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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第28話 約束通り

タロウは真面目にピクニック(狩り)に出かける日々を過ごした結果、貯蓄は既に銀貨50枚以上になっていた。

だが、ここでタロウは大事な事に気がつく。

「(硬貨って凄い邪魔だよな……)」

元の世界では基本は紙幣であり、もはや電子マネーまでもある時代を生きてきたタロウにとって、硬貨経済というのは実に不便極まりないものであった。

「(革袋に硬貨を入れてドサッと置くのは、まさにファンタジーという感じで楽しいんだけど、これを持ち運んだり貯蓄したりを考えると凄い面倒くさいし邪魔すぎる……。もはや銀貨50枚なんて財布に入らないし、革袋に入れたとしても重くて持ち運ぶのが辛い。金持ちに見られるのは鬱陶しいけど、ある程度は金貨に変えて圧縮した方が良さそうだな)」

タロウは自分の皿に残っているソーセージをフォークで挿して自分の口に運んで噛み切る。

こんがり焼かれた皮がパリっとはじけて、ジューシーな豚肉の旨味と香りが口内に溢れた。

銀貨50枚以上という金額は、レーデの宿の宿賃としては半年分近くに相当する。

しばらくの宿代を楽に稼げた事に気を良くしたタロウは、今日はのんびりと休みを取ることにして、レーデの宿の1階の酒場のカウンター席にプス子とメデ美と共に座って、少し遅めの朝食を食べていたのだった。

隣に座っているプス子が、既に4度めの「うーうー!(おかわりー!)」を叫びながら空のお茶碗をレーデに差し出す。

レーデはタロウの方に目を向けてくるのでタロウは軽く頷いて了承する。

それを受けてレーデはにこやかに微笑みながら、プス子の空のお茶碗を受け取ると大盛りのご飯を入れ、テーブルの上のお皿にはソーセージを追加してくれる。

ほかほかと湯気をたてる炊きたての白いご飯が入ったお茶碗を受け取ったプス子は、「うーうー!(やたー!)」と喜びの声をあげる。

嬉しそうに喜ぶプス子をタロウは優しい表情で見つめる。

「レーデさん。追加料金はちゃんと払いますんで、プス子にはたんと食べさせてあげて下さい。プス子が腹を満たせる程度の稼ぎは何とかなりそうなので」

「はい。分かりました」

レーデはタロウが宿代やら魔物の餌代やらを稼げるようになったことが嬉しいのか、優しく微笑みながら頷いてくれる。

「これからもうちの宿屋を宜しくね」

レーデはタロウにウインクをしながらそう言うと、他の客の為の料理を作るために、またせわしなく調理場を動きまわるのだった。

プス子の横に座っているメデ美は既に食事を終えたのか、湯呑みを両手で添えて持ちながら満足そうにお茶をすすっている。

「メデ美はおかわりはいいのか?」

「タロウ様。我はプス子とは違い胃袋と消費は「普通」ですので、これで大丈夫でございます」

「なるほど。ちなみに、プス子が食べたいというからついつい食べさせてしまうんだが、あんまり食べさせると太ったりするのかな」

タロウは横にいるプス子の横腹をツンツンとつつく。

プス子はご飯を食べながら「こそばいですー」と言いながら体を揺する。

プス子は毎日モリモリと食べている割には、出会った当時と変わらず筋肉質で引き締まった体をしている。

「(いや……むしろ、より引き締まっているような?)」

そう思ったタロウの疑問をメデ美が明快に応えてくれる。

「それは大丈夫でしょう。魔物は人間とは消費の仕組みに違いがございますので。サイクロプスの場合は力を出す為に消費量が多いという事もありますが、もし過大なエネルギーを摂取しても自身を守る筋肉などに変換されるはずです。魔物それぞれの種族によって異なりますが、だいたいは長所を伸ばすために消費されることが多いのでご安心を」

「人間みたいにぶくぶくと太らないわけか」

「人間は「生き延びる」為に栄養を「脂肪」として貯蓄するわけですが、魔物は生き延びる為には「力」が最優先ですからね。魔物にとってこの世界には敵が多すぎますので」

「人間から見れば羨ましい話だけど、逆に言えば飢餓には弱いわけか」

「そうなりますね。兵糧攻めの場合、明らかに人間よりも耐久力が低いかと思われます。もちろん魔物の種類によっても違いはありますが、大まかにはそういう感じでございまする」

