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よあけの部屋

□ 伝説になる騎士は元勇者(改) □

第3話 王立迷宮騎士学園

 俺はウェンダリに連れられて
 無駄に立派過ぎるたたずまいの寮へと帰って来た。

 外は白亜の白壁で気品があり三階立て。

 玄関に入れば広いホールが階数分あり、床には目も覚めるような真っ赤な絨毯が敷かれていて、両端に緩いカーブ状の階段が取り付けられている。

 二階と三階のホールには豪華なシャンデリアが下げられてキラキラと輝いている。

 まるで王族の家かというぐらいの華やかさだった。

 俺はウェンダリに連れられて2階へと上がると、右棟の中間ぐらいの場所にある「208」という部屋番号の部屋に入れられる。

「僕達の部屋はここだよムスロ。どう、思い出した?」

「ああ、おかげで思い出した」

 もちろん嘘である。

 正確には「覚えた」だ。

 相部屋というわりにはかなり広く、普通の部屋の境が無くなって連なっているだけともいえる。

 しかし、装飾や家具はシンプルだった。

 中央奥の窓のある壁に頭を向けて二つ並べられたベッド。

 左右のそれぞれの壁側に手前から、机、棚、クローゼットが並んでいる。

 勉強する時はお互いに背中を向ける感じだ。

 そして、部屋の中央部には丸い机と椅子が4つ置いてある。

 相部屋同士の交流と寮内の友達が来た用なのだろうか。

 しかも、部屋の手前には左右に小部屋があり、左は水洗トイレ、右はバスルームだった。

 この広さから考えるとあくまで共同生活の練習が目的であり、狭苦しい所で忍耐を鍛えるという目的は無さそうだった。

 それにしても、この寮は豪華すぎる。

 たぶん、貴族の学園なのだろうとは思うが俺自身は貴族の出身だとは思えない。

 ウェンダリは高級な銀色の鎧を脱ぐと、部屋の左奥隅にある木製の固定棒に鎧をかけていく。

 それを見て、反対方向のスペースが俺側なのだと理解した俺は、自分のスペース内にある固定棒に向かい質素な鉄鎧を脱いでかける。

 この鎧の差からみても、やはり俺は貴族ではないだろうな。

 俺はさっさと鎧を脱いでから、まずはバスルームのある部屋に入る。

 部屋の中は更に分かれており、バスタブがある部屋の前室には洗面台が設けられていた。

 俺は洗面台の前に佇んで鏡を覗き込む。

「……はい、確定」

 俺はほぼ分かっていた事なので特に取り乱すことはなかった。

 鏡に映っている俺の顔は、どこからどう見ても俺の顔では無かった。

 デブなので丸みを帯びた顔。

 ラクダの様な大きくて虚ろな目。

 通常状態で瞼の開きが半分程度なので常に睨んでいるような形になり、見るからに目つきが悪い。

 鏡を見ている俺でさえこいつは無気力なのか、それとも機嫌が悪いのかと思ってしまうほどなのだから、他人からすれば不快感を感じてしまうのは当然だろう。

 ボサボサで脂ギッシュな黒髪。

 しかも目を隠すように垂れている前髪。

 見た目からして陰湿で卑屈な感じがビシビシと伝わってくる自分の姿を見て思わず苦笑いを浮かべる。

 これでは、いじめてオーラが出すぎて、いじめ野郎ホイホイ状態ではないか。

 俺は洗面台の引き出しを引いてハサミは無いのかと物色してみると、質素な髪切りハサミがあったのだが、それよりも更に良い物を発見する。

 それは手動式のバリカンだった。

 しかも、髪の毛の長さ調節も出来る便利な機能まで付いている。

 俺は手動式バリカンを手に取ると、髪の長さが1cm程度になるように調整してから躊躇(ちゅうちょ)無く髪の毛を刈りあげる。

 鏡には一瞬で丸坊主になった自分の姿が写っていた。

 俺は頭を撫でる。

