お任せあれ」

タロウはメデ美の水魔法で、全身についたアンデッドドラゴンの唾液を洗い落とすと、お次は火と風を合わせた熱風の魔法で即座に乾かしてもらう。

「お見事。助かったよメデ美」

「いえいえ。タロウ様のお役に立てて光栄でございまする」

「(……それにしても、魔法って生活上でも便利なんだな)」

タロウは相手を攻撃するものばかりと考えていた魔法が、日常生活の上でも役に立つという事に気がついたのだった。

「(まー、いきなりコレだというのは思いつかないが、生活で困った事があれば、魔法を利用するという発想も大事そうだな)」

タロウは服を手ではたきながらアンデッドドラゴンを見上げる。

「タロたん。ごめんなさい」

「気にするな。どうってことはない」

アンデッドドラゴンはしょんぼりと項垂れていた。

「そういえば聞き忘れていたが、1日の食事はどれだけ食べているんだ?」

「えと。うちはだいたい果実を10個ぐらいと、大きな獣を1匹ぐらい食べます!」

「……?」

タロウはアンデッドドラゴンの答えに思わず眉をひそめる。

「(この巨体で果物が10個と大きな獣1匹だと? そんな量でこの巨体を維持できるのか? それとも巨大な果物でもあるのだろうか……)」

タロウはそこまで考えた所で、自身のオタク脳に電気が走るのを感じた。

「(……おいおい。まさかここであの定番が来るのか!?)」

タロウは心臓を高鳴らせながらアンデッドドラゴンに問いかける。

「あー、その、つまりだ。その「大きな体」で果物10個と、大きな獣1匹で良いのか?」

タロウの質問にアンデッドドラゴンは即座に首を横に振った。

「この体は魔力などの消費量が多いので、普段はもっと小さい姿です」

「(――キタァァーーーー!!!! 人間化フラグがキタワァァーーーー!!!!)」

アンデッドドラゴンの想像通りの応えにタロウは心の中で大絶叫する。

「小さくなった方がいいの?」

「――是非ともそうしてくれ!!! というかむしろお願いしますっ!!!」

「は、はい!!」

アンデッドドラゴンはタロウの異様な気迫に圧されて、すぐに何やら魔法の言葉を呟き始める。

すると、アンデッドドラゴンの大きな体が光に包まれ、みるみるうちに小さくなっていく。

そして、タロウより更に小さくなっていくと、腰辺りらへんの大きさで縮むのが止まった。

「…………」

タロウは大型の「犬」程度の大きさになったアンデッドドラゴンを無言で見つめていた。

「(うわぁぁぁーーーん!!! ただ体が小さくなっただけやーーーん!!! 俺のオタク脳のバカバカバカ!!! 普通に考えたらこれしかないのに!!! 淡い期待を抱いた分ショックがぱねぇぇ!!! あーもう何だか死にたい!!! 死んで消え去ってしまいたい!!!)」

タロウは小さくなったアンデッドドラゴンに対して優しく微笑みかけていたが、心の中では阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

