FC2ブログ
 

よあけの部屋

□ アイテムが本当にもらえるダンジョンゲーム □

2 まさかの機能

ゲーム画面内のぽっちゃりドットな誠人キャラが階段を下りると、星々が煌めく宇宙空間の中に浮かぶ小さな部屋の中に降り立った。

自分の後ろには上りの階段があり、とりあえず登ろうとしてみると注意書きが表示される。


『このダンジョン部屋はランダム性があり二度と戻ってはこれません。それでも帰還しますか?』


「ああ、これランダムダンジョンなんだな。ご丁寧に逃げるための階段を用意してくれているんだ」

部屋の奥の方にはドット絵の水色スライムがうにょうにょしている。

「スライムぐらいなら素手でも勝てるのかな?」

誠人はキャラを近づけさせると、水色スライムからポップアップが浮かび上がる。
そこには名前である「スライム」と体力バーが表示されており、誠人と同じく赤色のバーが一本あった。

「へー、相手の名前と体力を教えてくれるんだな」

キャラと敵キャラが接触した状態で決定ボタンを押すと軽快な戦闘曲が鳴り響き、サイドビュー形式の戦闘が始まる。

コマンドで「戦う」を選ぶと、誠人キャラがスライムに突撃してパンチを繰り出す。
打撃音と共に衝撃効果のアニメが浮かび上がり、そしてスライムの頭上に描かれている体力バーが1/3ほど減少する。

「おー、利いてる利いてる」

ターン制なのか、次はスライムが体当たり攻撃をしかけてくると、誠人の体力バーが1/6ほど減少する。

「よしよし、こっちは約3発で勝てるから大丈夫そうだ」

ガチンコの殴り合いを続けた結果、誠人キャラがスライムを無事に殴り倒した所で軽快なファンファーレが鳴り響くが、経験値もお金も何も手に入らなかった。

しかし、部屋の画面に戻るとスライムの居た場所に赤色の宝箱が表示されていた。

「へー、モンスターからのドロップは宝箱で、という感じか」

誠人キャラが宝箱を開けると「ピロリン」と軽快な音が鳴り、

『グラン金貨を3枚手に入れました。
 薬草軟膏を1個手に入れました』

と表示された。


「へー、シンプルなダンジョンにシンプルなアイテム掘り、まったくもってシンプルなゲームだなー」

誠人はキャラを動かして登り階段から小さな草原の島に帰還すると、画面にウインドウが現れて『新しいコマンドが解放されました』と表示される。

誠人がコマンド欄を表示させると、そこには『アイテム転送』というコマンドが追加されていた。

「なんだこれ」

誠人は特に気にもせず『アイテム転送』の項目をポチリと押すと、アイテムウインドウが立ち上がって、どれを転送するかの選択を要求してくる。

誠人は、今しがた手に入れた「グラン金貨3枚」「薬草軟膏」を取り敢えず選択して「決定」を押すと、次の瞬間、プレプレ4に繋いでいた小さな宝箱型のデバイスから「ピロリン!」と軽快な音が鳴り響く。

思わず「ビクッ!」と体を震わせてしまう誠人。

しかし、驚いている誠人をよそに宝箱デバイスは勝手に口をカパリと開けると、中からぬるぬると溢れ出させるかのように3という数字の書かれた小さくも綺麗な金貨と、小さな小瓶に入った薬草軟膏を吐き出した。

