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よあけの部屋

□ アイテムが本当にもらえるダンジョンゲーム □

5 単純なミス

誠人の日常は変わらない。

イジメに耐えて耐える日々。

しかし、そんな中で少しばかりだけ変化があった。
それは差出人不明の不思議なゲームが送られてきたことだ。

その名を「アイテムダンジョンクエスト」。

イベントも何も無い殺風景でシンプルなゲームなのだが、ゲーム内のダンジョンで手に入れたアイテムを現実世界、つまりは誠人の手の元に転送できるというとんでもない機能が込められていた。

ただ、ステータスは体力と魔力のみで、しかもレベル制ではない。

つまり、攻撃力や防御力などのステータスも存在しない為、数値を上げてニマニマするという楽しみが欠落しているのが誠人的には少し残念であった。

アイテム掘りこそがメインというわけなのか、モンスターを倒した事による経験値でのレベルアップという成長手法が無い。
あくまで、良いアイテムを手に入れて強くなれというゲームであった。

だが、誠人がゲームを手にしてから約2週間。

未だにダンジョン部屋の敵はスライムだけで、無駄に貯まる金貨と、無駄に貯まる薬草軟膏と、無駄に貯まる木の棒ばかりであった。

木の棒に関しては、今や二刀流とし、そして投擲(とうてき)武器としても活用している。

二刀流のおかげで攻撃回数が一度で二回となり、スライムは一撃必殺できるようになっていたし、飽きたら木の棒を投げてスライムをぶっ飛ばしたりしていた。

それはそれで楽しくはあったのだが、やはり、いかんせんスライムばかりでは誠人も少し飽き始めてきてしまっていた。

「薬草軟膏はありがたいけれど、これだけというのはなー。しかも、木の棒なんて現実化してもあまり意味が無いし」

誠人はゲームパッケージを開いて改めて中を覗いてみる。

「説明書が無いんだよなー。何かコツでもあるんだろうか……」

誠人はテレビ画面の前で「うーん」と唸っていると、初めて小さな閃きが浮かんだ。

誠人はコントローラーを握って、ゲーム内の誠人キャラで階段を下りる。

「戦い続ければ前に進むと思っていたけども、戦わずに帰るとどうなるんだろ?」

誠人はRPGなどのゲームで敵から逃げるという行為を殆どしたことがなかった。
どんな雑魚キャラでも経験値やお金の足しになるからという理由で倒し続けていたのだが、このアイクエでもゲームプレイを始めてから、一度も敵前逃亡という形で逃げた事がなかった。

ゲーム内の誠人キャラがスライムとは戦わず、そのまま自身の後ろにある帰還用の階段を上がっていく。

そして、拠点である草原小島に戻るが、変化は何もなかった。

「草原小島は変化無しか、なら、ダンジョンはと」

誠人は再度、階段を下りてダンジョン部屋へと移動すると、残念ながら何の変化も無かった。

「そうそう上手くはいかないか」

誠人は、スライムを無視してダンジョンから帰還する。

「うーん、ランダム性のダンジョンではないのかなー」

世間のRPGツクレールよろしく、まさか制作にエタったせいで実はこれで全てという場合もあるのでは、と誠人は想像して頬を引きつらせた。

「ということは、使えない金貨と木の棒は意味が無いから、使える薬草軟膏製造機ってことなのか?」

誠人はぐでーっと床に寝そべって脱力する。

「まいったなー。本当にそんなゲームなのかー?」

誠人が少し半泣きでそう呟くと、視界の端にあるものが映った。
それは、ゲームと一緒に送られてきたもう一つのデバイス「ヘッドセット」だ。

アイテムを現実世界に転送したり、ゲーム世界に送り戻したりできる宝箱型デバイスとは違って、このヘッドセットは実に平凡な形で、特に気にしてもいなかった。

なにせ、ゲーム内ではイベントが何も無いし、オンライン要素も無いので誰かとオンラインチャット会話をするわけでもない。

なので、プレプレ4に繋いだまま特に気にもせず放っておいたのだが、ここ今に至っては、誠人はわらにもすがる思いで、そのヘッドセットを掴み上げるや頭に装着してみた。

すると、次の瞬間、ゲーム内にシステムメッセージが出現した。


『誠人の【運】の測定が開始されました。
 これよりランダム確率システムが正式稼働します』


そのメッセージを見て誠人は「ぐはー!」と仰け反った。

どういう仕組みか分からないのは今更ではあるが、どうやらこのヘッドセッドが誠人の運値を測定してくれるらしい。

つまり、今まではモンスター種類などの当たり外れ判定のルーレットすら回っておらず、ただひたすら最下位と思われるスライムが落とすアイテムの抽選だけが行われていたという事なのだろう。

誠人はorzの格好でしばらくへこんだ。

「ぐうぅ……。ヘッドセットさんバカにしてスミマセンでした」

誠人は気を取り直してコントローラーを手に持つと、再度、階段を下りてダンジョン部屋へと移動してみる。

すると、とうとう変化が現れた。

「――お!?」

画面にはいつものスライムではなく赤色の子鬼がチマチマとその場で歩行アニメーションを行っていた。

「よっしゃぁぁ!!! 新しいモンスターが出たぁぁ!!!」

誠人は小さくガッツポーズを取る。

「きちんと確率のルーレットが回ったんだな!!!」

誠人はワクワクドキドキしながら赤色の子鬼に誠人キャラを近づける。
すると、赤色子鬼からポップアップが浮かび上がり、「レッドゴブリン」という名前と赤色のHPバーが表示された。