「しかし、魔物にとって敵が多いというのは、魔物同士でも争いはあるってことなのか?」

「もちろんあります。人間に攻められているだけでも大変だというのに、魔物同士でも殺し合いは後を立ちません。もちろん派閥や同盟など折り合いをつけている魔物もおりますが、この世界での魔物の未来はもはや無いのかもしれません……。ま、我は人間のみならず、魔物の全てからも敵対されておりましたので、魔物の未来とかどうでも良いんですけども」

メデ美は軽くそう言いながら、目を閉じて穏やかな表情で湯呑みのお茶をすする。

「大変でしたねメデ美さん」

「いえ、何をおっしゃいますか。我にはタロウ様という神がおられるのです。我の苦労の日々は既に泡と消え、今日という今を、とても満足しておりまする」

メデ美はにっこりと微笑みながら言う。

その微笑みに思わず力強く抱きしめてあげたい衝動に駆られるタロウであったが、他の客もいる前でそういう事をするわけにもいかず、慌てなくてもまた今晩、抱きしめまくればいいかと思うのだった。 

タロウも湯呑みの温かいお茶をすすり、まったりと食後を楽しむ。

ぼんやりとまどろんでいたその時、酒場の入口から少し低めな大人の女性らしい艶やかな声が聞こえてくる。

「タロ坊~。約束通り「美味しい情報」を持ってきたよ~」 

タロウが声のした酒場の入口を見ると、腰の上辺りまである流れるように美しい銀髪と肌に吸い付くようにぴったりとした光沢のある黒のレザースーツに同じく黒色のピンヒールブーツ。

