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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

4 主人公なのに超ぐれる

「人間なんて信じられねぇ……」

 異世界から帰還した新太は、二階の自室の隅で天井を見上げながらブツブツと呪いの言葉を呟いていた。

「ああー……皆、死んでしまえ……」

「おーい、新太」

 部屋の外まで広がっている陰気臭さなど気にも止めずに源一郎が新太の部屋のドアを開ける。

「……なんだよクソジジイ」

 新太は生気の無い目つきで源一郎を睨みつける。

「(じいちゃんじいちゃんとわしに懐いていたかわいい孫がこのざまか……)」

 さすがに責任を感じた源一郎は小さくため息をついた。

「大変だったのは分かるが、それもまた人生経験じゃろうて」

「うるせーよ、知った風な口を聞くなジジイ。頑張って頑張って頑張った結果が用無しだから暗殺だぞ? こんな理不尽があってもいいのかよ!」

「わしらの世界の歴史上の英雄でもそういう者は多いぞ。国難の際に祭り上げられたり、王を支えた二番手な軍師や英雄などは後で失脚、追放、暗殺、やられたい放題じゃな」

「なんでだよ! なんでそんなことになるんだよ!」

 新太は涙混じりで源一郎に飛びかかるとそのまま胸元に掴みかかる。

「国難さえ乗り越えてしまえば、王にとっては自分よりも人気者であり実力のある者なんぞは、自分を追い落としかねない恐ろしい存在へと変わってしまうのだろうな」

「じゃあ、使い捨てか!! 英雄は支配層の使い捨てなのか!!!」

「基本は使い捨てだな」

「――!?」

 新太は「うわぁぁぁ!!!」と叫ぶと勉強机の椅子を蹴飛ばした。

「はぁはぁ……何が異世界で英雄伝だよ……つまらねー所に行かせやがって。これも全部ジジイのせいだ!! ジジイが異世界は素晴らしいなんて俺を惑わすからこんな目にあったんだ!!」

 新太は源一郎に詰め寄ると拳を振り上げた。

「殴らせろジジイ!!!!」

 新太の渾身の一撃を源一郎は甘んじて受け止めた。

「……ぐぬ!」

 源一郎はその場で仁王立ちのままだったが、祖父を殴ってはみたものの少しもスッキリせず、むしろあまりの後味の悪さに、新太は右拳を左手で掴みながらその場にうずくまった。

「くそったれ……くそったれ!」

「たーちゃーん!!」

 シリアスな雰囲気に不釣合いな声が1階の玄関から聞こえてきた。
 新太(あらた)の「た」の部分を用いたアダ名を呼ぶのは新太とかなり近しい者だけ。

「……ほれ、お隣りの綾乃(あやの)ちゃんが迎えに来てくれたぞ」

 綾乃とは同じ高校に通う新太の幼馴染な女の子である。

「……行きたくねー」

「数年ぶりの元の世界じゃろ。気晴らしになるから行って来い」

「……うるせーな」

 新太はこれ以上、源一郎と話をしたくないのでクローゼットから黒い学生服を取り出して着替えると無言で部屋を出て行った。

「さて、どうしたものかのー」

 源一郎は孫に殴られた頬を擦りながらも、「何とも力強い一撃を放てるまでに成長したものだ」と内心では喜んでいたのだった。
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