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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第27話 マイペース

タロウは昼前に宿屋を出ると、プス子に荷車を引かせて要塞都市から少し離れた所にある同業者の少ない狩場へと到着する。

早速、初狩りの時のようにメデ美の魔法で、プス子の弓矢に風の加護を付与してから狩りを始める。

プス子は大きな単眼をキョロキョロと動かすと獲物を見つけたのか、大弓を容易く引いて弓を放つ。

プス子の怪力と大弓の弦から撃ち放たれた弓矢はそれだけでも強力なのに、更にメデ美の風の加護を受けているお陰で、凄まじい風切り音をあげながら直線的に地平線へとすっ飛んでいく。

しばらく待っているとプス子が嬉しそうに声をあげる。

「――やた! 急所に直撃しました!!」

「おつおつ」

タロウは「どこか」で倒れたらしい半魔獣の数をカウントしていくだけという実に楽ちんな仕事を、ここ数日の間のんびりとこなしていた。

プス子は辺りをキョロキョロと見回して、また大弓から弓矢を放つ。

1匹ずつ狩る時もあれば、群れでいたらしいのを連続で狩る時もあったりするが、大体、プス子が1匹目を仕留めてから約15~30分程度でタロウはカウントの仕事を終えてしまう。

「……はい。今ので1日の予定の銀貨5枚を達成したので、今日の狩りはお終いー」

タロウが終了の声をプス子にかける。

「あい!」

プス子は元気に返事しながら大事な大弓を肩に下げてタロウの側に寄ってくる。

「メデ美。荷車の中からお弁当を持ってきて」

「かしこまりました」

荒野の上であぐらをかいているタロウの横に座っていたメデ美は、静かに立ち上がると蛇の胴体をずるずると動かして荷車に向かい、その中から宿屋の女将であるレーデ特製のお弁当を持ってくる。

「ありがとうメデ美」

メデ美が持ってきたお弁当と竹製の水筒を受け取ったタロウは、荒野に置いて包みを外すと早速、開いてみる。

「うは! 美味そう!」

大きなお弁当箱は二段重ねで、ひとつは大きなおにぎりがぎっしりと詰まっており、もうひとつには鶏のから揚げ、ソーセージ、卵焼き、果物などが詰まっていた。

タロウはおにぎりを掴みあげて「ぱくり」と頬張る。

「おにぎりうんまー!」

タロウは綺麗に澄み渡る青空を眺めながら、外で食べる食事の美味しさに改めて感動する。

「ここ最近、外で昼食を取っているけど、この開放感は食事を更に美味しくしてくれるよなー。しかも、レーデさんのお手製だから美味さも倍増。もはや仕事の狩りじゃなくてピクニックになりつつあるな」

プス子とメデ美もおにぎりを取って頬張っている。

プス子は両手におにぎりを持って交互にかぶりつき「むふふー」と幸せそうに笑っている。

メデ美はプス子の頬に付いたご飯粒を「しょうがないのー」と言いながらも、どこか楽しそうに取ってあげている。

そんな光景を眺めながらタロウも何だか幸せを感じてしまい、頬を緩めながら少し甘めな卵焼きをかじりつつおにぎりを頬張る。

「(いや、もうほんと。これはダメやね。異世界に来たチート持ちが「堕落」するのが良く分かるわ。こんなに楽ちんで幸せだと、このままダラダラと生きていたくなるもんなー)」 

タロウは幸せを堪能しながら鶏のからあげにかぶりつく。

鶏のモモ肉のジューシーな旨味が口の中に広がり、その旨味の中におにぎりを放り込んで口の中で噛み混ぜる。

「(くー! 開放的な外で食べるおにぎりとおかずのハーモニーはたまりませんな~!!)」

タロウは竹製の水筒の栓を抜いて喉に流し込む。

「んぐんぐ! ぷはっ!」

タロウは手の指に付いたご飯粒を前歯でこそぎ取りながら、ぼんやりと青空と流れる白い雲を眺める。

「いやー……。ここは大変な世界なはずなんだけどなー。俺の生き様のせいなのか実に穏やかなもんだねー」

タロウがポツリと呟いた言葉を、隣に座っているメデ美が噛み締めるように頷く。

「……はい。この世界は確かに過酷な場所です。我にとっては色あせた白黒の世界です。でも、なぜでしょうか。タロウ様と一緒にいるとこの世界が色鮮やかに美しく見えてしまうのです。世界は何も変わっていないはずなのに……」

「それはきっとメデ美の心が変わったからさ。憎く思えば憎い。綺麗だと思えば綺麗。相手は何も変わってはいないけれど、俺達の心ひとつで世界は何とでも変わるってことさ」

「さすがタロウ様。深いお言葉でありまする」

「それっぽく言ってみただけさ」

タロウが苦笑いを浮かべると、メデ美は幸せそうにはにかむ。

土埃を巻き上げない程度の緩やかな風が吹き、メデ美の艶やかなピンク色の髪をサラサラと揺らしていく。

その様の美しさと言ったらもはやタロウは言葉にならなかった。

「(魔物娘とはいえプス子もメデ美も美人さんだからなー。平凡な俺が囲っていいレベルの女性ではないから、その不相応さに恐縮するというか、ありがたいというか、いやはや、ほんと異世界さまさまだな)」

そう思いながらタロウはプス子の方を見ると、プス子がお弁当を眺めながら眉を下げて指を咥えている。

どうやら、自分の分を食べきってしまったが、まだまだ食べ足りないようだった。 

「ほれ、プス子。俺の分をあげるから、たんとお食べ」

「あ、あい!」

プス子は大きな単眼をぎゅむりとつむって本当に嬉しそうに笑うと、両手のそれぞれにおにぎりを掴んで、また交互に頬張る。

タロウはそんなプス子を見つめながら微笑むと、座ったままで青空に向かって背伸びをするのだった。
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