「よしよし! ゴブリンか! 挑戦してみるぞ!」

レッドゴブリンの横でボタンを押すとサイドビュー戦闘が開始される。

誠人は「戦う」を選んで、二刀流攻撃をレッドゴブリンにお見舞いする。
しかし、誠人の攻撃はレッドゴブリンのHPバーを1/10も減らすことが出来なかった。

「――固っ!!」

続いて、レッドゴブリンの攻撃。
レッドゴブリンはその手に持つトゲトゲの棍棒を大きく振り下ろしてくる。
「ドドン!」という重低音と共に誠人キャラは後ろにノックバックし、HPバーが一瞬で0まで溶けると、その場に倒れ伏した。

「――え"え"え"!!! 一撃っっ!?」

誠人キャラは死亡したらしく、物悲しい音楽と共に画面が暗転すると、「誠人は死亡しました」というメッセージが浮かび、続いて「ベロリロ! ベロリロ!」という心臓が飛び出しそうな不愉快な音がなった。

「し、しまった! 油断したせいで死んでしまったぞ! ま、まさか、本当に俺の命も奪うとかじゃないだろうな!」

誠人が心臓をバクバクさせながら音が鳴り止むのを待つと、画面に新たなメッセージが浮かび上がる。


『レア度の高い順からアイテムが2個、消滅(ロスト)しました。
 ・木の棒
 ・木の棒』


「――ひぃ!!」

その内容に思わず誠人は小さな悲鳴をあげた。
実のところ、木の棒を失っても特に痛くも痒くも無いのだが、それよりもデスペナルティの内容自体に誠人は恐れおののいた。

「つまり、死んだらレア度が「高い」良品から消失するということか! じ、自分の命を失うとかでなくてホッとはするんだけど、これはこれでエグい! アイテム掘りゲームとしてはかなりエグいデスペナルティだ!!」

初見のモンスターの強さがよく分からない中での戦闘となる以上、アイクエは死んで覚えるという部分がある。
つまり、デスペナルティをくらう確率が極めて高いのだ。

「な、なかなか、厳しそうなゲームだな……」

誠人は頬をピクピクを引きつらせる。

「で、でも、死ななければどうということはない!」

ガ○ダムの赤い大佐殿の言葉を借りて、誠人は気持ちを切り替えた。

誠人は画面上に現れた「コンテニュー」を選択する前に、とりあえずリセットボタンを押して前回のセーブデータをロードできるかと挑戦してみる。

もちろん、こんなにも不思議な力まみれのゲームがそんな不正を許すわけもなく、既に自動で上書きセーブされており死んだ後のデータでのロードとなった。

なぜ、それが分かったかというと、ロードした画面が先程と同じ、真っ暗な画面のコンテニュー画面だったからである。

「(どうも細かく判断して自動上書きセーブしてるっぽいな……)」

誠人はコンテニューを押すと、草原小島に誠人キャラが移動してゲームが再開される。

0だったHPバーがゆるゆると自動回復を始めている間、誠人はアイテムウインドウを立ち上げて木の棒の数を確かめてみると、確かに合計数から2つロストしていた。

「あー……本当に無くなってる。でも、初期の段階で知れて良かったとも考えられるな」

誠人は体力が回復すると、また階段を下りてダンジョン部屋に移動する。

宇宙空間のような場所に浮かぶダンジョン部屋の奥にはまたも子鬼が立っているが、その色は赤色ではなく緑色だった。

「普通のゴブリンさんが出てきてくれたのかな?」

誠人が緑色ゴブリンに近づくとポップアップが浮かぶ。

『ゴブリン』

体力は赤色バーが1本。

「ふむ、どうやら今度は普通のゴブリンっぽい」

誠人はゴブリンに戦闘をしかけると、とりあえず「防御」コマンドを選択する。

ゴブリンが平凡な棍棒で殴りつけてくると、誠人のHPが少ししか減らなかった。

「よしよし! これなら殴り合い出来そうだ!」

今度は誠人キャラも攻撃をすると二刀流でゴブリンのHPバーを1/3ほど削る。

「いけるいける!」

防御を解いた状態でもゴブリンの攻撃は誠人のHPバーを余り減らさなかった。
誠人はゴブリンへの攻撃を続けて無事に倒すことに成功する。

「――やた!」

軽快な勝利音が鳴り響き戦闘が終了した。
ゴブリンがいた場所には赤色の宝箱が出現しており、急くように誠人キャラが宝箱を開けると画面上に手に入れたアイテム達が表示される。


『グラン金貨を5枚手に入れました。
 木の棒(S1)を手に入れました。
 スキルカード「回避小+」を手に入れました』 


「なんか出た!」

誠人は画面を凝視しながら嬉しそうに叫ぶ。

誠人はアイテム欄を表示して木の棒(S1)の説明を読んでみると、(S1)とは「空きスロット1」という意味らしく、そこにスキルカードを好きに脱着できるようだった。

「なるほどなるほど」

スキルカードはアイテム欄のスキルカードタブに振り分けられており、更にそのタブの中にもパッシブスキル、戦闘スキル、魔法スキルなど色々なタブが存在していた。

誠人は「回避小+」の説明を確認してみる。


『回避力を少しだけ上昇させる』


「特に変わった内容ではなく、まさに名前通りだな」

誠人はアイテム欄で木の棒(S1)を選択すると、「どのスキルカードを装着しますか?」という質問と共にスキルカード欄が表示されたので、さっそく「回避小+」を装着する。
スキルカードの脱着には特にデメリットは無いらしく、好きな時に外す事も可能だった。

「ま、こういう回避力アップというのは、効果があるのかないのか微妙なんだけれども、とにかく色々なランダム性がちゃんと動いているようだから良しとしよう」

誠人はニマニマと微笑みながら今日も徹夜でアイテムダンジョンクエストをプレイし続けるのだった。
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