 だははは、まるでクレヨンし●ちゃんだなこりゃ。

 まーでも、俺の顔は目つきが悪いから、あのキャラとは違い愛嬌のカケラが微塵も無いけどな。

 でも、前よりは見た目が明るくなったのは確かだ。

 それに、丸坊主は洗うのも楽だから便利なんだよな。
 ただし、夏場は陽射しが痛くて帽子が必須だけれども。

 まー、地肌が透けないように長めに切ってみたから大丈夫だとは思うが。

 バスルームから出てきた俺を見たウェンダリが思わず吹き出す。

「――どどど、どうしたのムスロその髪!!」

「爽やかになろうと思ってな。どうだウェンダリ。前よりかは良いだろ?」

「う、うん。確かに前よりかは爽やかになったと思うよ」

 ウェンダリは呆然としながらも頷いてくれる。

「そうだろそうだろ。覚悟を決めた男は丸坊主に限るからな! と、いうわけで今日から俺は元気ではつらつな男になると決めたから宜しく!!」

「う、うん。宜しくムスロ」

 キョトンとしているウェンダリを放っておいて俺は自分の机に向かうと、椅子に座って引き出しを開けて物色する。

 俺は自分自身の事も、そしてこの異世界の事もよく知らないのだ。

 なにか自分を知れる物はないかと漁りまくる。

 必要最低限の筆記用具にメモ用紙が少し。

 やはり、男だからか日記は無かった。

 あったとしても元宿主の思いに引きずられるのも面倒なので、無い方がむしろ良かったのもしれないな。

 俺はメモ用紙の束を持ち上げると、引き出しの一番底に小冊子が有ることに気がつき、それを机の上に取り出す。

 表題は「王立迷宮騎士学園 入学案内」と書かれていた。

 前の異世界とは違う形の文字だが、日本語を読むように問題無く読める。

 まー、既に街中の看板で確認済みだったのだが、結果的には残っているチート能力もあるようだ。
 ただし、なぜこれが残ったのかという法則がいまいち分からなくて困るが。

 俺はそのパンフレットを手に取り目を通す。

 王立という事は国が設立して運営しているのか。

 そうなると一種のエリート学園じゃないか。

 どうして「俺」の様な奴が、ここに入学できたのだろうか。

 もしかして、この身なりでも良い所のおぼっちゃんだったりするのか。

 だが、その答えはパンフレットの1ページ目に載っていた。

 どうやら、それがこの学園の「目玉」の一つらしい。

 なるほど、そういうことか。

 そこには大きく「平民も入学可能」と書かれていた。

 俺はパンフレットを読みながらウェンダリに声をかける。

「なーウェンダリ。俺は平民出身だよな?」

「え? ああ、うん。ムスロは前に自分でそう言っていたよ?」

「で、お前の方は貴族なのか?」

「あ、えと、うん……。で、でも、平凡な中級貴族だよ? そんなに大した事もない騎士家だよ!?」

 何やら慌て始めるウェンダリ。

 たぶん根暗で卑屈な元宿主が前に嫉妬でも爆発させたのだろう。

「ウェンダリ。心配しなくても俺達はルームメイトで友達だ。むしろ身分の高いお前が俺を切り捨てない限り、俺がお前を切り捨てる事は無い。安心しろ。というか頭を打って記憶がやばいからお前がいてくれないと困る。宜しく頼むぞ友よ」

「……ム、ムスロ~」

 急に鼻の詰まった声を出すので、俺はウェンダリに振り返るとウェンダリは銀色の瞳を潤ませていた。

「何、泣いてんだよ。お前は見た目も性格も良いんだから友達もたくさんいるんだろ?」

 俺が呆れ顔でそう言うと、ウェンダリは涙目のまま眉根を寄せて怒り出す。

「――ムスロこそ何を言ってるんだよ! 僕が男子全員から無視されているのを知っているだろう! それなら女子と仲良くしようかと思ったけれど、彼女達は僕とは友達ではなく恋人になりたいみたいだし、結局、僕には1人も友達がいなかったんだよ!?」

