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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

2 特異体質な家系の悲劇

 庭の物置の前で異世界に繋がった戸を眺めながら口をあんぐりと開けている青年の名前は、近衛(このえ) 新太(あらた)。
 高校2年生の男子学生。

 新太は物置の戸が異世界に通じていた事を慌てて祖父である源一郎(げんいちろう)に伝えると、源一郎はにっかりと笑って答えた。

「そうか、そうか。とうとうこの日が来たか」

 源一郎の話によると、近衛(このえ)家は代々「異世界転移」をしてしまう特異体質らしく、新太の父は発現しなかったらしいが、祖父である源一郎はやはり異世界転移経験者との事だった。

 祖父の不思議なファンタジー話が大好きだった新太は、自分も源一郎と同じような冒険が出来るのだと思い胸が高鳴った。
 源一郎から異世界で手に入れたという名剣「千竜殺し」という|伝説級の一等品(チートアイテム)をもらっていた新太は、意気揚々と異世界に乗り込んだ。

 そこは、竜王と魔物に滅ぼされそうになっているファンタジーな王国。
 新太は凄まじい大活躍を見せて王国の危機を助け、救国の英雄となった。
 だが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはまさにその通りで、住民達から寄せられる新太への凄まじい人気ぶりに、権力者として危機感を抱いた王国の上層部達は新太の暗殺を計った。
 想像もしなかったまさかの仕打ちに、チート能力者の新太ですらその凶刃からは逃れられず深い傷を負ってしまう。
 しかし、もはや絶命寸前という所で奇跡的に元の世界への転移が発動したことにより、致命傷に近い体の傷は無かったものとなり、まさに九死に一生を得ることとなる。

 だが、体の傷は免れたものの心の傷までは治らなかった。
 こうして、新太はかなりの後味の悪さで元の世界へと帰ってきたのだった。

 その結果、純粋かつ心優しい好青年であった新太青年は、今や目つきが鋭く、言葉使いも乱暴なやさぐれ青年へと変貌(へんぼう)してしまっていたのだった。
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