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よあけの部屋

□ アイテムが本当にもらえるダンジョンゲーム □

11 種明かし

誠人は帰宅すると、部屋着に着替えて台所の冷蔵庫からメロンソーダのペットボトルを取って部屋に持ち込むと、一人で祝杯をあげた。

ジュースをゴクゴクと喉を鳴らして飲む誠人。

「ぷはー! うんめぇぇー!」

誠人は祝杯を一口だけ堪能してから、アイテムダンジョンクエストが入ったプレプレ4の前で正座をすると、合掌して深く頭を垂れた。

「アイテムダンジョンクエスト様、大変お世話になりました! そして、これからもどうぞ宜しくお願い致します!」

と、不思議なゲーム「アイテムダンジョンクエスト」に心からの感謝と祈りを捧げると、誠人は更に祝杯を続ける。

「いやー、本当に上手くいったなー」

誠人は道具袋からしまっていたアイテムを取り出していく。

まずは薬草軟膏。

「これは持って行っておいて本当に良かった。まさかあんなにドパッと鼻血が出ることや、鼻を殴られたら涙が止まらないぐらいに痛いなんて知らなかったからなー」

次にトゲトゲ棍棒。

「最悪の場合は力技でと考えていたけれども、使うような事にならなくて本当に良かった……」

誠人は心の底から安堵のため息をつく。

続いて、問題の木の欠片を取り出した。

「全てはこれのお陰だったな……」

この木の棒の切れ端は、まさにそのまま、ゲーム内で手に入れた木の棒を誠人がノコギリで切った物である。

ただし普通の木の棒ではなく空きスロットが2個付きであり、現時点の誠人にとってはレアな武器アイテムだ。

誠人は木の欠片に装着されているスキルカードを解除すると、木の欠片から「ぬー」とカードが吐き出されてくるので、誠人はそれを指先で摘んで引っこ抜いた。

スキルカードには「毒攻撃」という文字が書かれてあった。

そう、これこそが誠人が神田達にしかけた不思議な攻撃の正体である。

ちなみに、これは毒攻撃をしかけてくるイエロースライムが落とすレアなスキルカードである。

解説文によると、「攻撃した相手に低確率で毒を与える」となっており、また一定期間で自動回復するという、いわゆるRPGにおける定番の毒である。

誠人の実験では、ゲーム内の戦闘中の敵に対して約1/10程度の確率で毒付与が発動する。

ただし、普通のRPGでもそうだが、ゲーム上での毒付与というのはいまいちな性能である。
毒なんか与えてターンダメージを狙うよりも、さっさと殴ったり斬ったり、高火力の攻撃を繰り出したほうが効率が良いのだ。

しかし、現実ならばどうか。

それは今日の神田や江田島達を見れば一目瞭然であろう。

現実世界において毒はマジでヤバイ。

ただ、1/10の確率である以上、相手を普通の武器でボコボコと殴るわけにはいかない。
相手に対する危険も高いし、そもそも、誠人が相手に対して大きな武器を何度も上手に当てられる可能性も低い。
(手加減が難しいというよりも空振りしそうだと誠人は考えた)

しかも対多数である以上、戦闘が長引けば長引くほど誠人が不利だし、そもそもこのスキルを付与している武器が奪われては目も当てられない。

そこでまず、誠人はスキルスロット枠を持った木の棒をのこぎりでぶった切った。

そして、木の棒の柄の部分だけという木の欠片状態にして、手の平に握り込めるようにしたのだ。

そして、その装備した拳から少しだけ出ている木の棒で、相手に連続肩たたき攻撃をしかける。

つまり、この作戦に攻撃力は全く必要無いのだ。

必要なのは1/10の確率を突破して「毒」を付与する為の手数。

しかし、それだけでは、対多数の戦闘を乗り越えられない。
誠人よりも強い男子4人に対してそれぞれ肩たたき攻撃をしかけることは、最初の一人は不意打ちで何とかなっても、それ以後は喧嘩素人以下の誠人には不可能である。