大型犬の様なアンデッドドラゴンが「ギャウギャウ」と鳴いている。

「ど、どうでしょうかタロたん!」

「……う、うん。これぐらいの大きさなら街にも連れて帰れるし、食費も抑えられるし言うこと無しだな!」

タロウはアンデッドドラゴンの頭を撫でながら微笑む。
が、心の中では今もなお泣いていた。

なんとか頑張って平静を装うタロウであったが、やはり余りにショックが大きすぎたのか、オタク脳な思考が外に漏れだしてしまうのを残念ながら防ぎきる事は出来なかった。

「アンデッドドラゴンさん……。どうせ小さくなるなら人間っぽくなるのは無理なのでしょうか?」

「……へ?」

小さなアンデッドドラゴンが首を傾げる仕草を見せる。

「あ、いや……。俺の独り言です。キニシナイデクダサイ。ハハハハ」

タロウは嘘っぽい笑いを出しながらごまかす。

「なれますけど。そっちの方がいいの?」

アンデッドドラゴンの返答に、タロウの目に生気が戻る。

「――マジですかぁぁぁ!!?? 是非に是非にぃぃぃ!!!!」

「は、はい!!」

アンデッドドラゴンはまたもタロウの異様な気迫に圧されて、慌てて魔法の言葉を呟くと、その体が光に包まれる。

そして、次の瞬間には人間型の女の子になっていた。

背の丈はタロウの胸の下程度。

ショートボブの丸みのあるサラリとした黒髪に、小さな果実を模したアクセサリーが付いたゴムで、右側の髪の真ん中辺りを少量だけ結んでおり、ちょこんとかわいい髪の毛の細い尻尾が出来ている。

くりくりとした大きな黒い瞳を不安そうに潤ませていた。

服は長方形の白ブラ。
10㎝程度の細い長方形の白い布が胸を一周しており、細い白紐が首の後ろを回り、胸元でブラに繋がり下に落ちないようになっている。

下はローレグの白パンティが1枚のみ。

灰色のほの暗い肌は不死者らしくゾンビっぽいが、体はどの部分も細く、胸もあるのかどうかも分からないぐらいの膨らみである。

ある意味、この「ぺたりんこ」ゆえに、長方形のブラを装着できていると言っても過言ではなかった。

タロウは見るからに小さい女の子を前に、心の中で大絶叫する。

「(――よ○じょキタァァァーーーー!!!!!)」

タロウは天を仰ぎながらガッツポーズをとる。

「(――異世界よ!!! 貴方は俺を裏切らなかった!!! 少しでも疑ったこの私が悪うございました!!! すみませんでした!!! 本当にすみませんでした!!! 生きます!!! 死んでも生きてみせます!!! 誠にありがとうございますぅぅぅ!!!!)」

タロウは心の中で歓喜に溢れた感動で泣き叫んだ。

「あ……あの。うち、こんな風にしかなれませんが、大丈夫でしょうか?」

舌足らずアンデッドドラゴンが不安そうにタロウを見上げている。

タロウは満面の笑みを浮かべながら、アンデッドドラゴンの前に屈みこむと、その綺麗なボブカットの髪を撫でてあげた。

「良いのじゃ良いのじゃ。それでこそ俺の求めし姿よ。これなら他の人間も抵抗が薄いだろうからな。実に素晴らしい!」

「は、はい!」

アンデッドドラゴンの女の子は、タロウに褒められつつ頭を撫でられた事に、頬を紅潮させながら安堵の表情をみせる。

「(俺の世界でいう所の、小○生の中期ぐらいかな。体は細いがそこはやはり女の子。太ももとかお尻なんかは妙に肉付きが良いんだよな。まー、胸はぺったりんこで、膨らみが微妙にある程度だがそれもまた良し。変態紳士たる俺は女の子のおっぱいならば、小さかろうが大きかろうが無問題さ!)」

タロウはセクハラな目でアンデッドドラゴンの女の子を舐め回すように見る。

もちろんアンデッドドラゴンの女の子は、タロウの邪な考えなど理解できていないので、頭の上に?マークを浮かべていた。

「そういえば。アンデッドドラゴンは何歳なんだい?」

「あ、はい! うちはたぶん20歳くらいです!」

「あ……そうなんだ。そこはやはり異世界らしいわけですな。というか俺とあんまり変わらんやん」

タロウが「何かに」意気消沈しているのをメデ美がやんわりと否定してくる。

「タロウ様。ドラゴン族は長寿種でございます。平均1000年を生きる彼等からすれば、20年というのは人間でいうところの、生まれて2歳というところになりまする」

「マジで!? でも、それはそれで幼すぎだな」

「はい、これはあくまで単純計算ですので、人間族の2歳児と同じと考えるわけにはいきませぬが。ただ、だからこそ、この年齢で親が居ないというのが残念でございまするな」

「それはどういう意味だ?」

「どの魔物もそうですが、大体は親から知恵や知識を受け継ぎ、自らの一族が蓄えた戦闘方法を身につけるものなのでございまする。たぶん彼女はそういったものが皆無でありましょうな」

