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よあけの部屋

□ 魔物娘たちの御主人様! □

第18話 けせらせら

タロウの情熱的な愛の告白に籠絡してしまったメデ美は、「ぽわぽわ」と頬を紅潮させながらタロウを見つめている。

そんなメデ美に巨大な影が一気に近づくと、そのままメデ美にまとわりつく。

「――メデ美ー!! 今日から魔物奴隷仲間だねー!!」

「――な、なんじゃ!?」

メデ美に抱きつくプス子。
いきなりのスキンシップに驚くメデ美。

「あ、そいつプス子ね。俺の魔物奴隷第一号。見ての通りサイクロプスのメス。話し方は少しとろいが頭は良いぞ」

「プス子とやら。お、お主、我が恐ろしくは無いのか?」

「ぜんぜんー!」

「我はピンクメデューサだぞ!?」

「初めて聞いたー!」

「それに先程は、我も本気で睨んでしまいすまなかった。怖い思いをさせてしまったな……」

「大丈夫です! メデ美も怖かったのだと思います。だから警戒するのも当たり前なのです!」

「……そ、そなたは優しいの」

プス子はメデ美に抱きつきながら「にへへ」と笑う。

「プス子の住んでいた山は田舎だったのか、メデ美達の噂が届いていなかったのかもな」

「そうなのでしょうか……」

メデ美はタロウの目を不安そうに見つめる。

「それか、プス子が天然でサイクロプス仲間からの話を聞き流していた……のほうが現実的か」

「……我等を知らぬ人間と魔物は少ないでしょうから」

寂しそうに微笑むメデ美。

「でも、難民街の一般人はメデ美を見ても分からなったようだけどな。その代わり、魔物を獲物にする人間達には一発だったけども」

タロウは苦笑いを浮かべる。

「――も、申し訳ありませんタロウ様。このような卑しき蛇めをお側に置いては、きっとタロウ様にも嫌な思いを……」

メデ美は悲壮感のこもった瞳でタロウを見つめる。

「そ、それでもメデ美はメデ美は! タロウ様のお側におりとうございます! メデ美をお側に居させて下さいませ! どうか……どうかっ!!」

「心配するなってメデ美。結局、生きていくだけなら方法はいくらでもあるもんさ。俺達だけで山でのんびり生きても良いしな」

「やまー! やまー!」

プス子が嬉しそうに連呼する。

「ま、それは色々とダメだった時だけどもな。とりあえずは俺が「魔物使い」として生きていく為にも、メデ美はちゃんと俺の言う事を素直に聞くんだぞ?」

「――は、はい! タロウ様!」

タロウの優しい言葉にメデ美は安堵の表情を浮かべる。

「……そうだ。プス子は頭を撫でられると喜ぶから撫でてやってくれ」

「……え? 良いのですか?」

「いいからいいから」

タロウに促され、メデ美は恐る恐る手を上げると、自分に抱きついているプス子の頭の上に手を乗せて優しく撫でる。

「えへへー。今日から魔物奴隷の仲間同士よろしくねー」

プス子が大きな単眼を閉じて嬉しそうに笑う。

その表情を見てメデ美は微笑みながらも泣きそうになっていた。

「我を必要だと言ってくれるタロウ様という人間の神が現れ、我を仲間と言ってくれる魔物のプス子殿までも現れる。我に、こんな日が訪れるとは微塵も思わなかった……」

メデ美はプス子の頭を撫で撫でし続ける。

「プス子でいいよー」

「そうか、プス子よ。そなたが我を仲間だと言ってくれるなら、我もまたそなたを仲間と信じよう。どうか、仲良くしておくれ。我の初めての魔物の仲間よ」

「あい!」

プス子はメデ美から離れると元気良く返事しながら力強く頷く。

「(一時はどうなることかと思ったが、メデ美も根は良い娘だな。まー、年齢は120歳だけど見た目はお姉様だからな。娘で間違いは無い、うん)」

タロウはメデ美に近づくとメデ美の丸坊主頭を撫でる。

「ど、どうされましたタロウ様!?」

プス子に続き、次はタロウからのスキンシップにメデ美は驚く。

「あ、いや。その、やっぱりこんな風に髪を切るなんて酷いよなと思って。どれぐらいで伸びそうなんだ? やっぱり人間と同じぐらいかかるのかな」

「あ、それなら今すぐにでも」

「え? そうなの?」

タロウは思わず呆けた声で聞き返す。

「我の髪は蛇化して戦闘に用いる事ができますので、人間に警戒されて切られてしまいましたが、今の残った魔力でも元に戻すことは可能です。ただ、あの檻の中で髪を元に戻しても戦闘を行う為の魔力は尽きておりましたので、元に戻す意味が特に無いと考えてこのままにしておりました」  

「へー」

「あの……元に戻しましょうか?」

「ああ、是非是非!」

タロウは何度も頷きながら答える。

「では……」

メデ美は目を閉じると、魔法の詠唱なのか「ぶつぶつ」と何かを呟く。

すると、メデ美のピンク色の髪が伸び始め、前髪は目を隠すほどに、後ろ髪は肩を超えて背中の真ん中辺りまで、あっという間に伸びる。

次は、その髪達が真下から風を受けたようにふわりと浮くと、髪型を形成し始める。

分け目は真ん中より少し左側で、前髪は目にかからないように額の上を斜めに覆うように横へと流れていく。

ピンク色のサラサラとしたストレートの髪の毛は、首の横辺りから毛先にかけて軽い緩やかなウエーブがかかり、ふんわりとした毛先は隣にある毛先と立体的に交差しあっている。