浮かび上がる細い腰と丸いお尻のラインが何とも艶かしい。

細い眉の上で真っ直ぐに切り揃えられた銀色の前髪。

濃いめの黒いアイラインが彼女のツリ目をより大きく強調し、少し厚めの唇には真っ赤な口紅が塗られており、色白な肌の上で実に映えている。

胸前のジッパーを無造作に開けて大きな胸の内側のおっぱいを大胆にはだけさせており、色気を振りまく事に何の遠慮も持たない大人の女がそこに居た。

「あ、リベエラさん」

「おはよう、タロ坊♪」

要塞都市バルタロの中で三大ギルドと呼ばれ、住民や魔物関係の者達から尊敬と共に畏怖される存在。

その中で、魔物狩りを専門に行う「鉄獄の檻」のギルド長こそが、酒場の入口で腰に手を当ててご機嫌な表情で微笑む妙齢の銀髪美女のリベエラであった。

リベエラを見たプス子とメデ美は警戒心ゆえか、少し気を張り詰めたのを感じたタロウは「どうどう」とプス子とメデ美をなだめる。

リベエラはピンヒールブーツをカツカツと鳴らしながらタロウの側に寄ってくる。

酒場内にいる男の客達はリベエラの美貌に目を点にする者ばかりだったが、彼女が「鉄獄の檻」のギルド長だと驚く者はいなかった。

どうやら難民街の魔物殺し程度では、雲の上の存在である三大ギルドの長であるリベエラの実像を見た者は少ないということなのだろう。

リベエラは客の男達のまとわりつくような視線を気にもとめずレーデと挨拶を交わす。

「おはようレーデ」

「おはようリベエラ。貴方にしては遅かったわね。あの日の翌日にでも来ると思っていたのに」

「私もそうしたかったんだけれどもね。でも、タロ坊に気に入ってもらうためにも、つまらない情報を持ってくるわけにはいかないからさ」

リベエラは手に持ったB5程度の紙をひらひらと動かして見せる。

「あっそ」

レーデはつまらなそうに返事をして、また調理へと戻るのだった。

リベエラはタロウの横のカウンター席に座ると、背筋を伸ばしてはだけた胸元を押し出すように強調しながら、足を組んで片手で銀髪をさらりとかき上げる。

その所作によってふわりと漂ってくる甘い香水の香りに、タロウは思わず勃起しそうになる。

「(く……あからさまな誘惑だとは分かっていても、下半身が反応してしまうー)」

タロウは平静を装いつつリベエラに話しかける。

「レアな魔物の情報ですか?」

「ええ、今もっとも旬なレア物を持ってきたわ。もちろんメスよ」

リベエラは唇の端を少し上げながら手に持っていた1枚の紙をタロウの前に置いてくれる。

それを手に取ったタロウは、おもむろに目を通す。

その紙はいわゆる「賞金首」のポスターであった。

絵師による写実的な手書きの似顔絵が記載されている。

「…………」

その似顔絵を見た瞬間、タロウは絶句する。

そんなタロウをニコニコと見つめるリベエラ。

タロウはこのまま呆然とし続けるわけにもいかないと考えて、とりあえず話を「ごまかす」ことにした。

「し、しかし、賞金額の桁がえらいことになってますね。金貨250枚っすか……」

「レア系となると、そんなのしか無いのよ。タロ坊のとこのピンクメデューサみたいに、人間界への脅威が大きいと判断されると特別に過大な賞金が設定されるというわけ」

金貨250枚、日本円で換算すれば2500万円相当の賞金である。

「確か、うちのピンクメデューサのメデ美の賞金額が金貨100枚でしたっけ」

「ええ、確かそうだったわね。残念ながら捕らえきれなくて、賞金は色々と分配されちゃったけどもね」

タロウは賞金首ポスターをじっと眺める。

「…………」

タロウはあらためて眺めてみたところで、やはり「絶句」するしかなかった。

「(さ、さすがの俺でもこれは無理だ。メデ美より賞金額が上だから危険とかじゃなくて、そもそもの話として守備範囲外すぎる……)」

タロウは賞金首ポスターの似顔絵をまじまじと眺める。

「(……これ、どこからどう見ても巨大そうな「ドラゴン」やん? 竜まるだしやん? 簡単に言えば大きなトカゲやん? もはやメスとか分からへんやん? いやほんと、どうやって性別を判断してんだよコレ。オスって言われても納得してしまうでこれ)」

タロウは思わずエセ関西弁で突っ込む。

ちなみに賞金首ポスターの似顔絵の上には賞金首の種族名が記載されており、その名前と似顔絵のベストマッチ加減にタロウは目眩を覚える。

「(しかも、ドラゴンはドラゴンでもアンデッドドラゴン。不死竜ってやつか。鱗も真っ黒だし、禍々しいし、まさに名前通りのお姿)」

タロウはリベエラに聞こえないように小さく鼻息を漏らす。  

「(それにしても、いきなり何という斜め上の魔物娘を提示してくれるんだよリベエラさん……。俺が魔物娘を「性的にも調教」していることを知らないとはいえ、あまりにも無理すぎる! 例え、これが本当にメスだとしてもドラゴンに欲情とかできませんから! そこまでレベル高くありませんからっ!!)」

タロウは「興味無し」という意味で賞金首ポスターを静かにテーブルの上に置いたのだが、それを見たリベエラが待ってましたとばかりに丁寧に解説を始めてくれる。

「どう? なかなかの情報でしょ! ドラゴン種というだけでも珍しいのに、しかも、更にレアな不死竜であるアンデッドドラゴンよ。超絶レア種に分類されるわ。どういう訳か、ここら近辺の狩場に迷い込んだらしくてね。かなりの暴れ者らしくて魔物狩り達の被害が続出しているみたいよ」

「ほー」

仕方がないので、タロウはとりあえず返事を返す。

「ちなみに、これはトップシークレットの情報よ。こういう賞金首情報は、まずは三大ギルドに流れて、次に、その他の中小ギルドへ。そして、お次はギルド達の同盟などによる対応でも無理だと判断されると、最後に要塞都市内の全魔物狩りなど達に通達されて総力戦へと移行するわけ。つまり、現時点のこの最新情報は、三大ギルドに入っていないと知る事が出来ない情報なのよ」

リベエラが「どやー!」と、どや顔をしてくるので、タロウは即座に丁寧にお辞儀をして「ありがとうございます」とお礼を言う。

もちろんタロウの内心は上の空なのだが、そんなタロウの年下らしい真面目な態度にリベエラは「うんうん」と頷きながら喜ぶ。

「で、タロ坊としてはどうなのこれ?」

リベエラが瞳を輝かせながらタロウを見つめてくる。

「う……」

タロウは悩む。

「(……ここで嘘はダメだな。ちゃんと無理なものは無理と正直に話そう。その結果、失望されてもかまわないしな。大事なのはプス子とメデ美を守って、のんびり楽しく生きていく事だ。人間女性での脱童貞は、またのチャンスを探そう)」

タロウは「んんっ」と小さく咳払いしてから応える。

「あ、いや、その……。さすがにドラゴンを調教する自信は無いです……」

「無理っぽい?」

タロウは意を決して言ったのだが、リベエラはさほど表情を変えずにあっけらかんとした感じで問い返してくる。

「え、ええ。実に無理っぽいです」

タロウもリベエラの雰囲気と言葉遣いに乗って応える。

「そっかー……。いや、流石に私もこれはちょっとどうかと思ったんだけれどもね。でも、ピンクメデューサを従えるタロ坊なら、もしかして何とかしちゃうかもなんて考えたんだけど、さすがにドラゴンは無茶すぎたわね」

