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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

6 男子3日会わざれば刮目して見よ その2「由月と銀花編」

 新太が学校の正門をくぐるとお出迎えの学生達が道の両側に列を作っており、登校してくる生徒達に元気な挨拶をかけてくる。
 今週は生徒会恒例の「挨拶習慣運動」が行われていた。

「おはようございます」

 1人の女子学生が優雅に挨拶をすると、男子生徒達は学年関係なく頬を赤らめながら挨拶を返す。
 生徒会所属、風紀委員長「東雲(しののめ) 由月(ゆづき)」3年生。
 名家である東雲家の出身ゆえかとても物静かな雰囲気を持っている。
 長身で艶やかな黒髪の長髪は、分け目があまりない丸っとした感じに整えられており、胸がかなりの巨乳なことと優しい顔立ちのせいか、学生ながらも母性さえも感じてしまう程に大人な魅力があふれていた。
 学校内の男子生徒達が憧れる麗しの風紀委員長である。

「やあ、おはよう!」

 次に、背筋を張って威風堂々としている1人の女子学生が爽やかに挨拶をすると、女子生徒達が「キャー」と黄色い声を上げながら挨拶を返す。
 生徒会長「京極院(きょうごくいん) 銀花(ぎんか)」3年生。
 こちらも名家の出身であり、京極院財閥の一人娘。
 居合道をたしなんでおり、女性ながらもきっぱりとした性格と凛々しい立ち振舞いに生徒や先生達の人望は厚く、特に女子生徒達からの人気が高い。
 由月と同じぐらいの長身で黒髪の長髪だが、銀花は少し横側から分けておりかわいいピン止めをしている。
 もちろん胸の大きさも由月に負けず劣らずの巨乳である。
 こんな二人が一箇所にいると男子生徒にはあまりにも眩しすぎてしまい、皆、一様に俯きつつチラ見程度しか出来ないのであった。

 そんな学内の男子生徒達にとって神聖なる高嶺の花である由月と銀花の前を、新太は二人など視界に入っていないかのように前を向きながら歩いて行こうとする。
 そんな新太に、由月はなぜか少しだけ緊張気味に声をかけた。

「お、おはようございます!」

 だが、新太は由月の挨拶を無視して歩いていく。
 次に銀花が胸を反りながらも新太の顔をじっと見つめつつ声をかけてくる。

「やあ、おはよう!」

 新太は銀花の挨拶も無視して歩いていく。
 新太の後をついていた綾乃が由月と銀花に対して必死に「ぺこぺこ」と頭を下げながら通り過ぎた。

 由月は自分の事をガン無視した挙句、平然と通り過ぎて行った新太の背中を涙目で見つめながら「わなわな」と体を小さく震わせる。
 そんな由月を心配して銀花が近づいてきた。

「大丈夫か由月」

「あ、あわわわ……あーたんが、あーたんが何か違う!」

「ああ、由月も感じたか。何が恥ずかしいのか高校に入ってからは私達と距離を取るようになって挨拶にも応えることは無かったが、今日の新太の雰囲気はいつもの様子とは違ったな」

 実は由月と銀花の二人も新太とは幼馴染なのだが、高校入学頃からなぜか新太は二人と距離を取るようになっていた。

「あのかわいいあーたんが、あーたんがとうとうグレたぁ!!!」

 いつもお淑(しと)やかな由月がヒステリックに絶叫するので、周りの登校生徒や挨拶運動に参加してくれている先生達が何事かと驚きの表情を見せる。

「ああ、すみません何でもないですから続けて下さい」

 だが、銀花の落ち着いた一言で騒ぎは一瞬で収まる。

「落ち着け由月。どうも新太の奴はここ数日ほど風邪で休んでいたというから、まだ疲れが残っているのだろう」

「そ、そうかな、そうなのかな?」

「ああ、だから、またいつもの新太に戻るだろうから静かに見守ってやれ」

「う、うん」

 銀花になだめられて由月は何とか落ち着きを取り戻す。
 しかし、銀花は校舎に入っていく新太の物悲しい背中を見つめながら眉をひそめた。

「(あの何とも言えない独特の哀愁(あいしゅう)と煤(すす)けた雰囲気……戦争経験者である私の祖父がまとっていたものに近い。だが、あれは実際に戦場において命のやり取りをした者にしか手に入れられない武道の境地のはず。それをいきなりどうして新太が……)」

 銀花は凛々しい細い眉をひそめたまま新太が入っていった校舎を見つめ続けるのだった。
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