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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

11 迷宮とは

「ま、とにかく俺は白魔道士の新太というんだけども」

「我輩達の迷宮国を攻めてきた敵では無いのか?」

 キャロリンの腕に抱かれているスライムがぷるんと揺れながら威厳のある声で語りかけてくる。

「違う」

「本当か?」

「本当」

「本当に本当か?」

「本当に本当。というか、攻めるのが目的なら回復しないでしょうが」

「……それはそうなのだが、人間は魔物や亜人に対してはかなり好戦的なのでな。国の事を思うと、どうしても用心深くなってしまうのだ。許されよ白魔道士の新太殿」

「まー気にするな。しかし、話を聞いているとここは迷宮じゃなくて国なのか?」

「ああ、ここは小さいながらも1つの国であるぞ!」

 スライムが自慢気にそう応えるが、スライムを抱いているキャロリンが即座に否定した。

「嘘はダメよ閣下。ここは国ではないわ。だって部屋が2つしかない小さな迷宮だもの」

「ぐぬ! どれだけ小さくとも我輩達3人にとっては立派な城であり国であるぞキャロリン!」

「……ごめんなさい」

 スライムの閣下に怒られてしょんぼりと項垂れるキャロリン。

「国という誇りを大事にしていることは分かったが、結局は国では無いと」

「うん。私が1人でこの迷宮にいたら閣下がやって来て、次にナルがやって来て、そうしたら二人が私を守ってくれるようになって、それからは皆で助けあって生きてるの」

「へー。そういえば、地上は見渡すかぎりの大草原だったが他にも迷宮とか都市とか国とかあるのか? どうせなら近くにある街の方角でも教えてもらえるとありがたいんだけどさ」

『…………』

 新太の平凡な質問にキャロリン、閣下、ナルの三人はなぜか黙りこくった。

「(あれ……俺なんか変な質問したかな)」

 沈黙を前に新太が困っていると、スライムの閣下が口を開いた。

「新太殿、貴殿はもしかして……「異世界人」だとか?」

「……え? あー、えー、そのー」

 いきなりの核心をつく質問に新太はどうしたものかと思わず口ごもった。
 ただ、向こうから異世界人かと聞くということは、それなりに知識もあると踏んで、新太は遠回しに聞き返した。

「いや、だから、もし、もしもなんだが、俺が異世界人だったらどうする?」

「別に」

「別にかいっ!」

 閣下のしれっとした返答に新太は思わず突っ込んでしまう。

「いや、異世界人は確かに珍しいのだが、それならこの世界の事を知らなくて当然だろうと思いましてな」

「ああそうですとも、俺は異世界人なのでよく分かりません」

「ならば、我輩が軽くだがお教えしようか?」

「頼む」

「うむ、承知した。そもそもとして、この迷宮は不思議な仕組みを持っていてな。今、この迷宮の出口から外に広がっている大草原は『新太殿の世界』であって『我らの世界』とは違うのだよ」

「ん?」

 新太はいまいち理解ができず首を傾げた。

「つまり、この迷宮が1つの世界であり土地であり街であり城であり空間なのである。そして、この迷宮の出入口から外は基本的には違う世界。もちろん同世界内の他の迷宮と繋がったりするのが一番多いのだが、時には全く別の異世界と繋がることもあるという感じなのだ」

「えーと……つまり、この迷宮の出入口は色々な場所と繋がると」

「単純に言えばそういうことだな。この世界で生きる者はそれぞれの迷宮で生まれて迷宮で死んでいくのだ」

「なら、どうしてあんた達3人はこんな所に?」

「……それは簡単だ。私とナルの場合は生まれ故郷の迷宮都市が滅びたのだよ」

「はーいー」

 ナルが寂しそうに応えた。

「普通ならば迷宮という逃げ場のない場所で死ぬしか無いのだが、たまたまこの小さな迷宮と繋がったことにより、我ら3人は奇跡的に集まり、それからはお互いに助けあいながら生きているのだ」

「ふーん……」

 新太は小さく頷くと、背後にある外の光が見える出入口を見つめた。

「(ということは、外の大草原を旅しても何があるのかは分からないのか)」

「外の世界は新太殿の世界なのだろう? 新太殿にとっては我らこそが異世界人。迷宮世界と大草原世界との繋がりが終わらぬうちに早く元の世界に戻られるのが宜しかろう」

「(と、言われても、もう外の大草原は俺の世界じゃないんだよな……)」

 新太はどうしたものかと小さくため息をつくのだった。
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