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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第22話 宿への帰り道

タロウは賞金換金所で初賞金である銀貨10枚を手に入れた。

金貨1枚にしなかったのは、単に両替が面倒な事と、使う際に目立ちたくない為である。

換金の際に事務所員にどんな顔をされるかと少し心配していたタロウであったが、事務所員は「凄いですね」と驚きながらも普通に対応してくれたので特に異常な事では無いようだった。

タロウは銀貨10枚を皮財布に入れながら今後の予定を考える。

「(1ヶ月の稼ぎをいくらにするべきか。もし1日銀貨10枚ペースだと1ヶ月で約300枚。金貨換算で30枚だから、日本円だと約300万円。……なんじゃこりゃ。この世界でこんなに荒稼ぎしてもいいものなのか?)」

タロウは財布の中で鈍く輝く銀貨達を眺める。

「(まー、要塞都市内の連中は荒稼ぎしていそうだが、この難民街ではやめておいた方が良さそうだよな。事務所員の人が特に驚かなかったのも、たまたま「今日だけだから」と思ったはずだろうからな。毎日銀貨10枚となれば話は違うはずだ。となると、レーデさんの宿代が1泊1人で銅貨1枚。今は1人と2体だから1日銅貨3枚。1ヶ月なら銅貨が約90枚。銀貨換算で9枚)」

そこまで計算してタロウは気がついた。

「(あら……ということは、今日1日でもう1ヶ月分の宿代を稼いでしまったわけか……。そうなると、とりあえずは1日銀貨5枚程度には抑えておくか。確か要塞都市内の宿屋は1泊1人で銀貨1枚以上だったから、あそこに居れる程度の人間という事で特に異常な稼ぎではないだろう。ま、そんな人間がなぜ難民街に住み着くのかと言われるかもしれないが、あんなギスギスした所に住みたくないからなー。レーデさんの美味しいご飯とおっぱいを見ながらのんびりと生きていきたい今日この頃です)」

タロウは財布をポケットにしまうと賞金換金所を出る。

外に待たせておいたプス子とメデ美が側に寄って来る。

ピンクメデューサのメデ美を呆然と眺めている魔物殺しや魔物使い達が数人いたが、タロウは面倒くさいので見ないふりをする。

「タロウ様。人間が取引に使う「お金」とやらは手に入りましたか?」

メデ美がピンク色のふんわりとウエーブのかかった髪を揺らしながら、タロウの側に寄ると心配そうに話しかけてくる。

「ああ、無事に手に入ったよ。これでしばらくはレーデさんの宿でのんびりと暮らせるだろうな。というか、これから毎日、今日の半分ぐらい狩れば、かなり余裕をもって生きていけると思う」

「人間の世界とは何とも不思議なのですね」

「物々交換の等価取引は色々と煩雑だからな。だから人間達は、この貨幣という鉱物に人類共通の絶対的な価値を与えることにより、あらゆる品物と交換することができるようにしたわけさ。なにせ腐らないしな。便利なもんだよ。ただ、生み出した人間自身さえもこの貨幣で売買され、その命を奪われることさえある。全く金の力というのは凄まじいよ」

タロウは背伸びをしながら青空を見上げる。

「(元の世界も、この異世界も金の力は絶大だ。ま、金が無くても食うことさえ出来れば、生きていくことは可能なんだけどな。欲をそれなりに捨てれば、人間はどこでも力強く生きていけるってなもんさ)」

タロウはプス子とメデ美に微笑みかける。

「そんじゃ、今日はたんまり稼げたし、宿屋に帰る前に何か買って帰ろうか」

「タロ様ー! 白パンが食べたいです!」

「おう。今日は良く頑張ったから帰りに買ってやろう」

「わーい!」

プス子が両手を上げて喜ぶ。

「メデ美にも何か買ってあげよう」

「は、はい!」

メデ美も嬉しそうに破顔する。

タロウはプス子とメデ美を連れて難民街の商店通りに向かい、ぶらぶらと探索しながらプス子とメデ美に色々と買い与えるのだった。

「もぐもぐもぐもぐ!」

プス子は紙袋に詰め込まれた白パンを小脇に抱えて歩きながら、ひたすら「もぐもぐ」と食べ続けている。

メデ美はタロウに買ってもらった様々な色の飴玉が入った小袋を握りしめながら、口の中で「コロコロ」と飴玉を転がしている。

「なんと甘美な味なのでしょう。こんな甘くて芳醇な食べ物を口にしたのは生まれて初めてです。こんな素晴らしい食べ物を与えて下さるとは、タロウ様にはなんとお礼を申しあげればよいのか……」

メデ美は少し泣きそうになりながらタロウに感謝の言葉を伝えてくる。

タロウもメデ美からもらった飴玉を口の中で転がしていた。

「いいのいいの。今日はメデ美の魔法のお陰でより楽に狩りができたからな。俺とプス子だけだったら近寄られて、近接戦闘の可能性もあったし助かったよ。だからこそメデ美へのご褒美だ」

