FC2ブログ
 

よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第24話 もちろん断る

要塞都市の中で三大ギルドと呼ばれ、住民や魔物関係の者達から尊敬と共に畏怖される存在。

魔物殺しギルド「殲滅(せんめつ)の王道」

魔物狩りギルド「鉄獄(てつごく)の檻」

魔物使いギルド「傀儡(くぐつ)の魔王」

その中で、魔物狩りを専門に行う「鉄獄の檻」のギルド長こそが、タロウの目の前で実にご機嫌な表情で微笑む妙齢の銀髪美女のリベエラであった。

「……という感じです。詳しいことは「秘技」ですのでお答えしかねますが、まー、普通の魔物使いとは違う調教方法を取るのが特徴です。基本は手厚く扱って、最大限の能力を発揮させます」

「なるほどねー。でも、長年この業界にいるけど、そんな手法は初めて聞いたわ」

リベエラは自分の顔の横に垂れてきたサラサラの銀髪を耳の後ろにかき上げる仕草をしながら頷く。

「でも、その独自の手法でこのピンクメデューサを使役しているんだから、貴方の調教技術の凄さはもはや天下一レベルよね」

「レーデさんにもこういう感じの説明なので、これ以上の追求は勘弁してもらえると助かりますリベエラさん」

「ああん、リベエラと呼び捨てでいいよ。私はレーデのような堅物じゃないからさ」

「――私のどこが堅物なのよ!」

リベエラの軽口に女将レーデが真剣に怒るが、リベエラは両肩を少しだけ上げるだけで聞き流す。

「ねえ、タロウ。貴方の顔はとっても平凡だけど、その中身が全く平凡じゃないのが実に良いわ。良い顔の男は掃いて捨てるほどいるもんだけど、中身が立派なのはレアもレアだからね。もちろん両方が揃っているのがベストだけど、今まで生きてきて両方が揃っている男なんて見たことが無いから、タロウは平凡な顔だけど実に良い男だと認めてあげる」

「(褒めているのか、けなしているのかどっちなんだよ)」

「つまり、お姉さんタロウの事が気に入っちゃったなー」

「(……は?)」

タロウはリベエラの言葉に「きょとん」としてしまう。

話が変な方向に行き始めたことに気がついたのはタロウだけではなかった。

長年の付き合いである女将レーデが即座に反応する。

「――ダメよリベエラ! タロウさんは私の宿の大事なお客様なんだから! それに、貴方31歳でしょ!! 若いタロウさんに手を出すとか恥を知りなさい恥を!! 男が欲しいならそこらの酒場にでも行けば、同い年ぐらいの男がいくらでも寄ってくるでしょ!!」

「――なんだとゴラッ!! 勝手に私の実年齢をバラしてんじゃねーよ!! そもそもテメーの方こそ26歳の癖に年下狙ってんじゃねーよ!!」

「ね、狙ってないわよ!! ただ、タロウさんが私を頼ってくれるから私はタロウさんを弟のように思って、お世話をしてあげようと思っているだけよっ!!」

「それが「余計なお世話」って言うんだよ!!」

「なななな、なんですって!!!」

妙齢の美女同士がカウンター越しに壮絶な口ゲンカを繰り広げている。
 
そんな様子をタロウは呆然と眺めていた。

「(……なにこれ?)」

「待て待てレーデ。31とか26とか、どーでもいいんだよ! つまりタロウの目には私達が女としてどう見えているかっていうのが、とにもかくにも大事なんじゃないのかい!?」

「全くもってその通りね!」

リベエラが導き出したひとつの答えに、女将レーデも大きく頷きながら納得する。

「タロウ。お前は、私とレーデの事を女としてどう思う!?」

リベエラが真剣な表情でタロウを見つめながら問いかけてくる。

カウンターの向こうにいるレーデも真剣な目でタロウを見つめている。

「(……いや、だから、なにこの流れ)」

タロウが戸惑っていると、リベエラとレーデの目に「殺気」が宿り始める。

「(……うわ、コワイ。ここで、彼女達の女の尊厳を傷つけたら死ぬな俺……。ま、お世辞を言う必要は無いから簡単だけどもさ。なにせ、俺の性癖からすれば二人共、綺麗なお姉様達だからな)」

タロウは「んんっ」と声を出さずに小さな咳をする。

「お二人ともお綺麗ですよ。お二人のように綺麗なお姉様達ならお近づきになれたら良いなーとは思いますが、俺のような普通な男では高嶺の花すぎて眺めているだけで精一杯です」

