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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

9 新たなる挑戦

 青年の名前は近衛(このえ) 新太(あらた)。
 どこにでもいる平凡な見た目の高校2年の男子学生だが、中身は全く普通では無い。

 異世界転移という特殊な体質を持った家系に生まれ、新太の父は発現しなかったのだが祖父である源一郎は異世界転移者だった。
 幼い頃から源一郎のファンタジーな異世界話を聞いて育った新太は、数日ほど前に庭の倉から繋がった異世界に向かって意気揚々と旅だった。

 その結果、新太は源一郎から譲り受けたチートアイテム「千竜殺し」という名剣を使い異世界で大活躍をするも、国難が去った王国の上層部に疎(うと)まれてあっさりと暗殺されてしまう。
 だが、奇跡的に死ぬ直前に元の世界へと戻ってこられたことにより、体の傷は無かったことになったのだが、味方に裏切られたショックによる心の傷が癒えることは無かった。
 そのせいで、旅立つ前の気の優しい性格は消え失せ今や超やさぐれてしまっていた。

 瞳は濁って目つきは鋭くなり、言葉遣いも荒くなり、数多の戦場を戦い抜いたせいか暴力性も高まっており、もはや完全な不良と化していた。

 しかし、庭の倉の戸が再度、異世界と繋がった事を機会に新太は再起を心に誓う。
 祖父である源一郎の励ましを胸に、今度こそ「笑顔」で戻ってくるのだと決意をするのだった。



 芝生のような背の短い草原の大地に仁王立ちで立ち尽くす新太。

 少し長めの黒髪に服装は魔導士風の黒スーツと黒革ブーツ。
 各部位には銀のチェーンが繋がれており、まさに厨二風。
 その上に純白のフード付き白ローブを羽織り、小脇には白い本を抱えていた。

 その表情はどこか晴れやかで先ほどまでの徹底的に淀んだ雰囲気は薄れており、元来の明るさがいくらかは戻っていた。
 だが、それはもはや昔の無邪気で脳天気というものではなく、どこか落ち着きのある凛々しい青年の顔だった。

「今度こそ笑顔で帰れるように頑張ろう」

 新太が新しい決意をすると、手に持っていた白い本がひとりでに輝いて光の玉となって宙に浮かび上がったかと思うと、くるりと反転して新太の胸に吸い込まれていき、次の瞬間、新太の脳内に魔法の知識が溢れ出す。

「……予想はしていたがやはり魔導書だったんだな。なになに、おー、あの白い本は『白魔法』の魔導書だったのか」

 新太は白魔法の知識を辿ってみると、白魔法の数はそれほど多くはなく基礎的な物しか無いようだった。
 どうやら、基礎的な魔法を使い込んで熟練度を上げる事により、威力向上や上位の魔法を覚えたりすることができるという仕組みのようだった。
 そして、白魔法といえど回復専門というわけではなく3つの種類に分かれており、「回復系」「補助系」「攻撃系」となっていた。

「白魔法らしく回復があるのは当然として、きちんと攻撃系もあるようだし、更には『MP消費無し』という特典付きか。うん、見事なチートアイテムだな」

 白魔導書には最後にこう記されていた。

『魔法には無限の可能性が秘められている。常識に囚われず大いに発想を革命せよ』

 新太は心の中で「応用力も大事ということなんだろうな」と呟くと、被っていたフードを脱いで青空を見上げた。

「貧弱な職業の代表格である白魔道士というのは普通ならば少し心許ないが、なんせじいちゃんがくれたチートアイテムだ。きっと大いに役に立つのは間違いない」

 新太は確信を込めてひとり小さく頷いた。
 だが、この時の新太には知る由もなかった。
 この異世界において白魔法が使える「白魔道士」が新太以外に存在しないという事を。
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