「なんとお優しいお言葉! 我が神は、我に褒美まで与えて下さるとは!! 我は……我は……感無量でございます!!」

メデ美は敬々しく頭を垂れると、飴玉袋を頭上に掲げる。

「うむ、大儀であった。遠慮せず受け取るが良い」

「――ははぁぁ!!!」

タロウも慣れてきたのか神っぽく大仰に応える。
その言葉にメデ美は、より頭を垂れて敬意を表す。

「ねえねえメデ美ー。私もその丸いの食べてみたいです」

「――え?」

プス子の願いを受けてメデ美は「神からの褒美」をプス子に分けてもいいのか分からず、タロウと飴玉袋とプス子を「キョロキョロ」と眉尻を下げた顔で見渡す。

「それはもうメデ美の物だから好きにしていいんだよ」

タロウの助け舟を受けてメデ美は笑顔を浮かべる。

「は、はい!」

メデ美は即座に飴玉袋の口を広げると、そこから飴玉をひとつ取り出す。

「プス子。口を開けなさいな」

「あい!」

プス子が「あーん」と口を開けた所にメデ美が飴玉を入れてあげる。

プス子は飴玉を口の中で「コロコロ」と転がすと、その大きな単眼をぎゅっと閉じて頬を紅潮させる。

「あまーい! あまーい! この丸っこいのあんまいです!」

プス子も飴玉が気に入ったのか嬉しそうにはしゃぐ。

「であろうであろう! タロウ様から賜った宝物じゃ! 実に美味かろう!」

メデ美もプス子が喜ぶ姿に嬉しそうに頷く。

「じゃあ、お礼にプス子の白パンもメデ美にあげます!」

プス子は小脇に抱えている紙袋から白パンを1個取り出すとメデ美に渡そうと突き出す。

「よ、良いのか?」

メデ美は少し驚いた様子でプス子の白パンを眺めている。

「うん! 私達は仲間だから 喜びは分かち合うものです!」

「あ、ああ! そうだの! 我等は仲間だの!」

メデ美は目を赤らめながらプス子から白パンを受け取ると、白パンを鼻先に持ってきて香りを楽しむ。

「これもまた芳醇な香りがするの。だが、我は今、飴玉を楽しんでおるので、後でこの白パンを頂くことにするが良いかの?」

「あい! 宿に帰ったら一緒に食べたいです!」

「おお! そうじゃの! 一緒に食べようぞ!」

プス子とメデ美が楽しそうに会話をしている。

タロウはその会話を歩きながら背中で聞いていた。

「(メデ美は今まで孤独に生きてきたみたいだから、友達が出来たようで良かった。プス子の天真爛漫さは大したもんだな)」

タロウは武器屋の前で止まると物色する。

「(……メデ美に木の棒を買う予定だったんだよな。だが、カムフラージュの為とはいえ、本当にただの木の棒をメデ美に持たせるのもつまらないからな。どうせなら木の棒っぽい魔法の杖にしておこう)」

タロウはとりあえずメデ美に質問する。

「なあ、メデ美。魔法の杖なんかを持つと魔法の威力が上がったりするのか?」

「いえ、我等は木の生命力に頼ることはありませんので、杖を持っても意味はありません」

「あら、そうなんだ」

「人間は魔力が低い者が多いので、あらゆる物で魔力の底上げをするようですが、我等はそういう物を必要とはしません。ただ己の中にある魔力のみを動力源とします」

「へー」

「ただし、この魔力が枯渇してしまうと、さすがの我等も役立たずと化してしまいます。もちろん休息したりすれば回復可能ですが時間がかかります。ただ……」

「ただ?」

「先日、タロウ様より頂いたタロウ様の熱き「精」があれば、魔力が即時全回復するようです」

「――ぶっ!!」

タロウは思わず噴き出す。

「タロウ様との熱い契の後に気がついたのですが、どうやらタロウ様の精には魔力回復効果があるようです。もしタロウ様が我に精を注いで下さるのならば、我は四六時中、魔法を撃ち放つことが可能やもしれません」

「(なるほど、それはまたチートな話だな。つまり、無限精力(エンドレス)の力は、精液自体にも凄まじい生命力を内包させているわけだ。これがいわゆる能力の応用化か。でも、いずれ俺の精液を瓶詰めにして「白濁液エリクサー」とかにするのは……なんかやだなー)」

タロウは腕組みをしながら「むーん」と呻く。

「ま、それはそれで良い情報だからいいけど、今はピンクメデューサに対して魔法の補助になるアイテムは何かないのか気になるな」

「それでしたら1点だけ。我等も宝石の力ならば享受することが可能です」

「宝石か」

「はい、この世界が生まれた時より存在すると言われる「石の王」達ならば、我等の魔力を増幅、回復促進、魔力消費量の減少など、様々な恩恵を「少しながらも」受けることが可能です」

