FC2ブログ
 

よあけの部屋

□ アイテムが本当にもらえるダンジョンゲーム □

4 隠れたイジメ

誠人の様にあからさまに暴力を振るわれる様なイジメは見た目的にも分かりやすい。

だが、イジメというのもはそういう類のものだけではない。

実は目に見えないイジメというものもあるのだ。

一見、仲良しそうに見えるグループでありながら、その実は誰かがイジメられている場合もあるのである。

誠人のクラスの最上位派閥である女子グループがある。

容姿も可愛い者が多く、ファッションにも気を使い、成績も悪くは無い。
先生達にも信頼され、性格は明るくて冗談にもセンスがあり、いつもクラスに笑いの花を咲かせている。

ただ、そんな彼女達の中で、あからさまにタイプの違う女子生徒が一人だけいた。

短いスカートや髪に薄めながらも色がついていたりする彼女達とは違い、ストレートで癖のない黒い長髪で、黒縁メガネに普通の丈のスカート。
前髪は眉毛の下まであり目にまでかかりそうであった。

そんな見た目通り、性格は引っ込み思案で人見知りで、いつもオドオドとしている。

一言でいえば実に素朴。

いや、一つだけクラスの女子達とは違う点、いや、学校内レベルでの違いがあった。

それはとてつもない巨乳、つまりは爆乳であるということ。

セーラー服の上からでもその凄まじさが認識できるほどに、2つのお山が堂々とそびえ立っていた。

だが、それ以外は実に平凡、というか平凡以下。

そんな彼女が、若さゆえに脳内麻薬出まくりのテンションあげあげな最上位派閥の女子グループに所属しているというのは実に違和感がある。

だが、女子グループのリーダーは、そんな素朴系な彼女をえらく気に入っており、いつも「うちら親友じゃん」と周りに聞こえるように言うぐらいであった。

そんな爆乳ながらも素朴系女子の名は大田原(おおたはら) 雪子(ゆきこ)。

当たり前だが、この最上位女子グループはリーダーを筆頭に誰も、この雪子の事を親友などとは思ってもいない。

では、なぜ、この女子グループは雪子を囲い込みチヤホヤして親友のふりをするのか。

それは雪子の家柄にある。

雪子は地元の地主の娘で、つまりいわゆるところの「金持ち」なのである。

ただし、何か凄い名前のある家柄というわけではないし、日本有数の金持ちというものでもないので、本当の金持ちからすれば雪子の家などはかなりの格下なのだが、それでも普通の者からすればやはり立派な金持ちの部類に入ってしまうのである。

つまり、女子グループは遊ぶ時の「金づる」として雪子を強制的に囲い込んでいるのであった。

女子グループのリーダーである江田島(えだじま)が雪子に笑顔を見せる。

「ユッキー、今日は帰りに皆でカラオケいくから宜しくね」

「う、うん」

雪子は苦笑いを浮かべながら頷く。

「いえー! 今日はユッキーがカラオケ代と食べ放題セットでOKだってー!」

江田島の声に仲間内の女子生徒達が「やったー!」「うち、ピザとパフェ食いまくる!」などと歓声をあげる。

そうして、放課後は皆でカラオケ屋に行き、雪子は部屋の隅で一人じっと座りながら歌も歌わず、食べ物も食べず、ジュースをストローでチビチビとすすりながら皆の歌とどんちゃん騒ぎを聞くだけ聞いて、最後は数万円近い会計を一人で済ませる。

カラオケ屋の前で「ありがとー」という皆からの適当気味な感謝の言葉を受けて、なぜかその場で解散となったので雪子は一人ポツンと置き去りにされた。

「…………」

いつもの光景ではあったが、雪子はため息もつかずただじっと彼女達の後ろ姿を眺めた後、踵を返してトボトボと家路につく。

雪子の家は確かに裕福ではあったが、だからといってお金が無限にあるわけではない。

彼女達の散財ぶりは少しずつエスカレートし始めており、最近ではもはや雪子の月のお小遣いでは賄いきれず、貯めておいたお年玉に手をつけざるおえない状況にまで追い込まれている。

だが、それでも雪子は彼女達に反抗する意思も手立ても、そして勇気も無かった。

彼女もまた誠人と同じく、甘々な母親に育てられたせいか人一倍に心優しく、そして敵対者に抗う能力が低かったのだ。



雪子は大きな庭のある日本式な大邸宅の敷地に入って行くと、木でできた立派な玄関の鍵を開けて入る。
中はひっそりとしており人の気配が無い。

雪子は婿養子であった父親を幼い頃に亡くしており母子家庭となっていた。
地主の娘であった母親のおかげで生活に困ることは無かったが、母親が多趣味であることから家にはあまりおらず、いつも一人でいることが多かった。

雪子は家の廊下を無言で進んで自分の部屋に入って鍵をかける。

鞄を机の横にぶら下げ、服も着替えずにベッドの上で座って液晶テレビを点けると、膝を抱え込みながら録画しておいたアニメの最新話をぼんやりと眺める。

液晶テレビには水泳部に所属する男前な男子学生達が眩い程の青春を謳歌していた。

雪子はアニメを見終わると服を着替える。

セーターにスカート。

実に平凡な出で立ちで台所に向かい、食卓の上のメモを見る。

『今日は遅くなるので先に食べておいて下さい』

母親のメモを見た後、雪子は食事代としてメモの横に置いてあった1万円をスカートのポケットに入れる。

最近は江田島達と遊ぶ時の費用がかさんで金欠気味だったので、その足しにしようと決めたのだった。
そして、このお金を使わない為に冷蔵庫を開いて、有り物で食事を済ませようと考える。

冷凍庫にはピザが入っており、「そういえば私、カラオケ屋でピザを食べてないや」と雪子は思い出し、ピザをレンジで温めてから大きな食卓テーブルで一人ぽつりと食事をする。

「…………」

会話も何も無い寂しい食卓。

モソモソと小動物のようにピザをかじる雪子。

その目はどこか虚ろで、物悲しい色に満ちていた。
関連記事



*    *    *

Information