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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

3 父と祖父、悩む

 新太の父である健介(けんすけ)は、平凡なサラリーマン。
 黒縁メガネをかけており、見た目通りにおっとりとした優しい性格。
 健介の父であり、新太の祖父である破天荒な源一郎とは全くの正反対である。

 今朝、異世界から3日ぶり(異世界では数年経過済み)に大事な息子が帰ってきたというのに、見るも無残に変わり果てた新太の姿に、父である健介は出勤前だったのかスーツ姿のまま血相を変えて源一郎の部屋に怒鳴りこんでいた。

「――父さん!! これは一体、どういうことですか!!!」

 白髪な坊主頭に作務衣を着た凛々しい老人が、力を失っていないエネルギッシュな目をぱちくりとしながら健介を見る。

「ああ、健介か」

「ああ、健介か、じゃないです!!」

「まーまー座れ座れ」

 源一郎はちゃぶ台の上に置いてある熱湯ポットから急須にお湯を入れて湯のみに緑茶を注ぎ入れる。
 健介はちゃぶ台の前に座ると差し出された湯のみなど目もくれずに言葉を継いだ。

「父さんが異世界転移は豊かな人生経験を積める場であり、人格形成に良いって言うから許可したんだよ!? だというのに何だよ!! あの優しかった新太が、あんなにやさぐれてしまって!!」

「いやー、わしの父も祖父も異世界転移経験者だったが、皆、実に豊かな経験ができたと言っていたからの……もちろんわしもな。だが、まさか、新太が向こうで最後に権力闘争に巻き込まれて裏切られたあげくに暗殺、いや一応は助かったから未遂か。とにかく、そんな目にあって帰ってくるとは想像もせんかったわい、がははは!」

 源一郎は自分の湯のみに注ぎ入れた渋い緑茶をすする。

「笑い事じゃないよ父さん! 明美(あけみ)もショックで寝込んでいるんだよ!?」

 健介の妻であり新太の母親である明美は、変わり果てた新太を見たショックで今朝から寝込んでいた。

「あらら、明美さんがか?」

「あーもう、一体どうしたらいいんだよ」

 健介はちゃぶ台に突っ伏すように頭を両手で抱え込んだ。

「まーまー、しばらくは落ち着くまでそのまま放っておけ。で、とりあえず健介は仕事に行け仕事に。後のことはわしが面倒を見ておくから」

「うー……た、頼みますよ父さん。今日はなるべく早く帰ってきますから」

「おうおう。ほれ行った行った」

 源一郎に急かされて、健介は渋々、会社へと出勤するのだった。

「とは言ったものの、さてさて、どうしたものかのー」

 源一郎は白髪頭をポリポリとかくのだった。
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