「あー……悪い悪い。そうだったな。お前、女子受け凄いもんな。そりゃ男子連中もひがむわな」

「僕はモテたくてモテているわけじゃないよっ!!」

 おいおい、ウェンダリ君。
 君は天然か?
 そんな事を言われた日には男子連中はますますいじけるぞ。

 というか、もう既に言ってしまっているんだろうな。

 ま、貴族らしいから俺みたいにいじめるわけにもいかないし、その結果、最低限の付き合いだけをする村八分みたいな状態になっているんだろうな。

「僕はここで仲間を作って、皆で熱く語り合い、切磋琢磨しながら一緒に明日を目指そうと思って来たのに……。それなのに、それなのにー。こんなの僕の思ってたのと違うー!!」

 ウェンダリが子供のように「びゃー!」と泣き始める。

「男がびーびー泣くな! それだけ美しい顔立ちをしていれば面食いな女子達が放っておくわけがないだろ?」

「――え!? ぼ、僕の顔が美しい!? や、やだなームスロったら!!」

 ウェンダリはなぜかピタリと泣き止むとテレテレと頬を赤く染める。

 おい、なんだその反応は。

 男が男に顔を誉められて頬を染めるんじゃ無い。

 というか、俺には「男の娘」属性は無いんだ。
 頼むからもっと男らしくしてくれ。

 前の異世界では、仲間は全員が男連中だったのだが、男子高校出身の俺には別に大した違和感も無く、むしろ毎日バカ騒ぎしまくれる楽しい環境だった。
 しかし、ウェンダリの様な中性的なのはどう扱えば良いのか全く分からん。

 俺はもはや触れるのも面倒なので、テレテレモジモジしているウェンダリを放っておいてパンフレットに目を戻す。

 まず基礎知識として、この国の名前が分かった。

 ここは迷宮王国「ゴッドパレス」というらしい。

 名前からして迷宮がある国家なのだろう。

 パンフレットにも次代の王国を担う迷宮騎士達を教育する為の3年制教育機関であると書かれている。

 ただし、王立であることを考えると、貴族達の子供を若い内から集めて王家への忠誠心を叩き込むという面もあるのだろう。

 そして、驚くべきは平民でも入学可能という点だ。

 学費、食費、寮費はすべて無料。

 そして、無事に卒業できれば、平民が出世できる最高の位である「迷宮下騎士」の称号をもらえるらしい。

 更に卒業後は王国迷宮騎士団のどれかに騎士として配属されて就職できるらしい。

 つまりは、平民でありながら出世から安定した就職までできるわけだ。

 このパンフレットの「迷宮下騎士」という単語には、赤エンピツで何重にも丸が書いてある。

 どうやら元宿主も出世と安定を求めて、この王立迷宮騎士学園に挑戦したらしい。

 ただし、注意書きには「卒業ができない者には称号は与えられない」と書かれてある。

 入るのは簡単だが、出るのは難しいという仕組みのようだな。

 俺はまたもパンフレットを眺めながらウェンダリに声をかける。

「なーウェンダリ。俺達、何年生だっけ」

「え? 2年生になったばかりだよ」

「俺達2年生は皆、17歳だよな」

「そうだよ」

「ちなみに俺の成績を知っているか?」

「……」

 ウェンダリが沈黙する。

 俺にとってはその沈黙が答えだった。

「やばいんだな?」

「……う、うん。ムスロは今、総合点が学年内で最下位だと聞いたことがあるよ」

「そうか、分かった。それはまーおいおい何とかするさ。というか、色々と教えてもらうつもりだから宜しくなウェンダリ」

「も、もちろんだよ! せっかく仲良くなれたのに、すぐにお別れなんて僕は嫌だよ」

 俺はウェンダリに「頑張るから心配するな」と声をかけるが、それでもどこか不安そうな表情をウェンダリは浮かべるのだった。

 だが、それらよりも俺は気になっている事があった。

 王立でありながらこれだけの厚待遇で、平民を教育するという仕組みがどうも納得できないのだ。

 本当に国を強化する為だけの善政なのだろうか。

 その答えはパンフレットの最後のページにあった。

 そこにはこう書かれてあった。


『国の未来を支える「迷宮騎士」が陸続と生まれん事を切に願う』


「なーなーウェンダリ。そもそも「迷宮騎士」ってなんだっけ?」

「――え!?」

 俺の問いに、なぜかとても驚くウェンダリ。

 よほど「忘れて」はいけないぐらい重要な事のようだった。

「あー悪い、なんか頭の中で整理がつかなくてさ。軽く説明してくれないかな」

 即座に嘘をつく俺。

「あ、ああ、そっか、そうだったね。いいよ、うん。簡単に説明してあげる。僕達の国にある「神代(かみよ)の遺跡」に潜れる権利を唯一、与えられているのが「迷宮騎士」さ」