誠人の眼前にポトリと落ちて佇む金貨と薬草軟膏。

「…………」

誠人は呆然とそれをしばらく眺めた後、「ええええええぇぇぇぇ!!??」と絶叫をあげてしまう。

そんな誠人の絶叫が母親である友里江のいる台所まで響いたのか、階下から友里江の心配そうな声が聞こえてきた。

「誠人ー? どうしたのー?」

誠人は慌てて部屋から飛び出して階段を覗き込む。

「えっと、何でもないよ! 何でもない!」

「そう? それなら良いんだけれど……」

誠人は友里江が左手の人差し指を右手で押さえているのに気がついた。

「その手、どうかしたの母さん?」

「あ、うん。今の誠人の声でちょっと驚いちゃって、少しだけ指を切っちゃった」

どうやら夕食の準備中だった友里江は、誠人の絶叫に驚いて包丁を持った手元が狂ってしまったらしい。

「ご、ごめん母さん……」

「いいのいいの、少し薄皮が切れただけだから、こんなの舐めておけば治るわ」

「……う、うん。本当にごめんね母さん……って、そうだ!!」

「ん?」

「ちょっと、待ってて母さん!!!」

誠人は慌てて部屋に戻ると、薬草軟膏の入った小瓶を拾い上げた。

「(これが本当に薬草なら、切り傷に利くはずだ!)」

と思った所で、誠人は思い留まった。

「(こんな得体の知れない物を、母さんで実験するのは良くないよな)」

そう考えた所で、誠人は自身の右手の平を覗き込むと、そこには今日の体育の時間の時、神田に転ばされた時に出来た擦り傷があった。

「(まずは自分の傷に塗ってみよう)」

誠人は小瓶から白濁色の軟膏を指先で少しだけ取り出して、そのまま右手の擦り傷に塗りこんでみると、擦り傷はすーっと驚くような速さで治ってしまう。

「――すごい! 本物だコレ!!」

誠人は小瓶から更にすくい取ると、指先に薬草軟膏を乗っけたまま階段を下りて母親である友里江の元に駆けつける。

「どうしたのよ誠人、そんなに血相を変えて」

「いいからいいから! その指のキズを見せて」

「え、うん」

友里江の指先の切り傷に、誠人は薬草軟膏を塗りつける。

「あら、何の薬なのこれ」

「ああ、うん、オロナ○ンだよオロナ○ン」

「あら、持ってきてくれたの? ありがとう誠人」

「で、どう?」

「どうって、そんな簡単には……あら、治ってる? オロナ○ンってこんなに凄い薬だったかしら」

天然系のポワポワした性格の友里江は「あらあら」という感じで特に疑念も抱かずに感心していた。

「えへへ!」

誠人は自分が褒められたかのように嬉しそうに笑う。

「ありがとう誠人。助かったわ」

「いや、いいよ。それよりすき焼き楽しみにしているから」

「はいはい、それより、ちゃんと着替えるのよ?」

「はーい」

誠人はそう返事をすると、またドタドタと慌てて階段を登って部屋に戻るとすぐに鍵をかけるや、宝箱型デバイスの前に置きっぱなしにしてあった金貨と薬草軟膏の前に滑りこむように座り込む。

「なんだか、とんでもないゲームが俺の所にやってきた!」

誠人は興奮冷めやらぬという感じで、左手に金貨、右手に薬草軟膏の小瓶を持ちながら交互に眺め続けるのだった。



しばらくして落ち着いた誠人は、新たに表示されたゲーム内コマンド『アイテム返還』で、実験的にアイテムをゲーム内に戻してみた。

やり方はとても簡単で、『アイテム返還』を選択すると宝箱型デバイスの口が自動で開くので、そこに金貨と薬草軟膏を放り込んだだけである。

結果は、見事に成功。
ゲーム内のお金欄には『グラン金貨 3枚』。
アイテム欄には『薬草軟膏1個』。
ただし、薬草軟膏の説明欄には『内容量が少し減少により回復量も少し減少』と書かれていた。

「へー、そういうところまで反映するんだな」

ちなみに、『アイテム返還』を利用して、こちらの世界にある物質をゲーム内に送り込む事はできなかった。
つまり、あくまでゲーム世界内のアイテムを出し入れする事が出来るという形のようであった。

「ゲーム内キャラの俺が素手だから、何か武器でも送り込めたらと思ったんだけれどもそうは甘く無いんだな。アイテム掘り専門ゲームっぽいから、そこはちゃんとゲーム内で頑張って手に入れろということなのかもしれない」

誠人は夕食までゲーム内アイテムを現実に手に入れられる不思議なゲームをピコピコと続けるのだった。
関連記事



*    *    *

Information