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よあけの部屋

□ アイテムが本当にもらえるダンジョンゲーム □

9 男の覚醒

雪子の爆乳が神田達の手で揉みしだかれる場面を想像すれば想像するほど、嫉妬の炎が燃え盛り、神田達へ対する強烈な怒りと憎しみが生まれ始める誠人。

それは、今のクラスになり神田達からイジメを受けるようになってから、誠人が初めて抱く強烈な負の感情だった。

「そんな事が許されてなるものか!!」

誠人をイジメている悪者であるはずの神田達のくせに、誠人には夢の世界のような羨ましい思いがこれからできるというこの世の中の不条理に対して、どうしようもない怒りが湧いてくる。

「なんでこんなことが許されるんだ! 俺をイジメる神田達! 大田原さんをイジメる江田島達! そのくせあいつらは毎日、楽しそうに生きやがって! 俺と大田原さんをイジメているくせに! しかも、神田達は大田原さんとセッ●スしまくるだって!!?? ふざけんなっ!!!!」

誠人は両手で頭をガリガリと掻きむしる。

「でも、俺には何の力も無い!! 自分の事すら救えない俺が、大田原さんを救えるわけもない!!」

誠人はまた枕にパンチの雨を降らす。

「ふー! ふー!」

荒い息を何度も吐き出した後、誠人は枕の上に顔を突っ込んで倒れこむ。

「……俺が先生にチクった所で、江田島達は先生達に気に入られているから、きっと江田島達の反論に負けてしまう。なら、大田原さんに危険を知らせるか? いや、こんなにイジメられても学校に来ているということは、俺と一緒で親に心配をかけたくないんだ。そうなると、逃げるという選択肢を選べない可能性が高い。それに、もし、逃げてくれたとしても、それが神田達にバレから俺がかなりヤバイ……」

枕に突っ伏しながらブツブツと呟いていた誠人がふと顔を上げると、プレイを中断して放置してあるアイテムダンジョンクエストの画面が目に飛び込んできた。

「……アイテムダンジョンクエスト」

誠人はのそのそとベッドから下りると、プレプレ4に繋いである宝箱型デバイスの前に座る。

「……このゲーム内で手に入れたアイテムは本当に俺の物になる」

そう呟いた瞬間、誠人は脳天から足先にまで凄まじい電流が流れたような気がした。

誠人はしばらく呆然と身動きができなかったが、気を取りなおして力強い鼻息を吐き捨てると、コントローラーを手に持って力強く握りしめる。

誠人は凄まじい気迫のこもった目で、ゲーム画面を睨みつけた。

「――江田島の言っていた土曜日まであと2日! あいつらの思い通りにさせてなるものかっ!! というか、神田達め!! 大田原さんの問題以前に俺の事をイジメた天誅もくらわせたるからなっっ!!!」

大田原 雪子の問題をキッカケにして、とうとう誠人の覚醒を許してしまう神田と江田島達であった。



誠人は江田島と神田達を監視する為に翌日の学校は休まなかった。

いくら時間が惜しいとはいえ、休んでいる間に予定が変わって雪子を江田島の家に連れ去られてはどうしようもないからである。

誠人は席に座っている雪子の方をチラ見して確認してみると、一人ぼっちで俯いて暗くはあるが、ほぼいつも通りな感じなので一安心する。

「(準備がまだ整っていないから予定が変わるのは勘弁して欲しいな。でも、もしどうしようもなければ、一応、最低限の物は持ってきたからそれで頑張るしかない)」

誠人は放課後になると、ゆっくりと荷物を片付ける。

最近は例の日を楽しみにしているせいで、もはや心ここにあらずというぐらい「そわそわ」している神田達なので、誠人に対するイジメが雑になっており、誠人は放課後の教室からそそくさと逃げ出さないという大胆な行動をすることができた。

江田島達と雪子が教室を出てバラバラに帰宅するのを見届けてから、誠人は江田島の後を追って江田島の家の場所を確認する。

江田島の家は平凡なマンションの中にある一室で、誠人はメモ帳に落書きの地図を書き込んだ。

「よし、これで江田島の家はスネークしたぞ。これで、不測の事態があっても大丈夫だな」

誠人は急いで自宅に帰宅すると、アイテムダンジョンクエストのアイテム堀りに没頭する。
昨夜もほとんど寝ていないが、今夜もほぼ徹夜である。

「睡眠は授業中にとるしかないな……」

誠人はゲーム内でモンスター達を延々と狩り続ける中で、ある仕組みに気がついた。

それは、モンスターはそれぞれが独特かつ個性的な特有のアイテムを所持しており、それらをドロップしてくれるという事である。
つまり、最弱のスライムであってもスライム自身にとってのレア枠が設定されており、それらのレアアイテムを低確率ながらも落としてくれるのだ。

ちなみに、モンスターがどんなアイテムを落とすのかで最も予想をしやすいのが武器である。
あからさまにモンスターの装備している武器や防具はほぼ手に入れられる。と誠人は考えている。