「神世の遺跡?」

「遥か昔、僕達の国で発見された不思議な迷宮の事だよ。そこには、この世界には存在しない危険な魔物とか、見たこともない武器や財宝があるんだって」

「迷宮なのか?」

「そう、迷宮。しかもかなりの巨大さで、未だに全体の把握は出来ていないらしくて、今も続々と新しい遺物が発見されているらしいよ」

「へー……」

 なるほど、それは実に面白そうだな。

「じゃあ、ここの学園の連中はその迷宮に潜る為に学んでいるか」

「いや……実は必ずしもそうでもないんだ。なにせ死亡率が高いから迷宮に潜ったが最後、戻って来ない人も多いからね。だから、将来が安定している大貴族なんかはあんまり迷宮の深部には潜りたがらないよ。あくまで正式な騎士の称号を得るために入学して、卒業したらあまり迷宮には潜らない王国騎士団に配属されていく人が多いかな」

 ウェンダリは少し寂しそうに語ったが、すぐに気を取り直すと話を続ける。

「でも、国の為、そして自分の夢とロマンの為、命懸けて迷宮に潜る迷宮騎士も大勢いるんだよ。国で言えば防衛や軍事力強化に繋がるし、個人で言えば名誉、地位、財産が手に入るわけだからね!」

「……防衛?」

「迷宮からは時々とんでもない武器や防具が出てくるんだ。まさに神の如き力を持った物がね。僕達の様な小国が大国の脅威に屈せず、しかも大国並みに豊かに暮らせているのはこれのお陰なんだよ」

「それだけ強大な軍事力があるなら、国土を増やしたりはしないのか?」

「僕らの国は専守防衛が国是だからね。無駄な戦争はしないよ。そのお陰で平和が続いていて、とても素晴らしいことなんだけれども、危機意識が少々、緩んできている部分はあるね。なにせ貴族の名門たる大貴族達は、命大事さに迷宮潜りを避けているんだからさ」  
 ウェンダリはまるで自分の問題の様に真剣な表情で教えてくれる。

「迷宮騎士に夢とロマンが有るということは、俺のような平民でも下騎士よりも上の位を目指せるのか?」

「迷宮騎士学園を卒業しただけなら平民は「下騎士」が限界だけれど、もし迷宮騎士として国に多大な貢献をすることができたなら、中騎士はもちろん果ては上騎士さえも夢じゃないよ。なにせ平民から上騎士になって、今じゃ騎士の名家にまでなっている一族もあるからね」

「ほうほう。じゃあ、迷宮騎士で成り上がろうと考える平民が多いのか?」

「いや、昔は多かったらしいけどもね。近年の僕達の国はかなり安定しているせいで年々、そういう上昇志向な人は減っているみたいだよ。僕達の学年でもそういうギラギラした人は見たことがないかな。今では平民の人達も皆、安定した職業としての下騎士そのものを目指しているみたいだからね。平民で上騎士を目指すとか言うと、変人扱いされそうなぐらいの雰囲気かも……」

 ウェンダリは最後の言葉をどこか寂しそうに呟く。

 ふーん、なるほどな。
 ウェンダリの説明を聞いて俺は色々と理解した。

 まずは平民を手厚く教育する理由だ。

 それはつまり、命の危険性が高いがゆえに、迷宮には潜りたがらない自国のエリート階級である貴族達が原因であるということ。

 これでは自国の「防衛と軍事力向上」はままならない。

 だからといって、知識も技量も無い平民をそのまま潜らせた所で成果は上がらない。

 そこで、平民を少しでも鍛えてから「迷宮下騎士」として利用するという考えなのだ。

 ま、平和が続いているという事は、結果的にはこの戦略で成果を出せていると見える。

 ただし、自国の力を維持する安定感を得たがゆえに、逆に国民からはハングリーさが無くなってしまい、今じゃ、平民でさえも「迷宮下騎士」で十分過ぎる身分だと考えているらしい。