「そうだろうな……」

タロウも薄々は気がついていたこの問題が、メデ美の言葉で事実であることを認識した。
アンデッドドラゴンの女の子は、あいもかわらず頭に?マークを浮かべている。

「まー、小さい女の子形態がとれて、邪魔にならないだけで十分さ」

タロウがアンデッドドラゴンの女の子の頭を撫でると、アンデッドドラゴンの女の子は幸せそうに微笑んだ。

タロウも優しく微笑み返すのだが、心の中ではオタク脳を全開にしてぶっ飛んでいた。

「(しかし、年齢は20歳ながらも、人間でいうところの生まれてまだ2歳ということは、あと80年経ってもまだ10歳? つまり俺が100歳まで生きても、この女の子はよ○じょのままということか!? ま、まさかの「一生ロリキャラ(限定有り)」キタぁぁぁーーー!!!!)」   

タロウはまたも天に向かってガッツポーズをとる。

「よしよし、これからは俺が兄代わりとして、お前を立派なアンデッドドラゴンに育ててやるからな。あと、ピンクメデューサのメデ美と、サイクロプスのプス子もお姉さんだと思って甘えるといい」 

「は、はいっ!! 宜しくお願い致しますタロたん!! そして、メデ姉様!! プス姉様!! 宜しくお願い致します!!」

アンデッドドラゴンの女の子は、タロウ、メデ美、プス子に行儀良く元気に礼をする。

「(あ、メデ美やプス子は「様」付けなのね……。あと、どうやら教育を受けていないせいか、ピンクメデューサのメデ美を怖がる様子も無いみたいだな)」

タロウはもはや既に諦め気分だったので、抗議をする気力は皆無だった。

「う、うむ。まー、タロウ様の魔物奴隷となったからには、我等は仲間じゃからの。そちも我が守ってやるゆえ安心するが良いぞ」

「あい! プス子も守ってあげます」

「は、はい! 宜しくお願いします!!」

アンデッドドラゴンの女の子は、瞳を潤ませながら元気良く頷く。

「……そう言えば。巨大なドラゴンだと思ってたから、アンデッドドラゴンという呼び名のままでいいやと放っておいたけど、ちゃんと専用の名前を考えないとな。お前、名前はなんて言うんだ?」

「は、はい! リザベリナアイロイムと申します!」

「うん。それは親から貰った名前だから大事にしておきなさい。今日からは俺の妹として新しい名前を授ける。良いな?」

「は、はいっ!」

アンデッドドラゴンの女の子は、タロウの真剣な表情に緊張したのか直立不動で身構える。

「じゃあ、今日からお前は「あん子」だ。宜しくあん子」

タロウは、もはや自分の中でお決まりになっている、覚えやすさ最優先の安直な名前をまたもつけるのだった。

「――は、はい! ありがとうございます! う、うち頑張ります!!」

アンデッドドラゴンのあん子は幼さゆえに素直なのか、安直な名前に少しの不満も見せず、瞳を輝かせながらタロウに向かって丁寧かつ元気良く頭を下げる。

「(おう! 少女よ! そんな純粋な目で俺を見ないでおくれ。アンデッドの頭文字から取った「あん+子」という誘惑に勝てなかっただけなのだ! それにしても、あー、久しぶりにアンコ食べたいなー)」

タロウが実に下らない事を考えていると、メデ美とプス子があん子に近づいて来る。

「これらからも宜しくなあん子」

メデ美があん子の頭を撫でる。

「宜しくですあん子」

プス子もあん子の頭を撫でる。

「は、はい!」

魔物娘達の微笑ましい姿を眺めていたタロウは、バカな事を考えるのを止めると、心から慈しむようにあん子の頭を撫でてあげる。

「良かったなあん子。いきなり家族が一杯増えたな」

「――は、はいっ!!」

大きな黒い瞳の端に涙の大粒を貯めたまま、あん子は本当に嬉しそうに笑うのだった。
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