そこで、それを補佐する為に利用したのが次に吐き出され始めたスキルカードである。

誠人が木の欠片から飛び出してきたスキルカードを引き抜くと、そのカードには「範囲攻撃」と書かれてあった。

これはスライムが落としてくれるスキルカードで、スライムの中での超レア枠っぽい感じのアイテムだった。
なにせ、今でも誠人はこれを1枚しか持っていないからだ。

このスキルは周囲にいる近場の敵に低威力の追加ダメージを与える能力なのだが、ゲーム上では本当に低威力すぎて殆ど役に立たない能力だった。

本当におまけ程度のダメージを周りに振りまくだけ。

いくら超レア枠のアイテムでも、それが最弱のスライムのドロップ品である以上はそれなりの性能ということなのだろう。

しかし、このスキルカードにはもう1つ補足説明があり、それが曲者だった。

そう、「状態異常の付与も適用される」という能力だ。

基本は誰かを攻撃している間、その周りの敵にもダメージを与えるが、それはもはや期待できる能力ではない。
肩たたき程度のパンチが、更に大幅に減少された威力で周りに発動したところで、誰も気にも止めないものへと成り果てる。

だが、誰かを攻撃して毒を付与させる確率ルーレットを回している時、周りの敵達にも同時に毒の確率ルーレットを回すことが出来るという点が、このスキルカードの曲者の所以でありエグさというわけである。

だから、誠人が神田一人に連続肩たたき攻撃を仕掛けた後、神田の周りにいた男子や女子さえも毒状態へと陥りバタバタと倒れたのである。

ちなみに初撃の際に江田島が無事だったのは、「範囲攻撃」の有効距離外だったのだと誠人は考えている。

ただし、近くにいた雪子に毒状態がかからなかった理由は誠人にもよく分かってはいない。

「ちゃんと敵かどうかを選別してくれているのかな」

誠人は現時点の結果から、そのような仮説を立てて納得するしかなかった。

「ま、大田原さんの為にこれを用意しておいたんだけれども、要らなかったな」

誠人は続いて道具袋から小瓶を取り出した。
そこには無色透明の液体が入っており、ラベルには「毒消し水」と書かれてある。
これは毒攻撃をしかけてくるイエロースライムからドロップする回復アイテムである。

範囲攻撃&毒付与により、やむをえず雪子にまで効果が及んでしまうと誠人は考えて、この毒消しアイテムを用意していたのだが、実際にはそうはならなかった。

予想が外れたのにはそれなりに理由がある。
なにせ、この範囲攻撃&毒付与の実験はしていなかったからだ。

ちなみに、自身への毒付与と毒消し水の実験は今朝の登校前に実践してある。
なので、範囲攻撃に関しては理論上いけるだろうという賭けであった。

「範囲攻撃の実験をしようにも巻き込める相手がいないからなー。自分だけで済む毒と毒消し実験は気合で済ませたけれど、ほんと、上手くいって良かった良かった」

誠人はメロンソーダをゴクリと飲みながら、ゲロクソまみれ状態の神田達を改めて思い出して思わず吹き出しそうになってしまう。

「うぷぷぷ、いいざまだったな神田達。きっと今頃、病院に担ぎ込まれて点滴でしのいでいるんだろうな~。なにせ、毒の種類が分からないから原因不明だろうし。ま、点滴をうつということはHPが常に回復するということだから、ゲーム内でもダメージ数は微量なことを考えれば、この程度の毒で死ぬことはないだろうさ。ただし、毒が消えるまでの期間は地獄だろうけれども」

誠人は「毒攻撃」と「範囲攻撃」のスキルカードをニヤニヤしながら見つめる。

「さて、神田達が帰ってきたら、また毒を付与してやろうっと。一気に恨みを返してなどやるものか。俺が受けた痛み、屈辱、絶望、苦しみの「長さ」もきっちりとお返ししないとね」

誠人の復讐劇はこれで終わったわけではなく、実は今まさに始まったばかりなのであった。
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