 ま、元宿主も皆と同じく迷宮下騎士を目指していたようだからな。

 安定しているからこそ余裕もあるわけで、平民に王立迷宮騎士学園の門を開放し続けながらも、時々、出てくるであろう上昇志向のある平民なり貴族なりをのんびり待つという感じなのだろうな。

 しかし「神世の遺跡」か……。

 どうやらこの国は面白そうな場所のようだな。

 要するに、凶悪なバランス崩壊アイテムを出しまくる不思議な迷宮があるというわけだ。

 しかも、その迷宮は遥か昔に発見されていながら、未だに踏破されていないらしい。

 毎日毎日、気軽に危険な魔物達と戦う事ができて、しかも、レアアイテム探しまで楽しめる。

 学園に在籍している間は当然だが、卒業後も迷宮騎士として迷宮に潜れるということは、死ぬまで挑戦できるということだよな。

 うわー!! なにそれなにそれー!!

 超面白そうじゃないかー!!

 これなら魔物が全滅して世界は平和になりました……終わり。
 にならなくていいじゃんかー!!

 これこそ、まさに俺が求めていた終わり無き刺激的な日々ではないかー!!!

 よしっ! 今から早速、潜りに行こう!

 ……というわけには、さすがにいかないよなー。

 チートやら勇者の力やら、果てには元の肉体に至るまで、色々な物を失った今の俺ではちと無理があるだろうからな。

 せっかく迷宮騎士学園の生徒な事だし、ここでこの世界の事も勉強しつつ、基礎体力なんかを上げながら迷宮潜りを楽しむ方が良いな。

「――よし!! 俺「迷宮上騎士」を目指すわ!!」

「――へ!?」

俺のいきなりの決意発表にウェンダリがすっとんきょうな声を出す。

「いやー、何か面白そうだからな」

「え、いや、でも! ムスロってば「迷宮下騎士」になって、持ち家を月賦で買うのが夢だって言ってたよね!?」

 うむ、実に元宿主らしい夢だな。

 まー、平民ならそれが普通なんだけどもね。

 でも、俺は前の異世界での刺激的な日々が原因で「平穏」が耐えられなくなったある意味どこか壊れた人間なんだよな。

 ここまで来て、迷宮下騎士で終わるような人生は送りたくはない。

 そんなことになれば、きっとまた酒に溺れて今度はダメ人間のまま死にそうだ。

 だからこそ、同じ死ぬなら燃えて燃えて、命を燃やし尽くして死にたい。

 せっかく、この異世界には何とも刺激的な「神世の遺跡」とやらがあるんだ。

 潜らない理由が全く無い。

 むしろ、あいつらの適当な「異世界放棄」魔法でも、こうやって実に悪くない異世界に来れてしまうあたり、さすがは勇者にまでなれる男、俺!

 というか、俺をこの異世界に放棄したあいつらを見返す為にも、俺はこの異世界で徹底的に楽しまないとな。

 残念ながら色々な力とかは失ってしまったけれど、勇者にまでなった経験は魂に染みついているから、きっと、ここでも良い線は十分にいける筈だ。

「よし、じゃあ早速、神世の遺跡の事をもっと知らないとな。なあ、ウェンダリ。神世の遺跡の事が書いてある教科書は無いのか?」

「え? あ、うん」

 俺の催促にウェンダリは俺の本棚から一冊の教科書を取り出し、「神世の遺跡」の事が書かれているページを開いてから俺の机の上に置いてくれる。

「ここに詳しく載っているよムスロ」

「ありがとうウェンダリ」

 俺は教科書を手に取ると、小さく口笛を吹きながら読み始めるのだった。
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