リベエラはペロっと舌を出しておどける。

リベエラ自身も難題だと理解していたと知ったタロウは、少しだけ胸を撫で下ろすのだった。

「ええ、さすがにちょっと魔物奴隷として規格外ですよね。図体も巨体ですし、連れ歩くのも大変そうだし、餌代も凄そうですし……」

「そうね。そう言われれば確かにそうよね。ドラゴンなんか使役しちゃえば、ちょっとした軍隊と戦争ができるものねー」

リベエラはカウンターテーブルに片肘をついて手の平を顎に添える。

「(……やはり、ドラゴンともなれば、ちょっとした戦術兵器レベルなんだな)」

そこで、タロウはふとある事が気にかかりリベエラに問いかけて見る。

「そんなドラゴンをギルドで対処できるんですか?」

「ええ、できるわよ。ドラゴンといえど無敵ではないからね。やりようはいくらでもあるのよ。もちろん、大変だけれどもね」

その言葉を「へー」と頷きながら聞いたタロウだったが、その内心は少し複雑だった。

「(さすがは魔物が負け組の世界だな。ドラゴンさえも狩られる側か……)」

タロウは湯呑みのお茶をすする。

「そういえば、このドラゴン、リベエラさん達はどうするんですか?」

「うちらは、まだ出てないよ。今も言ったけど「大変」だからね。下手をすれば被害も半端じゃなくなるし、今回は無理をしてまで狩りたくないのが本音だね。それに、今回は「傀儡の魔王」が率先して出張っているらしくてね。こいつらと競争してまで狙うのも面倒くさいなーって感じかな」

「傀儡の魔王といえば確か魔物使いギルドでしたっけ」

「そうそう。ちなみに、ギルド長はタロ坊みたいに、普通の魔物使いには扱えないような魔物を扱う男よ。魔王なんて呼ばれるだけあって実力は大したもんさ。ただ、タロ坊とは違っていけ好かない野郎だけどもね」

「彼等が狙うということは、アンデッドドラゴンを使役するつもりなんでしょうかね」

「それは無いね。確かにタロ坊と同じく普通では扱えない魔物を扱う男だけど、あいつにはピンクメデューサは使役できないもの。実力からいえばタロ坊はあいつなんかを軽く凌駕しているわよ。たぶん、目的は剥製コレクションとして狙っているんじゃないかな。あいつらは自分が使役できない魔物なんかを剥製にすることによって「使役した気分」に浸るらしいからね」

「なるほど……。剥製ですか。ちょっと勿体無いですね」

「あら? 興味が出てきちゃった?」

「少しだけですけどもね。もし、狩場で見かけることがあれば、ちょっとだけ狙ってみます」

そういう風にタロウは応えたのだが、本心は見かけることがあればせめて「ここから立ち去れ」と助言ぐらいはしてやろうと思ったのだった。

「へー。連れの魔物が2体しかいない魔物使いの台詞ではないわねー。でも、そういうの好きよ私」

リベエラが瞳を輝かせながらにんまり微笑む。

「それに、2体のうちの1体はピンクメデューサだからね。もし、ピンクメデューサをちゃんと使役できるならドラゴンとも対等にやりあえると思うわ。となれば、もし仕留めたら賞金の7割をお願いね?」