「なるほど。じゃあ、せっかくだからそういうのにしよう」

「え?」

意味が分かっていないメデ美を置いておき、タロウは店の中に入って武器屋の店主と交渉する。

タロウは目的の物を武器屋の店主に見繕ってもらうと、それを持ってメデ美の元に戻ってくる。  

タロウの手には長さ50cm程度の程よい太さの木の棒が握られていた。

その木の棒には仕掛けがついており、握り手の中の空洞に爪先程の小さな丸い楕円形の緑色に輝くエメラルドが収められている。

「ほら、握り手の中に宝石が入っているんだってさ」

タロウは握り手の仕掛けを開けて中のエメラルドをメデ美に見せる。

「確かに。石の王のひとつエメラルドですね」

「これは仕込み杖と言って、魔法の杖である事を隠すための代物らしい。見た目はただの木の棒だからな」

「何のために人間はこのような形式を取るのですか?」

「なんて言えばいいかな……。ようするに、人間は相手を騙すのが好きなんだよ。武器を持っていないと見せておいて油断させ相手の隙を突く」

「なるほど「人間らしい」考えですね」

「そういうこと。そこが人間の一番恐ろしい所だよ」

「ええ、我等ピンクメデューサさえも追い詰める人間達の「謀略」は魔法よりも恐ろしきものです」

タロウは「全くだ」という感じで頷く。

「これからは、そういう人間の知恵は俺が与えるし防いでやるから安心しろ」

「――は、はい!」

メデ美は神の加護を得たといわんばかりに興奮しながら頷く。

「で、この程度の宝石でも魔力補助の効果はありそうか?」

「え? ええ。大丈夫かと思われます」

メデ美はその棒を受け取ると確認する。

「はい、大丈夫です。魔法の威力は微増程度ですが、回復促進と魔力消費抑制の効果を小規模程度ですが受けられそうです」

「なら、それで決定だな。というか、木の棒に見えるのはそれぐらいしかないから我慢してくれ。あまりど派手な魔法具は周りから危険視されるからな。でも、いつか機会がくれば、もっと良いのを買ってあげるよ」

「――え?」

メデ美は一体、何が起こっているのか理解できないという感じで呆けている。

タロウは店内に居る武器屋の店主の元に行くと、店主の前に予め置いておいた銀貨5枚をそのまま手渡す。

タロウはそのまま店を出るとメデ美の前に戻ってくる。

「――あ、あのタロウ様!? こ、こここれは一体!?」

メデ美が混乱しているのでタロウは神っぽく大仰に応える。

「メデ美よ。その魔法の杖をそなたに与える。今後も私を護る為にその力を尽くせ。期待しておるぞよ」

「――は、ははぁぁ!!!」

メデ美はその場で額を地面につけると、木の棒(魔法の杖)を両手で掲げでタロウを崇める。

「頭を上げよメデ美」

「――は、ははぁ!!」

上半身を上げたメデ美の肩をタロウは微笑みながら「ぽんぽん」と叩く。

「頼りにしてるぞメデ美」

「――は、はいっ!!!」

メデ美は頬を紅潮させながら元気良く頷く。

「良かったねーメデ美ー」

プス子が嬉しそうに笑いながらメデ美に近づく。

「ああ!! ああ!! 我は生まれて初めて魔法具を頂いたのだ!! 石の王の魔法具は我等とてそう簡単には手には入らぬ代物じゃからの!! ああ、何という事だ!! 我が神は、こんな卑しき蛇めに宝具まで与えて下さるとは!!」

メデ美は木の棒を胸に押しつけてギュッと両手で抱きしめながら興奮した表情でプス子に説明している。

「私も、こんな凄い大弓をタロ様に貰ったのです。えへへー」

プス子も背中に背負っているお気に入りの大弓をメデ美に見せる。

「おおー、そうであったのか! さすがは我等の神であらせられるの!!」

「あい! タロ様は神です!!」

「ああー、我はなんと素晴らしい神に出会えたのであろうか!! この命、必ずやタロウ様の為に使いましょうぞ!!」

プス子とメデ美がワイワイと楽しそうに会話している前で、タロウはメデ美の胸辺りを眺めながら1人違う事を考えていた。

「(とりあえず、メデ美の服はこのままでいいかな。なにせぴっちりTシャツが異様にエロいからな!)」

タロウはプス子とメデ美に背中を見せると歩き出す。

「んじゃ、レーデさんの宿に帰ろうか」

「はい!」

「あい!」

プス子とメデ美が元気良く応える。

タロウ達はにこやかに語らいながらレーデの宿へと帰るのだった。
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