タロウは「はははっ」と自分を卑下するように苦笑いを浮かべる。
もちろん「わざと」だ。

「……タロウ」

「……タロウさん」

年下の男の子が、世間では既に年増に扱われる自分達を女性として綺麗だと褒めてくれて、しかも「高嶺の花」だから諦めるという殊勝な態度を前に、その乙女心が「刺激」されないわけが無かった。

「――タロ坊!! あんた可愛いことを言うじゃないかー!! 何も諦めることは無いんだよ!? 素直にお姉さんに甘えてくれれば、ちゃんと応えてあげるんだからさー!!」

リベエラは「きゃー♪」と黄色い声をあげながらタロウの顔を、自分のはだけた胸元に抱き込む。

「むぐぐ!?」

タロウはリベエラの豊満な胸に顔を埋められて息を詰まらせる。

リベエラとタロウの姿を見て、女将レーデは慌ててカウンターに片手をついてふわりと飛び越えると二人の前に着地する。

「わ、私だって宿屋の女将として大事なお客様であるタロウさんの面倒はしっかりとみさせて頂きます!! だから遠慮せず甘えて下さいね!!」

レーデはリベエラの胸元からタロウを引き離すと、自身のコルセットの上にはみ出している豊満な上乳にタロウの顔を埋めさせて抱きしめる。

「むごご!?」

またも柔らかいおっぱいに埋められて呼吸が詰まるタロウ。

ここで、タロウはやっと気がついた。

自分は今「女性に奪い合い」をされているという事実に。

それに気がついた時、タロウは何とも言えない幸福感を感じる。

「(こ……この俺が……。生まれてこの方、彼女がいなかったこの俺が。誰にも告白されたことの無いこの俺が。相手へ告白前に既に「敗北(他に好きな人がいるパターン)」していたこの俺が。魔物娘とウハウハする為に、この異世界に来たから魔物娘とラブラブできるのは何となく分かってはいたが、人間の女性からも熱烈な思いを向けてもらえるとは恐悦至極!!!! 異世界万歳!!! チート万歳!!! 俺万歳っっっ!!!)」

タロウは心の中で万歳を繰り返しながら泣いた。

「レーデ! あんたは宿の客としてタロ坊が大事なんだったら、お金を払ってくれる客を他に見つければいいだろ! 私は彼を1人の男としても、ギルドのメンバーとしても、タロ坊が必要なの!!!」

「……う!」

リベエラの言葉に、女将レーデは言葉を詰まらせる。

確かに「ただの客」が欲しいだけならば、他に探せばいいだけなのだ。

レーデが言葉を詰まらせたのを好機と見たリベエラは、タロウをレーデの胸元から引き離して自分の顔の前に引き寄せる。

「ねえ、タロ坊!! あんた、私のギルドに入りなさいよ? それだけの力があれば、副ギルド長にしてあげるわよ!! もちろん……タロ坊が望むなら、タロ坊の女になってあげてもいいわ」