後ろの髪はそのまま背中へ、頭の両側の横髪は胸側へと流れていく。

胸前に流れる横髪は後ろ髪より少し短いのか、乳房にかかるかどうか程度の長さだった。

先程までのメデ美の丸坊主頭とは全く違う姿にタロウは見惚れてしまう。

背中の真ん中辺りぐらいまである後ろ髪。

首の横辺りまでは綺麗なストレートでありながら、そこから毛先にかけて緩やかなウエーブがかかった髪型は、まさに「上品なお姉様」といった感じだった。

「ど、どうでしょうか……タロウ様」

メデ美は片手で毛先を触りながら恥ずかしそうにタロウを上目遣いで見る。

「(俺の妄想(髪型の想像)に間違いは無かった!! ぺっぴんさんやー!! メデ美はべっぴんさんやでー!!)」

タロウは心の中でエセ関西弁を叫びながらガッツポーズする。

「あ、あの……タロウ様?」

心配な表情を見せるメデ美にタロウは親指を立ててニカッと笑いながら叫ぶ。

「――とても美しいと思います!!」

メデ美はタロウが親指を立てるその仕草を理解できなかったが、タロウが嬉しそうに答えてくれたので、メデ美は嬉しそうにはにかむ。

「き、気に入って頂けてとても嬉しいです!」

その時、タロウはメデ美がもう片方の手で胸を隠している事に気がついた。

「そういえば、メデ美は服が無いんだよな……。お金さえあればすぐに買ってあげるんだけど、残念ながら、メデ美を買い上げる時に全財産を使ってしまったからな……」

「――な、なにを言われますかタロウ様!! こんな蛇めの服など気になさいますな!! 我はタロウ様の魔物奴隷!! お側に居させて頂けるだけで幸せというもの!!」

メデ美は真剣な表情で「恐れ多い!」とかしこまる。

だが、それを「そうか」と納得するような程、タロウは無神経な男では無かった。

「いやいや、俺が嫌だよ。女性が裸で困っているのにそのままなんてさ」

タロウはメデ美の側に寄ると、自分の端が擦り切れた黒のマントを外して、「ふわり」とメデ美の上半身にかけてあげる。

「――!?」

メデ美はタロウの行為に驚き、そして呆然とする。

「なんと……。なんと勿体無い……」

メデ美は自分の上半身にかけてもらったタロウの黒マントの胸前部分を「ぎゅっ!」と両手で握り締めながら俯く。

マントの上にポタリポタリと何かが落ちる。

どうやらメデ美は泣いているようだった。

「ど、どうしたんだよメデ美?」

タロウが慌てているとプス子がメデ美の側に寄ってきて、メデ美の背中をさすってあげるのだった。

「タロ様は優しいでしょ? プス子もたくさん優しくされていつも泣いてしまうのです」

「我が一族と生き別れて100年以上。それ以来、ただただ苦痛の日々を過ごしました。一族以外の者から、これほどの優しさを頂いたのは、本当にこれが初めてです……」

メデ美は声を押し殺しながら泣いている。

タロウはそんなメデ美の頭を撫で撫でしてあげるのだった。

「今日まで良く頑張ったな。別に大した事はしてあげられないけど、せめて一緒に楽しく生きような」

メデ美が落ち着くまでタロウはメデ美の頭を撫で撫で、プス子はメデ美の背中を撫で撫でして、コロル大荒野の大地の上で人間1人と魔物2体が寄り添い合っているのだった。


10分ほど感涙にむせび泣いていたメデ美も少し落ち着きを取り戻し、タロウの黒マントで涙を拭っている。

「タロウ様はやはり我の「神」です。天にいるはずだと思っていた神が、まさか人間の中におられるとは……」

「だからと言って、他の人間を信用したらダメだぞ。魔物をなるべく大事にしようとする俺は、この世界での異端者だからな」

タロウはプス子に注意したようにメデ美にも注意しておく。

だが、メデ美は当然という風に頷いた。

「分かっております。我が信じるのはタロウ様のみです。他の人間は嫌いです。あと、プス子以外の魔物も嫌いです」

「それはそれで問題発言ですけども」

タロウはため息をつくが、そこは追々、何とかしていこうと思った。

「まだ昼前だけど、今日はもう宿屋に帰るか。マント1枚のメデ美を連れて狩りをするのも変な感じだし。そもそも、メデ美も檻に捕らえられるまでは、苛烈な死闘を繰り返していたみたいだしな。魔力も底をついているようだし戦闘は無理だろ」

タロウはメデ美の汚れた体を見ながら、今日までの逃げ場所の無い逃避行を思うと胸に込み上げるものがあった。

と、同時に思う。

「汚れた体はお風呂でキレイキレイしましょうね~♪」

「お、おふろ?」

「わーい! おふろーおふろー!」

メデ美がきょとんとしている中、タロウとプス子は「きゃっきゃ♪」と喜んでいる。

プス子はお風呂の温かさとアワアワを思い出して喜んでいるのだが、もちろんタロウはメデ美とのエロい方向で喜んでいた。

「まーまー。行ってのお楽しみで。んじゃ、帰ろう帰ろう」
 
タロウは先程、投げ捨てた自分の短剣を回収してから、プス子とメデ美を連れて、ここまで来た道を引き返して難民街へと向かう。

難民街の前でメデ美の首に識別首輪の黒色(戦闘用)を付けると、タロウは意気揚々と宿屋へと凱旋するのだった。
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