「それはもちろん。ただし、例の「約束」も忘れないで下さいよ」

タロウがそう言うとリベエラは席から立ち上がり、タロウの耳元に顔を寄せてくる。

「……わかってるわ。仕事が成功した回数だけタロ坊の女になってあげる♪」

タロウの耳元でそう呟いたリベエラはそのままタロウの頬に軽く口付けをすると、そのまま店の出口に向かって歩いて行く。

しかし、途中で思い出したかのようにくるりと振り返る。

「……そうそう。もし、何か手伝って欲しいことがあったら遠慮無く私の所にくるのよ? 無理をして死んでは絶対にダメよ?」

「はい。遠慮無く頼らせてもらいます」

タロウは素直に返事する。

リベエラは嬉しそうに「宜しい」と言うと、前に向き直り、髪とお尻を揺らしながら店を出て行くのだった。

「(……ふむ。リベエラさんで人間童貞を捨てる為にドラゴン狩りっていうのもありかもな……)」

タロウがそんな下心を考えている横で、プス子とメデ美が食後のお茶をのんびりとすすっていた。

タロウはお茶のおかわりを飲んでいるメデ美に声をかける。

「なーメデ美。ドラゴンって倒せる?」

「ドラゴンですか? ええ。あんな図体がでかいだけのトカゲなど我等ピンクメデューサの敵ではございませぬ」

「マジですか?」

「確かに強敵ではございますが、我等の秘技を持ってすればあやつらの竜鱗(りゅうりん)さえも撃ち破ってみせまする」

「ちなみに10回戦ったら何回勝てる?」
  
「タロウ様のご命令とあらば、この命を燃やし尽くして全勝を捧げましょうぞ」

メデ美がギラリと目を輝かせるが、タロウは慌てて顔を振る。

「いやいや、そうじゃなくて。普通に戦った場合で、しかも、逃げることも考えてみてよ」

「は、はぁ……。それでしたら6~7回程度でしょうか。もしもがあればそういう感じになるやもしれませぬ」

「それはそれで凄いな。だが、メデ美を失う可能性が3~4割もあるなら、もう狙うの止めだな。絶対にメデ美を失うわけにはいかないからな。それに、そもそも1日銀貨5枚で幸せだしね」

「なんとお優しいお言葉。タロウ様に大事に思って頂けてメデ美は果報者でございまする。ですが、もしお許しが頂けますれば……」

「ん?」

タロウはお茶をすすりながらメデ美を見る。

「もし、タロウ様の精液を常備させて頂けますれば、100戦しても全勝してみせまするぞ」

「――ぶっ!?」

タロウは思わずお茶を吹き出す。

「タロウ様の魔力回復効果の有る精液があれば、我は無限に魔法を撃ち放つ事が可能となりましょう。そうなれば、ドラゴンの群れさえも駆逐してご覧にいれましょうぞ!」

「(そうだった。俺の無限精力(エンドレス)の力は精液自体にも凄まじい生命力を内包させているおかげで、魔力回復効果まで持っているんだよな。まさかの俺の精液を瓶詰めにする「白濁液エリクサー」が現実になりそうっぽいとは……。でも、もし本当にそういう利用法を取れば戦術としてかなり有効な切り札になりそうだよな。いや、もはや戦略レベルかもしれないぞこれは……)」  

タロウが自分のチート精液の可能性の凄さに感心していると、いつのまにかカウンターの前でレーデが腕組みをしてこちらを見つめていた。

腕組みをして圧迫されたおっぱいがコルセットの上からよりはみ出している。

「あれ、どうしたんですかレーデさん」

「リベエラはどんな情報を持ってきたの?」

「ああ、それでしたら、これですよ」

タロウはカウンターテーブルの上の賞金首ポスターをレーデに手渡す。

それを受け取ったレーデは眉間を手で抑えて深い溜息をついた。

「……ったく、リベエラったら、また無茶苦茶なものを持ってきて」

「ですよねー。ドラゴンなんて俺でも無理ですよ」

「本当にそう思っているの? お願いだから、功名心に駆られてドラゴンなんかに手を出さないでよ?」

「大丈夫ですってば。俺は有名になることより、ここでのんびりレーデさんの手料理を食べることの方が大事ですから」

「ほんとにほんと?」

レーデはカウンター向こうの調理場からこちらに向かって身を乗り出しながら問い詰めてくる。

「ほんとにほんとですとも」

「じゃ、今日の晩御飯はステーキを焼いてあげるから、これからも遠くに行っちゃダメよ?」

「はい。今日はお休みですけど、明日からも、いつもの近場でいつも通りの狩りをして帰ってきます」

「ほんと?」

「はい、ほんとです」

「絶対にドラゴンを狙ってはダメよ?」

「はい、狙いません」

「よし、いい子ね。素直な男の子はお姉さん嫌いじゃないわ」

レーデは、更に身を乗り出してタロウの「リベエラにキスをされていない方の頬」に軽くキスをしてくれる。

「(――うわ!? マジすかレーデさあん!!)」

タロウは内心では大いに驚くが声には出さず、少しだけ驚いた表情を浮かべる。

そんなタロウの表情を見たレーデは顔を赤らめながらも「サ、サービスよサービス!」と照れ笑いすると、艶やかな黒色のポニーテールを揺らしながら慌てて調理に戻っていくのだった。

「(……なんか、リベエラさんに対抗心を燃やしているみたいだなーレーデさん。でも、色気ムンムンのリベエラさんと違って、年上ながらも真面目系なレーデさんが頑張って色気を押しつけてくる感じが、なんかこう……たまりませんな~)」

タロウは「でへへ」とだらしなく笑いながら、湯呑みに残っている冷めたお茶を一気に飲み干すのだった。
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