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よあけの部屋

□ 迷宮長は最凶の白魔道士 □

1 祖父との思い出

 小さい頃、少年は祖父が大好きだった。
 いつもいつも面白い昔話を聞かせてくれるからだ。

 それは祖父が庭にある『物置の倉』から不思議な世界に行って大冒険したという作り話。
 竜と戦った話や、迷宮でたくさんの財宝を手に入れる話。
 耳の長いエルフや小さな妖精など様々な種族と友達になり大冒険をする話。
 どれもこれも子供心に胸が踊るお話だった。

 少年は少し大きくなると、祖父が何かの絵本を読んでいたわけではない事を知った。
 子供に読み聞かせる鬼退治や竜宮城などの定番の昔話とは違い、全ての物語は本当に祖父の作り話であり常に何も見ずに話をしていたのだ。
 まるで自分が体験してきたことのように。

 少年は更に大きくなると、祖父の空想話を聞かなくなった。
 そんなものより友達と外で遊んだりゲームをしたりする方が楽しかったからだ。

 少年は更に大きくなり青年になると、祖父の空想話をそれなりに再評価した。
 色々なアニメやゲームをしてきたが、大きくなって思い返してみても祖父の空想話の方が実に幻想的かつドラマチックで胸がドキドキする物語ばかりだったと感じたからだ。

 青年が高校に入学した時、祖父は青年に入学祝いのプレゼントをくれた。
 一振りの西洋剣「千竜殺し」。
 まるで厨二病さながらの名前の剣を手渡された青年は、苦笑いを浮かべるしかなかったのを覚えている。
 だが、その時の祖父は真剣な表情でこう呟いた。

「男にはやらなくてはならない時がある。物事の全ては決して偶然ではないんだぞ。もし、あの物置の倉の入り口がお前を異世界に誘うような時が来た時は、覚悟を決めなさい」

 祖父の言葉を聞きながら「あー、本当にじいちゃんはファンタジーが好きだなー」と心の中で呆れたのものだが、それから1年程過ぎた現在、青年は母親に物置の倉の整理を頼まれて倉の引き戸を開けたところで祖父に心から謝っていた。

「……ごめんじいちゃん。じいちゃんの話マジだったわ」

 青年が開けた物置の引き戸の先は見慣れた倉の中ではなく、見たこともない景色が広がっていた。
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