リベエラは最後の言葉を言う瞬間、真っ赤なルージュの唇を「ちろり」と舐める仕草をする。

大人の色香にタロウは思わず「ごくり」と喉を鳴らしてしまう。

魔物娘で脱童貞は済ませてあるのだが、正確には人間では「まだ」なのである。

ある意味「素人童貞」とでも言うべきだろうか。

タロウにとって「人間の女性」というのは、やはり特別な存在であった。

お金を支払って性行為を行う娼婦ではなく、一応、交換条件はあるものの、それなりの好意の元に「タロウの彼女」として「タダ」でやらせてくれるのだ。

この「彼氏と彼女」という関係性というものにタロウは一種の憧れと夢を抱いていた。

だが、タロウはその夢を「ぐっ」と抑えこむとリベエラに即答する。

「ギルドには入れません」

「――な、なんでよ!?」

「どんな魔物を狩るかどうかは自分で決めたいので。あと、どれだけ稼ぐかも自分で決めるつもりです」

そもそもタロウは「魔物をむやみやたらに殺せない」のだ。

言葉が分かるからこそ「仕事」として無感情に魔物を殺したり狩ったりすることが出来ない。

というか、そういうことをしたくないと考えている。

そういう組織の代表格であるギルドなどに入ってしまえば、殺したくもない、狩りたくもない魔物を仕事ゆえに任務を遂行しなければならなくなってしまう可能性が大であった。

「うーん……そっかー」

リベエラは「困ったなー」という感じで眉を下げる。

「(……さすがは大人の女性か。細かい事は言ってこないのな)」

「……じゃあ、時々、面白そうな仕事なんかを持ってくるから、もし気乗りしたなら手伝ってくれる?」

リベエラは言葉を選びながら優しく問いかけてくる。

タロウは「上手いなー」と心の中で苦笑いしながらリベエラの申し出に頷いた。

「それなら大丈夫です。こちらも魔物使いとして、レアな魔物のメスの情報とか欲しいですし」

「あら、メス専門なの?」

「ええ、基本はメス専門です。メスの方が調教しやすいので」

「分かったわ。なら、レア系の魔物のメスで面白い情報があったらタロ坊に教えてあげるわ」

「ありがとうございます。その際は俺だけで狩りたいと思いますが、捕獲代は7:3って所でどうですかね」

「あら、情報提供代に私が3ってこと?」

リベエラの視線が少しだけ鋭くなる。

それは当然だろう。
リベエラにすれば自分でレアな魔物を捕獲した方が基本的には儲かるからだ。

だから、タロウは微笑みながら顔を左右に小さく振る。

「いえ、こちらが3です。ただし、捕獲したレアな魔物のメスなんかは、そのまま俺に譲ってもらえれば助かります」

「……なるほど。タロ坊に情報を渡してタロ坊が狩りに行くと。しかもレア系なら売ることも出来ないし損も無い。私は何も労すること無く、報酬の7割を頂けるのね。凄いお得な話じゃない」

「ええ。レアな魔物ともなれば危険がつきものだろうし、リベエラさんにケガをさせるわけにはいかないですからね」

「いやーーーん♪ タロ坊ったら可愛いことを言ってくれるじゃない!!」

年下男の殊勝な態度に気をますます良くしたリベエラは、タロウの首に腕を巻きつけて抱きついてくる。

タロウは首に抱きつかれて驚く素振りを見せながらも、内心ではこの交渉の意味について考えていた。

「(……こちとら金には困りそうに無いから本当はタダでも良いんだけれども、ここは少しでも報酬を頂いておく方がギブアンドテイク感を出せるだろう。もちろん、こちらが少しだけ損をしている感じが大事だけどな)」

そんな、したたかな事を考えているタロウの耳元で、リベエラが女将レーデに聞こえないように艶やかな声で囁いてくる。

「……でも、貰いっぱなしじゃ悪いから、仕事が成功した回数だけタロ坊の女になってあげるわ♪」

そう呟いて、タロウの首元から離れると、タロウに向かって「パチリ」とウインクをひとつ投げてくる。

「(……うわぁー、今の一言で勃起したんですけどー)」

大人の女性の余裕のある色香にタロウはドキドキしてしまう。

「ちょっと……リベエラ。今、タロウさんに何か呟いたでしょ」

旧知の仲である女将レーデはリベエラの行為に感づいたのか、リベエラとタロウにジト目を向けている。

「べつにー」

リベエラはあっけらかんとした態度で席を立ち上がると、タロウの頬に「ちゅ♪」と軽いキスをする。

「じゃ、またねタロ坊」

リベエラは振り返らずに小さく片手を振ると、サラサラと綺麗な銀髪を揺らしながら店を出て行くのだった。

そんなリベエラの背中を、まだ警戒心が解けないのか、少し鋭い眼差しで見送るプス子とメデ美。

「んもう! リベエラったら」

タロウの横に立っているレーデは不満そうにそう呟きながら真っ白い腰エプロンを掴み上げると、タロウの頬についたリベエラの真っ赤なルージュをゴシゴシと拭きとる。

「あの……レーデさん」

「なに?」

機嫌が悪いのか、つっけんどんに応えるレーデ。
  
タロウはポケットから皮財布を出して、中から銀貨3枚を取り出してレーデに手渡す。

「え……? どうしたのこれ?」

「今日、無事に魔物を狩れました。何とかそれなりに稼いでいけそうです。それは今日の報酬分ですが、それで宿泊の延長をお願いします」

「まあまあまあ!! 無事に狩れたのね!?」

「はい。俺もプス子もメデ美も、レーデさんの料理が大好きなので、これからもどうぞ宜しくお願いします。知り合いのいないここで優しくしてくれるレーデさんだけが頼りなんで」

タロウは眉を下げながら「わざと」情けなさそうに微笑む。

その頼りなさ気な表情に保護欲をそそられたのか、女将レーデは頬を紅潮させながら何度も頷く。

「うんうんうん! 何かあればこの私に頼るのよ!! 私がタロウさんを守ってあげるんだから!!」

レーデは感極まったのかタロウの顔をまた自分の胸に抱き寄せるのだった。

「(むほほー!)」

レーデのコルセットの上側からはみ出した柔らかいおっぱいを堪能するタロウなのであった。
関連記事



*    *    *

Information