FC2ブログ
 

よあけの部屋

□ 伝説になる騎士は元勇者(改) □

第4話 神世の遺跡について

 俺はウェンダリから渡された教科書を、無地の白Tシャツに黒いハーフパンツという部屋着のままで、のんびりと読みながら「神世(かみよ)の遺跡」について調べる。

 遺跡が発見された当初は、少し豪華な財宝が見つかる遺跡という程度の認識だったらしい。

 しかし、危険性のわりには微々たる宝なので国が大々的に動くことはなかったようだ。

 そのかわり、平民達の間で夢を求めて挑戦する一大ブームが巻き起こる。

 たくさんの人間が命を散らせたようだが、一夜で大金持ちに変貌する数少ない成功者を見てますます熱狂は加熱したらしい。

 そして、とうとう財宝ではなく強力な武器を手に入れる者が現れる。

 その者は、その武器と力に酔いしれて、その力の矛先を国に向けてしまった。

 国は多大な犠牲を出しながらも反逆者を鎮圧し、それ以後、「神代の遺跡」が国の管理下に置かれることになるというわけだ。

 そして、迷宮に潜る者を自国の軍事力を担う騎士家に任せるべく、王立迷宮騎士学園が設立され、やがては平民にも門戸が開放されて今に至る。

 迷宮から手に入れた協力な武具類は国の軍事力を向上させ、大国の脅威を幾度も防ぎ、豊かな国家を築き上げる原動力となった。

 国としての国土の小ささに加え、特に目立った資源も無く、土地が貧相ゆえに食料自給率も低いが、迷宮から掘り起こされる豊富な財宝で国は運営されているらしい。

「(つくづく、おもしろそうだなー)」

 刺激も平穏も両方があればこそ価値があると俺は考える。

 刺激があるからこそ人の優しさが身にしみるし、平穏が心を癒す。

 だが、刺激だけでは辛い。

 しかし平穏だけでもつまらない。

 人は常に戦いと勝利を重ねて、平穏を勝ち取り続ける生き物だ。

 つまりは泳ぐのを止めたら死ぬマグロだ。
 ……違うか。
 まーいいや。

 ようするに、労働の後の一杯は最高だ!という事だ。
 これも違うか。
 いや、これはやっぱり真理の一つだよな。

 人により娯楽は違えども労働の後のご褒美は格別だ。

 仕事を頑張れば帰り道の空気ですら美味い。

 人には元来、そういう性質があるはずだ。

 まー、残念ながら俺は少しばかり、人よりも平穏が苦手で刺激も過大なのを好みがちな感じだが、それでも戦いを終えての美酒と食事と風呂と睡眠、そして女は大好きだ。

 これらの癒やしがなければ刺激が欲しいとは思わない。

 戦いだけの毎日などちゃんちゃらゴメンだ。

 しかし、だからと言って平穏だけも無理。

 前の異世界で最後は酒に溺れたけれど、日々を頑張らずに飲む酒は少しも美味しくはなかった。

 見た目は楽しそうだったろうが、心の底は常に凍てついていた。

 つまりは刺激も平穏もバランスが大事なわけさ。

 だからこそ、命懸けで迷宮に潜った後の一杯はさぞかし美味いのだろうなと想像して、俺はごくりと生唾を飲んだ。

 俺はそこまで思考をまとめると、そっと教科書を閉じる。

「うーーーん!」

 両手を上げて背伸びをすると、俺の出っ張った丸いお腹が「ぐー」と鳴り響く。

「そろそろ夕食時だし、食堂に行くかいムスロ?」

 俺の腹時計の音にウェンダリが楽しそうに笑う。

「――おう! 行こうぜ行こうぜー!!」

 俺は万歳の格好のままウェンダリの提案を受け入れるのだった。
関連記事



*    *    *

Information