もちろん良い武器などならレア度が高いということなので超低確率にはなるのだろうが、現時点でゴブリンの棍棒、レッドゴブリンのトゲトゲ棍棒はきちんとドロップしていた。

ちなみに、誠人は現在、なんとか倒せるようになったレッドゴブリンの持ち武器であるトゲトゲ棍棒(両手武器)を装備している。

そして、もう一つ予想しやすいのがモンスターの特殊能力などである。
これもまたスキルカードという形でドロップされる可能性があるのだ。

例えばゴブリンが時々、繰り出してくる「体当たり」や、レッドゴブリンが繰り出してくる「フルスイング」はスキルカードとして既に何枚かゲットしていた。

そんな法則に気がついた誠人は、あるモンスターを一心不乱に狙い撃ちして狩り続けていた。

それは、スライムの黄色いバージョンであるイエロースライムである。

強さはゴブリン程度なのだが複数で出てくることと、とある特殊な攻撃を仕掛けてくるのでなかなかの曲者だった。
だが、誠人はその特殊攻撃に目をつけてスキルカードを狙っていたのである。

しかし、よほどレアであるのか一向にドロップはしなかった。

「でも、今の俺に必要なのはきっとこれなんだ」

誠人はそう呟くと、誰もが寝静まった世界の中でがむしゃらにゲームをプレイし続けるのだった。




翌朝、一睡もせずにアイテムダンジョンクエストを頑張った誠人ではあったが求めていたアイテムはゲットできなかった。

「仕方ない……今晩も頑張るしかないか」

誠人は生あくびを繰り返しながら登校すると、優しい感じの先生の授業を狙って居眠りをするのだった。

放課後は江田島達と雪子がバラバラに帰るのを確認してから、誠人も帰宅する。
ちなみに、神田達は例の日が明日という事で、今日1日、誠人の事など眼中に無いようであった。
なにせ、神田達は休み時間の度に皆で集まると「あー、早くやりまくりてー」「おれ、舐めまくってみたい」という感じの気持ち悪い会話を交わしつつ、雪子をチラチラと見ながらほくそ笑むことに夢中だったからだ。

誠人は帰宅後も一心不乱にアイテムダンジョンクエストをプレイしまくった。

そして、徹夜の果てに夜が白み始めた頃、もはや予定を変えて強引な手を打つしかないかと諦めかけたその時、狙っていたアイテムがイエロースライムからドロップされた。

誠人は慌ててセーブをすると、その場に寝そべるようにへたり込んだ。

「……やった。これであいつらを完封できるぞ」

誠人は気が抜けてしまったのか、そのまま意識を失うように眠ってしまうのだった。




翌朝、母親の友里江に体を揺さぶられて何とか起きる誠人。
どうやら、あまりに眠た過ぎて無意識に目覚ましを止めてしまったらしい。

「あ、ありがとう母さん、助かったよ」

「はいはい、それより、あんまり夜更かししちゃダメよ?」

「う、うん。たぶん、今日からはあまりしないと思う」

「そうなの? なら、早く用意しなさい。できれば、一口ぐらい朝ごはんは食べるのよ」

「いや、今日は少し遅刻するから気にしないで」

「あら、そうなの?」

「うん」

友里江が誠人の部屋を出て行くと、誠人はゆっくりと学校用のいつもの支度を整えてから、食事もきちんと済ませる。

そして、部屋に戻ってくると、今度は今日用の準備を始めた。

昨夜はアイクエのプレイ中にほぼ寝落ちしてしまったので、ゲームを起動してアイテム転送による念願のアイテムを現実化する。

これはあくまで重要なキーアイテムということで入手が最後になってしまったのだが、それまでに手に入れたアイテム、また色々な実験も既に済ませており、最後はこのキーアイテムを利用しての最終実験を残すのみとなっていた。

数分後、最終実験の結果、床に倒れこんでいた誠人が息も絶え絶えかつ脂汗まみれで起き上がる。

「よ、よし……これならきっといける」

誠人はにんまりと微笑みながらも「ぜーはーぜーはー」と苦しそうな荒い呼吸を繰り返すのだった。




誠人は中学生になってから初めての遅刻だった。
一時限目が終わった後の休憩時間を狙って教室に滑り込むが、空気のような存在である誠人の事など誰も気がつかなかった。

授業が始まって先生が出席確認をした時に「日向はいるかー?」「はい」というやり取りからクラスメイト達は誠人が遅刻で出席した事を理解したが、だからといって特に何の反応も示さなかった。

もちろん、いつもの神田達ならば「生意気だ」とか何とか言っていちゃもんをつけてくるのだろうが、神田達は今日が例の乱交祭りの当日だったがゆえに、誠人の事など気にしている余裕も無かった。

今日は土曜日ということで午前中のみの授業である。

昼過ぎに授業が終わると、クラスメイト達がわいわいと楽しそうに会話を交わしながら帰宅し始めた。

そんな中で、とうとう江田島達女子グループが動いた。

江田島達は帰宅しようとしていた雪子を取り囲むと声をかける。

「ねー、ユッキー。今日、これから私達と遊ぼうよ」

「え?」

以前の友達の振りをしていた時のような感じで話しかけてくる江田島の猫撫で声に、雪子は戸惑いの表情を見せる。

「で、でも私、お金が……」

「大丈夫、大丈夫、今日はうちの家で遊ぶだけだから」

「で、でも」

「さ、いこいこ」

江田島はそう言うと、雪子の鞄を取り上げる。

「あ!?」

そして、女子仲間の一人が雪子の右手を掴み、一人が左手、一人が背中を押して、逃げられないように連行していく。

その後を神田達4名が、離れながらも後を追うようについて行き始める。

「(……始まったな)」

誠人は静かに席を立つと、江田島、連行される雪子、それに続く神田達の後をコソコソと追跡するのだった。
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